人を惹きつける! プレゼンの心得とスピーチの基本|コンペ提案の勝利の方程式 Pt.3

イメージ画像|その場の空気を読んでオーディエンスを湧かせる即興性あるプレゼンテーション実戦テクニックを解説します。
その場の空気を読んでオーディエンスを湧かせる即興性あるプレゼンテーションとは?

プレゼンテーションは、環境や状況に応じて言語情報だけでなく、非言語の聴覚情報、視覚情報も受け手の印象や感情に影響を及ぼします。

聞き手に対する気遣いが信頼感を生みプレゼンを成功へ導く鍵ともなります。その基本要素は「構成」、「伝達力(デリバリースキル)」、そして「演出手法」です。今回は初心者でも実践できるプレゼンの基本と実践テクニックを紹介します。

目次

プレゼンテーションの緊張感を原動力へ

自分をプロデュースするセルフイメージの活用

米国留学の時、大学のクラスでも授業中に研究内容を一人ずつプレゼン(スピーチ)することがありました。スピーチの上手い現地の学生に共通する特徴は、リラックスした雰囲気で堂々とした姿勢とさりげない身振りで聴衆を惹きつける舞台役者のような立ち振る舞いでした。

さすが、人前で発言する習慣が一般的なお国柄を感じさせられました。それに対して、聴衆を惹きつける余裕も無く喋ることで精一杯であった当時の自分の姿が鮮明に思い返されます。彼らに共通する点は、自信を表現するためのイメージ作りでした。

俯瞰して意識を分離させる

緊張感とは、なんとも厄介な心理現象にて、人前で喋ることを憂鬱に感じることがあると思います。例えば、プレゼンを新人の舞台役者に喩えてみます。台詞を記憶することに精一杯で、間違わずに話すことに意識が向いているとします。

その意識を、芝居の全体構成や観客の反応に向けることで、自己の内面の緊張を意識的に分散させます。それはある意味、舞台監督として自分の振る舞いを俯瞰するセルフイメージのような感覚です。

最初は全体へ意識を向ける余裕などは無いかもしれませんが、俯瞰した視点で自分を客観視して考える意識を持つだけでも自分に向かう緊張を緩和させることも可能になります。

コツは、理想のプレゼンのスタイルを思い描く「妄想」を利用して緊張感を高揚感へ変換させるように演技をしていると自分に思い込ませることです。

自分も当初はあがり症でしたが、この自分を俯瞰し客観視することで緊張感という意識を自己分離することで人前でも話が出来るように変化しました。

そのために、TEDなどで自分の目指すスピーチのスタイルを目に焼き付けるくらい繰り返し多くのプレゼン動画を拝聴してイメージトレーニングをしてきました。

プレゼンに慣れるには場数も必要ですが、理想のプレゼンテーターを見つけたりそのスタイルをまねて客観的なイメージを持つことで人前で「プレゼンテーションを演じる」ことに慣らして意識を分散させて緊張感を緩和させる。

ここからは、情報伝達としての「分かりやすいプレゼンテーション」を実施するための基本要素を説明していきます。

「伝わるプレゼン」の3要素

プレゼンテーション(Presentation)の語源は、贈り物を渡す贈呈(Present)に由来すると言われます。ビジネスにおけるプレゼンは、聞き手に対して自分たちのアイデアにまずは興味を持って貰い、理解し納得した上で何かしらの行動を喚起する狙いがあります。プリセールスの場合では、商談成立や受注にあたります。

言葉を換えれば、受け手に対して価値ある情報や企画・提案を納得して受け取って貰う伝え方(伝達手段)です。

また、プレゼンを情報の伝達理論の観点から鑑みると、情報の価値は受け手側により変わります。つまり、「情報の受け手(聴き手)がキング」という考えです。

情報の発信者は、理解を深めてもらう工夫が必要であり、分かりやすい伝え方(=伝達力)を提供する義務があります。「伝わらない」のは、伝える側に問題があると考えるべきです。

「伝わるプレゼン」の主な構成要素は、「構成力(シナリオ設計)」、「伝達力(デリバリースキル)」、そして「演出力(プレゼンス醸成)」の3要素があります。これらを順に解説していきます。

