アート思考/デザイン思考で失敗しない適切な問いの立て方

イメージ画像|アート思考やデザイン思考における正しい問いのデザイン方法とは何かを解説します。
適切な問いをデザインすることは、対話を活発化し新たな気づきの機会が拡がりアイデアの飛躍へと導く。
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アート思考もデザイン思考でも、筋の良い問いを立てることが斬新なアイデアを生み出せるかに大きく影響します。川の上流が淀んでいれば出口付近の下流は濁った水質に陥るのと同様に、適切な問い(論点)を立てることが重要です。

今回は、アート思考やデザイン思考を通して適切な問いを導き出すための問いのデザインを思索していきます。

目次

「問いのデザイン」とは

解決すべき論点を問い直すためのアート思考とデザイン思考の両用

以前の記事で“アート思考とは ” でも解説したように、ビジネスシーンで活用するアート思考では社会へ価値を提供する意義を見出す起点となるのに対して、デザイン思考では対象となるユーザーなどの潜在的な問題を発見し課題解決を行うことが主な目的でした。

対象は異なるも観察を通してどのような問題設定をするかを見据える行為は共通します。そこでは「どう解決する=HOW」よりも、「何故、問題が起きるのか=WHY」を見据えて「何を解決するか=WHAT」を深掘りして適切な問いとして設定する(デザイン)ことが重要となります。

陥りがちな失敗例として、表層の事象や問題に固執して課題の本質に到達できずにありきたりで予定調和の解しか生み出せずに期待を下回るアイデアの量産がデザイン思考だけではよく起こります。

まずはアート思考の視点で提供すべき価値の意義を見据え、そこからどの様な問題を解決すべきかをデザイン思考のプロセスを用いて論点の整理をすることが重要と考えます。

適切な「問いを立てる」ための深掘り

もう少し「問いのデザイン」を思索していきます。一般的には、多様な観点で客観的に対象や事象を観察しながら物事の関係性である因果関係を見極めることが必要と言われます。内田和成氏の著書では、固定概念や偏見などの主観的認知が妨げの基本的要因と説いています。

人は誰でも事象を見るときに、知らず知らずのうちに決まった視点で見ている。つまり、自分なりのものの見方をしてしまう。(中略) 陥りやすいのは、だれでも自分の視点に固執しがちで、あるパターンにはまりやすいということだ。

出所:内田和成「論点思考」東洋経済新報社 2010年

つまり「問いを立てる」とは、事象として起きている表層の問題点かを見極める分析力や鋭い観察眼で深い洞察を導く慧眼(けいがん)とも言えます。

例えばクライアントからビジネス課題として「新規会員の入会における減少傾向を改善」、「売上げ減少を回復させる」などのお題が上がったとします。

勿論クライアント側の社内の目標なのでこれは間違いではないのですが、このままの論点で議論を進めるのではでなく、問いを更に掘り下げたり揺さぶりを掛けて発想の領域を押し広げる必要があります。

事象を命題にして問いを立てても、その背景にある因果関係が不明瞭な場合はありきたりな解しか見いだせないことが多々、起こります。この様な場合は、事象を俯瞰し視野を拡張して問いの焦点を掘り下げて論点の解像度を深めることで新たな問題発見となる視点を導く思考のストレッチが必要となります。

例えば「高齢者に継続的に利用してもらうスポーツジムを考える」という命題の場合、単に利用頻度を促すプログラム開発に意識を向けるだけでなく、「学びから生涯を通したライフスタイルを提供できる環境と地域社会との繋がりを考える」など論点を拡張し「問い」となる提供価値を再定義してみます。それにより、想定を超える新たな論点の枠組みを見出すことが期待できます。

独創的な問いを見立てる工夫の一つには、複眼的な思考で論点を拡張して着想を飛躍させる視点変換を活用する。

視点・視座・視野を説明したイラスト図:円錐を捉える視点の位置で見える形状は変化する
視点の位置(視野や視座)で見える形状(円錐)は変化する視点・視座・視野の説明イラスト例

気づきを導く方向性としての仮説設定

デザイン思考の初期プロセスにおいて、いきなりユーザー・リサーチなどの観察から現状把握を行う前に、まずは「仮説設定」を基に方向性を見据えた上で効率よく対象の観察作業を進めて気づきを誘引する工夫を試みます。

もし「仮説設定」を行わずに漠然とした状況で観察活動を行っても、観察すべきポイントが曖昧な中では観察範囲が拡がり過ぎて時間を必要以上に要する傾向に陥りがちになります。また仮説検証を繰り返すことで思い込みや固定概念から抜け出す仕組みにも成ります。

「問い」と「仮説」で発想を揺さぶる検証サイクル

ただし仮説設定は、個人の知見や経験に頼る部分もあるため「問い」から開始して「仮説設定」を導く流れも考えられます。どちらからアプローチするかは特に重要ではありません。あくまでどちらの状況からも発想に揺さぶりを掛けられる検証サイクル が思考停滞の壁を突破するためには重要と考えます。

