ビジネスで役立つ観察力を高める(第二版)

イメージ画像|仕事に活かす観察力とは探索と気づきによる新たな発見を解説します。
意識することで変化や兆候などに敏感になり、洞察の足場を生み出す観察力とは
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「観察力」という言葉を考えると、向き合う対象や現象を注意深くかつ客観的に意識し理解を深めるだけではなく、自問しながら問いと仮説を繰り返す自己対話で新たな気づきを導き行動に繋げる能力とも言えます。

特定の職種や仕事、研究・開発のみに求められる能力ではなく、あらゆるビジネスシーンで知的生産に必要となる気づきや変化を察する技術でもあります。ビジネスに役立たせる観察力を考察していきます。キーワードは、発想と行動の入口であり行動の扉を押し開く「ドミノ倒しのファーストピン」です。

目次

視覚と認識のギャップ

以下の画像を見て、何が書かれてるか考えてみて下さい。

見ると認識の違い|トリックアートの見本|観察力とは?
見ることと認識することのギャップの図例

正解は、アルファベットで”LIFE“の文字が書かれています。これは有名なトリック絵です。目に映るモノは、見方により認識が変化することを示唆する例です。

観察とは必ずしも視覚だけで行われる訳はありませんが、感覚器官の中でも、私たち人間が受け取る情報の約80%以上を視覚から受け入れていると言われています。このトリック絵からも分かるように「観察」の基本は眼で情報を整理するだけでなく、多様な観点から問いと考察を繰り返す思考行為でもあります。

観察とは

観察=「意識を向け」+「繋ぐ」情報探索の活動

まずは「観察」という言葉の意味を掘り下げていきます。言葉を分解してみると「観る=意識を向ける」と「察する=気づく)」という構成になります。因みに漢字の「観る」を辞書で調べてみると、注意深く意識して見る意味と定義されています。

また「観察」の語源は仏教の言葉に由来し、智慧(ちえ)によって対象を正しく見極めるという意味があると言われます。つまり、観察とは対象を注意深く「意識を向け」、そして情報を「繋ぎ」探索する行為と言えます。

「みる」行為のレベル感

常用漢字で「みる」を表す単語には、見、観、視、看、診、鑑、覧、察、監、督など多く漢字が存在しニュアンスも異なります。観察の「みる」行為は、視覚情報を中心としつつも五感で感じる全ての情報を対象とした探索でもあります。その情報を整理する中で直感や閃きなど気づきとなる自己内部の情報を繋げ理解を深める行為が起こりますます。

今回は敢えて3つの英単語:WATCH, LOOK, SEE, を用いて「みる」という視覚行為のレベル感を3つのシンプルな構成で思索していきます。

まずはWATCHは、2つの言葉より時間的に長く注意深く向かい合って眺める状況(映画や絵画鑑賞、監視や見守りなど)に利用します。LOOKには、意識的に視線を向ける意味があります。それに対してSEEは、対象物が自然に視界に入っている状況や理解を表します。

スクロールできます
WATCH動作のあるものを注意深く視線を向ける看護、監視、鑑賞
LOOK意識して目を向けたり探す状況正視、調査
SEE視界に入る状況知覚、理解
出典:excite英会話 「【lookとseeとwatchの違い】それぞれの意味と正しい使い方は?」

注意深さの観点で考えると、WATCH>LOOK>SEEの順番で表せます。まじまじと対象に視線を向けて「みる」様子や状況を表す意味ではWATCHを、調査や分析など思考と行動も合わせて示す意味ではLOOKが使われます。SEEにおいては、見えるという一般的な現象や理解を示すニュアンスがあります。

特にビジネスシーンで考えると、事象と人、または、商材の特性など目視だけでは確認できない多様な要素が複雑に交差した観察が必要となる場合があります。

例えば、経営課題で売上げの改善をテーマとした場合では、一次情報の売上げデータの数値を分析しながら、商品/サービスの課題、売り手/買い手などの行動や販売手法など要因分析の観察対象は多岐に渡ります。基本は客観的な視点で情報収集を行いながらも、より深い洞察が必要な場合には内面から湧き上がる問い(疑問)や仮説などの主観的な思考を用いて新たな着想を引き出すことが重要となります。

一言で観察と言っても、対象や目的によって観察のレベル感や取るべき行動範囲は異なりまが、まずは、状況や目的によって多様な観察レベルが存在することを認識しつつ対象の情報を考察します。そしてそこから新たな気づきを導くためには、問いと仮説をぶつけて思考を切磋琢磨することで洞察や閃きを導いていくと考えます。

観察とは、対象の情報観察だけでなく、内面から湧き上がる疑問や仮説設定の思考工程を繰り返し思考を研ぎ澄ますことでより深い洞察へ繋げる入口を築く。

優れた観察とは

「問い」と「仮説」で発想を揺さぶる検証サイクル

改めて観察という行為はどのような状況で必要となるでしょうか。一般的に考えれば、事象を注意深く見続けて本質を見極める研究・調査や、科学または医療関連などは容易に思いつくでしょう。