プレゼンの3要素のイラスト:「構成力」、「伝達力」、「演出力」は、受け手に理解し納得した上で行動を喚起する狙い。
プレゼンに重要な3要素のイラスト例

1.プレゼンのシナリオ設計(構成力)

1-1.ストーリラインとなると論理ピラミッド構造

プレゼンの流れである構成の組み立てのコツは、受け手の興味関心を惹きつける内容から理由などの詳細に移行する出だしを考えます。

何故ならビジネスのプレゼンにおける聞き手は、必ずしも映画のオーディエンスのように興味を持って臨んでいるとは限らないからです。的を得ない回りくどい話しは、聞き手の集中力を消し去ると心がけます。

提案書の書き方と実践テクニックでも紹介したように、課題の認識合わせを行い、そこから提案内容を手短で覚えやすいキーワードで受け手の記憶にすり込ませます。

勿論、プレゼンの定石である結論から開始する構成もありますが、前提条件の認識がずれている場合もありえます。ビジネス提案におけるプレゼンの場合は、ますは課題の認識合わせを最初に説明する構成で聴き手の意識を同一方向に向けさせます。

そして、提案のコンセプトやそれを支える根拠となる事実(事例など)で論理的な構成の基本骨子を固めます。この思考の展開を論理ピラミッドと言います。

論理ピラミッドのイラスト:提案(結論)から詳細(理由→根拠)に移行する展開を表す提案内容の構成における論理ピラミッドの説明イラスト。
提案内容の構成における論理ピラミッドの図例

1-2.プレゼンの時間配分と管理

この基本骨子であるストーリーラインを設定したら、次にプレゼンの詳細なシナリオ設計を考えていきます。ここで言うシナリオとは、メッセージでストーリーラインを肉付けした物語の構成です。各シートの見出しやポイントとなるキーワードだけでなく、この後に説明する伝達手段や演出方法、また、各要素の時間配分までを含めます。

慣れた方で基本骨子だけでストーリ立てをして話しが出来るプレゼンの達人も居ますが、プレゼンには時間の制約があり受け手が記憶出来る情報量も限られます。人の記憶に刷り込むプレゼンにするためにも、初心者は全体の論理的ストーリー展開と時間を緻密に計算したシナリオの設計を試みます。

シナリオ設計ができたら、各ページ(スライド)毎の説明の優先順位を意識しておおよその時間配分を考えます。そのために、どこが今回のキーメッセージとなるスライドかを確認します。

重要なポイントは、ハリウッド映画のシナリオ構成でも重要視される観客をまず引き込むための冒頭シーンとなる「つかみ」です。ここで意識する流れは、最初の「つかみ」、中だるみし易い「中盤」、そして最後の「振り返り」の3部構成です。これにより、オーディエンスを飽きさせずに分かりやすいストーリーラインを構築します。

カンファレンスや勉強会などのプレゼンであれば、時事ネタや数字を用意て観客に問いかけて意識を惹きつけるつかみの手法があります。ただビジネスのコンペ提案など場合では、各社のプレゼン時間が限られ続けてプレゼンが行われる場合は結論から開始することでクラインとの集中力と記憶を維持させることに配慮します。

また、自分の目に見えるところに腕時計などを置くことでプレゼンにおける時間管理がしやすくなります。チームメイトにタイムキーパー(TK)を依頼するやり方は、広めの会場の場合では特に有効です。

ただ、発表に没頭し過ぎてTKの合図が目に入らない可能性もあるので、手元にも経過時間が分かるものを補助として用意しておきます。スマホのアプリで、プレゼン用タイマーなどもあるのでバイブレーション機能を利用することもお奨めです。

プレゼンで一番に印象を損なう要因として時間をオーバーしてしまう状況です。段取りの悪さを露出することは信頼を損なうため避けましょう。

1-3. 発表順番で刷り込み効果を狙う

一般的にビジネスのプレゼンテーションや勉強会などの時間は、長くて60分ほどです。質疑応答の時間を引くと実質40分〜50分程度です。人の集中力の目安は約15分間と一般的に言われますが、経験からは、最初の数分で意識を引けつけることに成功すると提案の最後まで聞き手側の意識を惹き付ける事も可能です。