観察における「問い」と「仮説」を繰り返して発見へ導く検証サイクルの図例
観察の構造と検証サイクル図例

まずは「誰のどのような課題を解決するか」、対象を明確にしながら仮説を立てその先に潜む気づきを見出すことに集中します。ポイントは、初期の仮説自体には固執せずに論点を拡げてみることです。そして対象に対する興味関心や課題解決への情熱が発想力の源泉 と成ることを意識しておきます。

仮説設定はあくまで思考の踏み台とすることで、固定概念や執着から解放して新たな気づきを探索する柔軟な観察眼の維持を心がけます。

思考の余白による発想の連鎖反応

仮説を基に観察を行う内にいくつかの新たな気づきに出会う事があります。その気づきに対して繰り返し自問を繰り返すことで論点をさらに精製ていきます。

例えば、問いの切り口を抽象化することで新たな問いへと展開し新たに論点が生まれる切っ掛けを導きます。その際に初期仮説はあくまで問いを導く誘い水として活用して新たな問いに集中します。

なぜ問いの切り口を抽象化するかというと、抽象化による俯瞰視することでアイデア発展の余白を設けておくためです。初期の問いにおいては、「広げすぎずも制限しすぎない」状態で発想の連鎖反応を起こせる可能性を残しておきます。

また思考プロセスを放射状に視覚化するマインドマップなどのツールを要いることでアイデア出しの効率化が期待できます。具体的には仮説を中心に据えてそこから放射状に問いを導き出し、新たな仮説を思いついたら今度はそれを中心に据えて新たに再考します。それにより視覚的に過去の発想として扱うことになり、新たな気づきや発見に自然に集中することでアイデアの固執を回避出来ます。

この「仮説設定」>「観察」>「問い」>「気づき」のプロセスはアート思考の場合では、ビジョンなどの創出にも役立ちます。またデザイン思考の場合には、解決すべき課題の柱として方向性を定めて観察を繰り返しながら洞察を深めて創造へ繋げます。

質の高い「問い」は、新たな価値や斬新なソリューションを創造するためのサーチライトの役目。

問いを立てる準備

着想の引き出しを蓄積する

アート思考の本質は、自己内部の視点から問いを見出すプロセスとも言えます。アート思考を利用して新規ビジネスを立ち上げようとして、なかなか斬新なアイデアにたどり着かない現象は問題意識を引き起こす対象が不明瞭であったり、問題意識の欠如に起因します。

常日頃から自分がどのような物事にこころが動くか自己モニタリングで振り返りつつ、それを言語化した問題意識や疑問のストックを日頃から用意しておくことが役に立ちます。あのレオナルド・ダ・ビンチも生前に多くの「ダビンチ・ノート」手稿を残すメモ魔でした。

普段から何か引っかかる物事:「驚き」、「納得」、「不満」、「違和感」などの快・不快を意識しなぜそう感じるか「意識する」ことが新たな問いを立てる第一歩となる。

例えばマインドマップなどのスマフォアプリに日頃から感じる感情を言語化して問題意識の種をストックしておきます。今ではスマホで音声メモを録音し音声データを自動で文字起こしするなど、どこでも手軽に記録を残せる手段が豊富にあります。

周囲に意識を持ち続けるマインドセット(心構え)

更に文字に起こして視覚化しておくことで、反復し見返すことで新たな気づきを得る効果も期待できます。続けるコツは、隙間時間の利用で気軽に続けることです。

問題意識のアンテナを高く意識しておくと、不思議と関連情報がよく目につくようになります。また手段が目的にならないようにストックを定期的に振り返えり、気づきとしての情報アウトプットの整理をすることにも気を付けます。それにより、問題意識のアンテナ感度もアップデートが期待できます。

アート思考とデザイン思考の問いの立て方

純度の高い問いを精製するために

ここではアート思考とデザイン思考で問いを立てる方法を整理していきます。アート思考とデザイン思考では、プロセスの最初の観察する対象は自己(内面)他者(外部)で異なります。共通事項は、固定概念に囚われない心待ちで対象に対して問いや仮説を繰り返し検証することで論点を精錬し本質を確認していきます。

初期の問いでは予定調和でアイデアが飛躍しないことが多く、発想が伸びない場合が出て来ます。そのような時には問いを繰り返して視点変換や視野を広げて別の確度からもより深い洞察にたどり着くことを目指します。

アート思考の場合は直感も大切にしますが、クリティカルシンキングなどの併用で客観的な観点からもアイデアを検証しながら着想を鍛錬します。それは強靱な鋼を作り出すために熱い鉄を繰り返し打ち込むように自問を繰り返す行為と言えます。

観察対象の違いを理解する

アート思考における観察対象は、社会や日常の環境に対する自己内部から湧き上がる感覚になります。つまり、自分を取り巻く社会全体です。日頃から日常に抱く疑問や違和感は、新たな発想を導く視点となります。

一方でデザイン思考における観察対象は、課題解決における既存ユーザーなど自分以外の他者です。その他者の視点で世界がどの様に映るかを読み解くことがポイントになります。