また問題解決や改善活動や会議の進行管理、また、プロジェクト管理(PM)などもチーム内のメンバーの反応や状況変化を敏感に察する必要性から優れた観察眼を必要とします。

更に踏み込んで考えれば、新たな発想で創作活動をするクリエイターなども鋭い観点と洞察で新たな創造を着想する状況に観察眼は活かされます。

これら状況では、優れた観察眼が問いと仮説の思考を繰り返しながら学びや気づき、新たな発想や思考を深める役割を担っていると言えます。

観察における「問い」と「仮説」を繰り返して発見へ導く検証サイクルの図例
「問い」と「仮説」の反復による検証サイクルの図版

観察眼がその他の能力を導く

ビジネスでは、先見性決断力実行力の能力は特に経営者が先行き不透明な中で組織の舵取りを限られた情報からでも決断し素早い行動で切り抜けるために重要視されてきました

特にニューノーマル時代を迎えた現代では、あらゆるビジネスにおいて今までにない新たな発想や着想が求められる中でそれを推進する力が「ドミノ倒しの一枚目」となる観察力です。

それは注意深く丁寧な「観察」で情報を精製しインプットの質を高め、自己内部から湧き上がる「問い」を引き起こしながら「仮説」を立てる工程を反復し検証することで発想となるアウトプットの確度を高めます。この情報インプットの質を高めることが観察の目的です。

観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか」の著者である佐渡島 康平氏は、観察は「問い」と「仮説」のループ工程で創造を導くと説いています。観察とは、自分で見出した「仮説」とセットで発想を揺さぶる考えは非常に共感を持てました。

いい仮説は、ある主体が、物事に対して仮説をもちながら、客観的に物事を観て、仮説とその物事の状態のズレに気づき、仮説の更新を促す。一方、悪い観察は、仮説と物事の状態に差が無いと感じ、わかった状態になり、仮説の更新が止まる。


出典:佐渡島 庸平著「観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか 」 SBクリエイティブ出版 2021年

優れた観察眼とは、問いや仮説を反復することで観察情報を精製してインプットの質を高め斬新な着想を引き寄せる。

観察の阻害要因

着目する観点によって解釈に変化が生じます。これは、脳内の情報処理が「解釈」へ影響を及ぼしていることを示していると言われます。また心理的側面では、バイアスと言われる偏見や主観により外界の認識にフィルターを掛けてしまうこともあります。この脳科学心理学の2つの観点から観察力を思索していきます。

脳科学の観点

視覚は脳科学の観点では、目に映る一次情報を脳で一旦、情報処理が行われると言われます。つまり、脳の解釈した内容を受動的に受け入れているとも言えます。

目に入った光をどう解釈するかというのは、この「私」が意図的に行っているんじゃなくて、あくまで「脳」が行っている。「私」という存在は、その脳の解釈を単に受け取っているだけであって、脳が解釈したものから逃れることはできない。「見る」という行為は結構不自由な行為だと思う。

出典:「進化しすぎた脳」池谷裕二 著者 講談社 2007年

視覚に入る情報を毎回、確認し身体へ指示する流れでは時間が掛かり過ぎるため、学習や経験などの知識を利用して脳が先行し情報処理を行うショートカットとなるバイパスの仕組みが脳内に存在すると脳科学者の池谷裕二氏は「進化しすぎた脳」の著書で上記のように説明しています。

例えば野球で打者がボールを打つ場合も、球筋を眼が全て捉えているのではなくピッチャーの投球フォームなどの情報から、脳内で球筋を予測し打撃に必要なタイミングでバットに当てる反応を生み出していると考えられます。

心理学の観点

一方で、観察において客観性を持って対象を観察する重要性は頻繁に言われてきました。その理由には、偏見や先入観(Bias: バイアス)の存在があります。これらは無意識に働くため、完全に取り除くことは困難でもあります。ただし、必ずしも先入観は完全な悪でもありません。

時に、感情や信念などは外界の不要なノイズを遮断し精神を安定させて保護する役割として、または、判断時間の短縮化や自信やモチベーション維持などにもバイアスが利用されているとも考えられます。

むしろ自分自身がどのような認知バイアスをまとっているか、自分の思考の癖を理解し共存できる意識を持つことも重要だと考えます。

代表的な認知バイアス

代表的な認知バイアスには、都合の良い情報だけを集め決断を有利に解釈する「確証バイアス」や、結果から全てを予測していたように振り返る「後知恵バイアス」、また先に得た情報の印象が後の判断に影響を与える「アンカリング効果」など、約100種類以上の認知バイアスが存在すると言われます。

この他にも、騒がしいパーティー会場などで自分の名前や親しい知人の声など興味を持つものには反応する聴力版の選択的注意である「カクテルパーティー効果」や、後半の観察力の鍛え方で紹介する「カラーバス効果」などもこれと同様で見えてくる世界や受け取る情報量が変化することを意味します。

