アイデアを生み出す発想力とは、仕事において新規事業やサービス開発などの企画立案から改善活動など問題解決でもビジネスパーソンに最も求められている能力。しかし、アイデアを求められても簡単に思いつかないのも事実です。
今回は、新たな価値やサービスなどの「創造」を導くアイデアの着想を生み出す発想力を「5段階のフェーズ」に分け、情報の「入力と出力」と「仮説と想像」の2ステージの関係性などを交えて発想力を高めるヒントを思索していきす。
キーワードは、発想を導く為の知識や経験から着想を育くむ「ひらめきの土壌と源泉」です。
豊かなアイデアを育む発想の土壌
新たな課題を発見する千里眼
世界は未曾有のウィルス拡散や紛争などで社会や常識の在り方さえも変貌を突きつけられてきました。更に一般に受け入れられてきた職種や経済活動が先端テクノロジーの到来と定着で消滅する世界へ変貌してきています。
このような状況では従来の正しい解を導く問題解決の方法ではなく、新たな問題や課題を発見する千里眼こそが不明瞭な時代では必要とされます。
誰もがレオナルド・ダ・ビンチのように「万能の天才」に成れる訳ではなくとも、アイデアマンの作法から今の時代を生き抜くヒントがあると考えます。

インプット作業で耕作する「ひらめきの源泉」
興味関心の種を記憶の土壌に蒔きアイデアの芽を耕作する
「歴史上、最も強烈な好奇心を持った男」評されるレオナルド・ダ・ヴィンチは、絵画を始め、音楽や彫刻、植物学、地質学、物理学、幾何学、天文学、解剖学、また乗り物や機械類の発明から軍事戦略や都市計画まで興味関心と活躍のフィールドが広大でした。
ダ・ヴィンチは生前にヨーロッパ中を移動する中で、様々なサイズのノートにメモを残す習慣が有ったと言われています。
現存するノート(手稿)の総ページ数はおおよそ8,000ページにて、ナポレオンやビル・ゲイツなどがその一部の手稿を収集していました。そのノートの大半は、思いついたアイデアを書き留めているインスピレーション・メモでした。

また、読書家として年間50冊以上を読破するビル・ゲイツ氏は、電子書籍ではなく敢えて紙の書籍を愛読すると伝えられています。その理由は、本を読んでひらめいたり、気づいたりしたことを即座に書籍の余白にメモが取れるからだそうです。
また、読書を発想の学習と捉えて、本から得た新しい知識を忘れない内に書き留めて頭の中のアイデアを整理し、記憶に刻まれやすくするメモ術を活用していたとも言われます。
書籍から得た新たな気づきや知識と、自身の経験から貯えた既存の知識を結びつけて読書を仕事や人生に役立てる。まさに、インプット(読書)とアウトプット(メモ)作業による発想の整理術と言えます。
目の前の言葉と自分の経験をどう結びつけるか by ビル・ゲイツ
「天才ビル・ゲイツに学ぶ、読書を“血肉”にするための5つのルール」 日経XTREND 2023.02.28
発想を加速させるエネルギー
発想が弱いと思考の飛躍が弱く予定調和でありきたりなアイデアしか生み出せないことが頻繁に起こります。それはある意味、エネルギー不足でエンジンを十分に回転させられずに発想が加速(飛躍)しない「思考の不完全燃焼」の状況です。では、思考を湧加速させるには何が必要になるでしょうか。
例えば、創造の燃焼エネルギーとなる好奇心や情熱であり、更に加速装置であるイグニッションとしての体験や知識という知見の土台が発想を飛躍させる源泉です。
好奇心や情熱というエネルギーと豊富な経験や知識という着火装置が発想のエンジンを動かす起動力(=発想力)となりアイデアを加速させる。
ダ・ヴィンチにも共通する点は、普段からあらゆる方向にアンテナを張りめぐらせる知的好奇心で興味関心の眼を周囲に向ける姿勢です。
それは、つね日頃から無意識に近い好奇心による情報のインプット作業を”アイデアの種”として記憶の土壌にアイデアの種まきをしている状態です。