観 察アート思考デザイン思考
対 象自己モニタリングで内側から感じる日常や世の中ユーザー(他者)の課題
目 的見落としがちな違和感・当たり前へ疑問を抱く無意識下に存在する感情を読み解く
アート思考とデザイン思考の「観察」から問いを精錬する際の違いと共通事項

「問い」を深める2つの手法

1. 5Whys分析|問題改善型アプローチ|

トヨタ自動車が社内で実施している原因究明や改善分析の手法である「5 Whys分析(なぜなぜ分析)」があります。問題が起きたときに「なぜ?」を5回、繰り返して問うことで問題の本質を掘り下げて鋭い洞察を導く手法です。5回ほど自問自答していくことで目の前の事象が深掘りされ、徐々に因果関係や問題の原因が構造化されて本質が顕れてきます。

この手法を利用することで、問題の本質へ掘り下げることが期待できます。また5Whys分析の注意点としては、個人の感情や思い込み、また具体性のない事象(推測)を論点に据えないことが挙げられます。

本来のなぜなぜ分析の目的は、現場で起きた問題の解決手段を導く分析手法です。あくまで起きた事象に集中し思い込みになる「推論」や「推察」を避けて原因やその構成となる要因を整理した上で解決策を見出していきます。

デザイン思考においては問題解決の手法としてそのまま利用が可能ですが、アート思考の場合はあくまで創造的な発想を導く為の洞察を深める手段として「5Whys分析」のスタイルを活用します。その場合は、回数には固執し過ぎずに自問自答の工程を繰り返すことで着想の飛躍に意識を集中します。

2. アプリシエイティブインクワイアリー(AI問診法)|ポジティブ心理学のアプローチ

アプリシエイティブインクワイアリー(AI問診法)とは、関心や強みなどポジティブな側面に対し問いかけながら潜在的な可能性を探究し未来に向かう肯定的なイメージを共有し、変化に向かう力を養い成長プランを描く手法です。その役割を端的に言い表せば、「未来の可能性の解像度を高める」ことです。

このポジティブ心理学の手法は本来、人材開発や組織改革に主に活用されますが特にアート思考の場合、漠然とした初期の問いの入口となる快・不快となる要因に対しポジティブ心理学の問診手法で問いの内容や輪郭を明確にするのに役立ちます。

ポジティブな感情で自身に対して内側から湧き上がる気持ちに呼びかけるようにして問いが先に進むような問題設定を意識します。

例:「自分にとってなぜ興味をひかれているのか、その根本の原因は何であるのだろうか?」、「どのようにしたら更に自分はこの問いに対してワクワクしながら大きな学びが得られるか?」など。

アプリシエイティブインクワイアリーの4つのプロセス(4Dサイクル)

STEP
Discovery|発見

関心事項の中心となる価値・強み(ポジティブコア)の探索 :「どのような点を最も面白いと感じているのか?」

STEP
Dream|望ましき未来の姿

そのアイデアにより未来がどう変化するか可能性の描写:「その価値が実現したら社会にどのような変化をもたらせるか」

STEP
Design|実現方法の設計

アイデア実施のための理想と現実を埋める作業:「どのような人材やチームが必要になるか」

STEP
Destiny|行動計画の策定

継続的に取り組むための実行計画を活動内容に落とし込む:「はじまりの一歩をどう行動したいか」

この手法のメリットは内発的動機づけであり否定的な固定概念の枠組みから外れて、求める未来の姿に集中しチームの共通目標の維持から能力を発揮する仕組みにあります。課題発見よりも、改善対策やビジョン策定などに適した手法になります。

まとめ

筋の良い問いで発想を飛躍

アート思考やデザイン思考などのアプローチや心構えを学んでも、ビジネスの現場で実践してみて期待した斬新なアイデアを得られない場合、多くの場合は初期の問いの立て方で発想が飛躍しない結果になることが考えられます。

繰り返しになりますが、どんな思考技術を用いても問いの着眼点や切り口が平凡ではそこから導かれる施策はそれ以上に斬新なものに飛躍することは期待できません。問いの立て方次第でプロジェクトの成功が掛かっていると言っても過言ではありません。

まずは、斬新な切り口を「問いのデザイン」で見いだすことを意識します。また仮説を立てる際にも、問題点を構造化し論点整理することで論理的に仮説立てが行えます。注力すべき点は、どのように問題解決(How)することだけでなく、筋の良い新たな問いを発見(What)することです。それにより、枠自体を最適化する意識から少ない情報でも枠自体をあらたに作り上げる創造で独創的な発想や問題を導くことが可能になります。

まとめ:失敗しない独創的な問いをデザインするとは
  • 与えられたテーマと論点は別に捉えて問いを深掘りする
  • 視座を高めて大局的に事象を俯瞰したり視野を広げて問いを掘り下げたりして論点を研ぎ澄ます
  • 初期仮説から問いを繰り返して抽象化しながら思考を跳ね上がらせる余白を持たせる
  • 洞察が浅く論点が鈍い状態ではそこから生まれてくるアイデアはそれ以上に斬新なものには成らない
  • どのように問題を解決するでなく、どんな問題を解決すべきかを見出することが斬新な発想へ繋がる

参考文献

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