過去のコンペ案件の場合、他社よりインパクトを最初に打ち出して印象を残す為に敢えて1番最初にプレゼンを出来るようクライアント側に調整を試みることもしました。

その狙いは、他社が一般的に提案しそうなアイデアを特別なものでは無い印象を先に与えるような論調で提案を施して専門性や経験ある印象を刷り込み他社より抜きん出る雰囲気を生み出す戦略です。

特に参加企業が多いいコンペの場合、このテクニックはじわりと効いてきます。このテクニックを活用して12社コンペで受注することもできました。コツは、あくまで自社の提案に優位性があることをさり気なく自然にアピールすることです。

このように他社の汎用的なアイデアに釘を刺しておくようなカンター施策が思いつかない場合も、プレゼンの順番においては中だるみしがちな中盤を除く最初か終盤でプレゼンを行うことで印象を残しやすい場合もあります。

2.伝達力(デリバリースキル)の基本要素と実践ポイント

伝え方に影響を及ぼす「言語表現」と「非言語表現」

情報を適切に理解を促し相手に届ける伝え方を、デリバリースキル(delivery skills/speech delivery skills)と言います。これは口頭による言語表現だけでなく、非言語である聴覚情報の「話す速さ」や「声のトーン」と視覚情報である「目配せ」や「ボディランゲージ」などで構成されます。まずは言語表現と非言語の2でこの伝達能力を考えていきます。

分かりやすい伝え方を構成する伝達力=デリバリースキル要素のイラスト例:「言語表現」と「非言語」の構成から成る。
プレゼンの分かりやすい伝え方で言語や非言語の表現で注意すべき点

2-1.言語表現の留意点

センテンスの長さ

話しを聴いていて言いたい事が伝わりづらい人に共通する特徴では、文章と同様に1つのセンテンスが長い傾向があります。仮に途中で要点を見失いない話しが迷走仕掛けた場合では、「つまり言いたい事は、…」など随時、まとめ直すよう意識します。基本は、センテンスは短く端的に話すことです。

強調と要約

センテンスの長さだけでなく、トピックスごとに要約も交えることで聞き手に情報整理と再確認の機会を提供し理解を深める助けにします。また、「ここで一番大切なのは、…」、「本日の覚えて頂きたいポイントは、…」など自分の伝えたいことを強調を促す接頭語を交えることで、発言に蛍光ペンでハイライトを入れるように聞き手のこころに深い印象を刻み込むコツにもなります。また、プレゼンの最後にも本日のまとめを入れる気遣いで聴衆の記憶の整理を補足する工夫を実施します。

禁止表現:音引きの間投詞

スピーチ慣れしてないひとが言いがちな「えーと」、「そのー」などの間を繋ぐ間投詞は稚拙で頼りない印象は、特に不意の質問をされた時にとっさに口をついてしまいがちです。その様な場合のコツとして機転を利かせて、「それは良い質問です…」、「なるほど…」など一旦、手短かに返答して気持ちを整えてから状況を乗り切るなどの工夫を施します。無理に言葉で状況を埋めようとせず、敢えて無言でうなずくなど、間を持たせ聴衆を惹きつける上級テクニックなどもあります。

音引きした間投詞などの表現はノイズとなり集中や理解を妨げるだけでなく、風格を失う稚拙な印象を与えかねるためビジネスシーンではNGと認識します。

2-2. 非言語(聴覚や視覚情報)の留意点とポイント

声量や滑舌を補うコツ

声が小さくメリハリや抑揚も無く、ぼそぼそと話す姿は受け手は自信を感じさせず話しにも集中しずらい原因です。また、滑舌に自信が無い人は敢えて話す速度をゆったり気味に意識し声量をため低めのトーンで話すことで聴き取り易さを補い、自信と信頼もアピールできるようにします。

印象を左右する話す速度

人前であがってしまったり時間を気にしすぎて、つい早口でしゃべる人もいます。聞き手の理解や集中力が妨げられるだけでなく落ち着きのない印象を生むため注意が必要です。

基本は普段の話す速度より気持ちゆったりと話すように意識します。それにより気持ちにも余裕が生まれてきます。そうなれば、聴衆が話しに付いてきているかを意識してアイコンタクトを向けることも出来ます。