結果として、その種が地下茎として記憶に根を張りめぐらせてある瞬間に記憶と記憶が繋がり実を結ぶ感覚がアイデアマンの「ひらめきの源泉」とも言えます。この問題意識のストック内の結びつきが、新たなアイデアとして創造の実を結ぶ可能性を秘めます。
日頃から周囲へ好奇心の目を向け、疑問や自問を繰り返す問題意識によりひらめきが起こり新たなアイデアの発見へと繋げることが創造活動の足掛かりとなる。
アイデアマンと博学な人の特徴と違い
実行を伴う創造力を兼ね備える
“アイデアマン“といキーワードでグーグル検索する際、 “仕事が出来ない” というサジェスションワード(検索補助となるサブワード候補)が出てきます。時にアイデアマンに対して、「口先ばかりの絵空事を言う人」というネガティブなイメージを持つ人もおられるかも知れません。
因みに、発想が豊かな真のアイデアマンと博学な人の一番の違いは、実務家と評論家のように発想を具現化する出力作業(アウトプット)の違いと考えます。
つまり、多様な知識から面白いアイデアを思いついてもそれを具体的な行動や行為に結びつけられなければ、個人の感想や妄想でしかありません。
例えば、アーティストなどの創造的活動の場合では造形や音楽などの作品が生まれ、ビジネスでは商品・サービス開発や新規事業計画などアイデアを具現化することが発想力の目的です。頭の中の思いつきで終わらせない創造という行動にまで繋げられるのが真のアイデアマンと考えます。
ただ、時に空想や妄想は、論理的な思考では思いつかないアイデアの飛躍を起こす効果があります。例えば、ブレーンストーミングで考えが行き詰まって来た時に敢えて荒唐無稽な発想で思考を刺激して飛躍させるテクニックにもなります。
ビジネスにおける発想力の事例
例えば、テクノロジーの世界を例にとれば新たなデジタル分野は市場浸透の速さに比例して模倣が容易で、次第に差別化が困難になります。
最新テクノロジーを導入してビジネスでどのような新たな価値を提供するか、発想の転換で他社と異なる市場やアイデアを導き出せなければ差別化を生み出せずにいれば、いずれは追いつかれ淘汰されるでしょう。
ここでは、発想の転換でヒットを生み出した2件のビジネスにおける事例を紹介します。
発想の転換で生み出されたヒット商品
事例1. ダイソン:吸引されるゴミを敢えて露出する掃除機
ダイソンの掃除機の開発における著名な話しで、ゴミの貯まる円筒状のタンク部分のデザインを透明にしてゴミが吸い込まれるサイクロンの状態を可視化し、不快なゴミの存在を掃除の達成感へ価値変換した発想でヒット商品を生みました。
当初は、ダイソン本社の開発会議で「ごみの見える掃除機」に反対の声が経営陣やマーケティング部門からも挙がっていました。しかし、最後は社長のダイソン自身がタンクの透明化を決断したと伝えられています。この発想の転換は、技術力だけでなくヒットを生み出す発想力の例と言えます。
彼(ダイソン)が一番つくりたかったのは「掃除をすること自体の楽しみ、喜び」を感じられる掃除機だという。それを、あの透明のごみタンク(クリアビン)で表現したわけである。(中略)ごみが掃除機に溜まっていく様子が見える。「15分前に掃除したばかりなのに、また掃除機をかけたらこんなに溜まったよ」と人に気づかせる。それによって掃除が楽しくなる。
出典:奥山清行. 「ビジネスの武器としてのデザイン」 祥伝社 2019年
事例2. ブラウン:早朝の剃り残しを訴求する髭剃りCM
同じような発想は、電気髭剃りメーカのグロバールブランドであるブラウンのフォーマットCM展開として剃り残しを街頭インタビュー型式の模様が過去に放映(1981年〜2003年)されました。
その内容は、朝の通勤時間に既に髭を剃ってきた男性にブラウンのシェーバーを試してもらいどれだけ剃り残しがあるかに驚くことで技術力をアピールする手法です。
単に技術力を直接的に訴求するのでなく、剃り残しの髭を見せてCM閲覧者にも驚きを促す発想の転換でより鮮明な印象を創造した例でした。このようにコミュニケーション展開などにも新たな価値転換の発想が役立った例となります。