間や抑揚でリズムを生む

単調な話し方は、オーディエンスに眠気を誘引したり集中力が維持しにくい状態になり注意が必要です。スピーチ慣れした人の多くは、間を持たせたり抑揚などで緩急を設けて聴衆の意識を惹きつけるコツを身につけています。

話す姿勢と意識

話す姿勢は、受け手の印象に大きく影響を与える重要な視覚情報です。人前で話すことに慣れてないと、原稿を見るために下を向いたまま話しを進める状況はよくあります。プレゼンは、朗読会でも法事の念仏でもありません。

また披露宴のスピーチのように、用意したプレゼンのスライド資料を全て読み上げる必要もありません。なぜならビジネスにおいてはプレゼン資料を別途、配布を前提にしていることが一般的だからです。(カンファレンスでは、配布資料は無い場合もあります。)

また、プレゼンは参加してくれた聴衆のための時間。いつでもオーディエンスを意識して話をするためには、提案のストーリーライン(骨子や構成)やポイントは大まかに、頭に入れてスピーチに臨みます。そうすることで、必要に応じて説明の該当箇所のみ原稿に目を向けて、それ以外は聴衆に対峙して話す余裕も生まれます。

ジェスチャー活用のコツとポイント

日本人は欧米人に比べて身体を利用したジェスチャーを会話中でもあまり使わない傾向がありますが、プレゼンにおいては聴衆の意識を惹きつけるために実行したいテクニックです。

因みに欧米のスピーチの基本姿勢では、自信を表す行為の一環として片手をズボンのポケットに入れたり椅子に座っている時は足を組むジェスチャー効果で自信を表す意味合いもあります。これらは、日本の作法や慣習にそぐわない部分もあります。ここでは、オーディエンスの注意を惹きつけるためのジェスチャーをいくつか紹介します。

わたしもスピーチを行う場合、プロジェクターを利用して立ち姿でプレゼンを行うように心がけてます。部屋の広さにもよりますが、投影したスライドを電子ポインターなどを利用して示すだけでも自然と身体を動かすため、視覚情報で聴衆の意識を惹きつける効果が期待できます。

特にランチ後などのプレゼンでは、胃が満たされたオーディエンスは睡魔との戦いになります。聴覚だけでなく視覚も有効活用してオーディエンスの視線や意識を集めるつもりで臨みます。

具体的なジェスチャーのコツとしては、前述の抑揚や強調を行う時にさり気なく手や指先を動かして視覚からもリズムを奏でるような工夫を施します。重要なポイントを強調する場合は、軽く手を握ったり指で注意喚起をしたりします。あくまでリラックスして自然な動作を意識します。

注意すべき点としては、会場の広さに合わせてジェスチャーの身振りを調整します。広い会場ではスクリーン中央で後ろの人でも確認できるようにやや大きめな動作や、個室の場合は顔の表情やうなずきなどの繊細な動作を意識し、オーディエンスとの距離に合わせ過剰にならないレベルでジェスチャーの調整を行うことがコツです。

気遣いを示すアイコンタクト

非言語の視覚情報の中でも重要と考えられるアイコンタクトの活用は、前述の話す姿勢にも影響し受け手側の印象も左右します。繰り返しになりますがプレゼンは、聴衆の貴重な時間を借りて価値ある情報を提供する場です。

可能な限りオーディエンスの方に視線を向けた対話の姿勢を意識し、その場の空気や反応を読みとることも重要です。またビジネスのプレゼンの場合、室内では重要な人物の座席となる上座を意識しつつ、他の参加者へも均等に視線を向けるようにします。

外資企業の会議室の上座は日本企業の部屋の位置関係と異なり、スクリーンやプレゼン中央の正面の一番奥になります。

また、眼だけを動かすのでなく自分の顔を相手に向けて視線を送ります。眼だけを動かしたりすると逆に落ち着きが無い印象にも捉えられかねないので注意が必要です。

資料を先に配ると、発表者ではなく資料ばかりに目を向けられがちです。それでもアイコンタクトは続けます。その理由は、参加者の様子を観ながらプレゼンに対する反応やその場の雰囲気を読み取るためです。

話しながらオーディエンスの反応に合わせてプレゼンの構成を調整したり興味を惹きつける即興性などの上級テクニックを身につけるためにも、聴衆へアイコンタクトを向ける意識はビギナーの内から習慣化しておきたいテクニックです。

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