重要なのは、思い込みや価値観、信念などそれらの「メガネ」を通した世界の見え方が変化することを意識し、さらに多様な観点が存在することを認識しておくこで心を整えます。また、意識的に「メガネ」を替えて見え方を変えることで、新たな気づきや発見の機会を意図的に生み出すテクニックとしても活用が出来ます。

※認知バイアスの詳細に興味のある方は、参考までに外部サイトのリンクを掲載しておきますのでそちらもご参照下さい。

自問と仮説による観察の検証サイクルを繰り返すことは、無意識に起こるバイアスや脳の解釈を緩和して認識の阻害要因を意識的に濾過を施す効果もきたいできます。

参考|認識漏れを起こす選択的注意|「見えないゴリラの実験」

観察を妨げる要因の一つに心理学の観点で、視野や意識が限定される選択的注意(selective attention)が存在します。意識が一部に集中し過ぎると他の状況に気づき難くなることを証明した「見えないゴリラの実験」などが有名です。

この実験では被験者はビデオの中で白と黒の服を着たチームに分かれてボールをパスしている映像を見ながら白服のチームが何回ボールをパスしたかを数える指示が出されます。

半数近くはボールのパスを数えることに集中し映像内の異変に気づかけなかった実験結果となりました。

マジシャンが観客の注意を他に引きつけておいて仕掛けに気づかせないために使うミスディレクションという手法は、この選択的注意の仕組みを利用したものになります。

※実際の実験映像。(1分22秒)

「見えないゴリラの実験」: 被験者は上記の映像を見ながらボールのパスした回数を数えるあまりにその他の変化に気づき難くなる実験映像。

ビジネスにおける観察力の主な用途

ビジネスにおいて観察は、さまざまな用途で必要とされる行為とも言えます。問題解決や研究・開発以外にも異常検知やリスク管理、対人関係における円滑なコミュニケーションや会議・ワークショップにおけるファシリテーション、または、学習や改善活動など多用な用途に活用されます。これらビジネスにおける観察の主な用途を見ていきます。

主な使用の目的例

1. 誤認(ミス)の防止やリスク管理

誤認などを抑制や安定した管理機能の実施:例)品質管理オペーレーション管理

2.コミュニケーション能力や対人関係の向上

場を察したり周りへの気配り:例)ファシリテーションプロジェクトマネジメント管理(PM)

3. 情報整理や学習・改善

傾向を把握したり状況の整理やアイデア捻出の手がかり例)アイデア出しデザイン/アート思考の実施

この中で「2.コミュニケーション能力」と「3.学習・改善」における観察力を具体的に考察していきます。

観察と気遣いの関係

「コミュニケーション能力の向上」の観点から鑑みると、観察とは気遣いであるとも言えます。

例えば担当者と打ち合わせをしている最中に突然ノートPCにばかり目が向いていれば、メールかメッセージなど急用が入って来たことに気づくでしょう。その場合、後で討議内容の要点をまとめた議事録などを自主的にメールで担当者に送る気遣いも関係構築において大切になります。

多忙な担当者や上司に重要な伝達を行う場合など、状況によって正確に伝達を行うために口頭と文面の2重の伝達手段であるダブル・スタンバイの実施で、相手の認識漏れや誤認を回避する気遣いで信頼関係を構築することも可能となります。

過去の経験でも、新たに組織に参加されて間もないクライアントの担当者で社内の接点や連携が少ない状況を察し、こちらで関係を持つクライアント側の他部署の活動状況を把握しながら社内調整サポートを行いました。結果、短期間でその担当者と信頼関係を築けたこともありました。

仕事において人が観察対象の場合、まずは対象に興味や共感を抱くことから始まります。そこから察することがあれば、それを関係構築に役立てられます。

学習における改善活動

観察対象が人以外の場合、例えば数値データでWEBサイトの流入数や解析数値、売上げ数値の報告などで現状の問題を把握する現状分析が必要になったとします。

目立つ異常値(変化)が発生してる場合以外は、問題の確認や予測自体を察することに時間を要するでしょう。そのような場合、規則性や法則性、過去の類似する現象などを類推しながら仮説を立て問題発見の手がかりを見出します。

問題が特定されれば、以前に紹介した問題の真相を分析する手段の「5Whys分析(なぜなぜ分析)」などの手法もあります。これは問いを5回ほど繰り返していく中で考察を深める手法です。ポイントは、分かったつもりで安易に対策を練るのでなく、深い理解と学びを繰り返して的確な解決策を導くことです。

問題改善型アプローチ|5Whys分析(なぜなぜ分析)

参考|学習観点から見た観察力とAI(人工知能)の類似性

AI(人工知能)の学習方法も、今ではディープラーニングという機械学習の中で新たな手法があります。従来は人間が特徴や学習定義を行い認識や判断のサポートを事前に行っていました。それが今では、AI自体が自身で学習する機能へ拡張しました。

これによりAIはデータから特徴をつかんで法則性を見つけ出し、識別作業や予測、会話、そして自動運転などの自立実行が可能になりました。つまり、特徴の抽出から独自に推論を構築して実行に役立てます。

学習の観点から観察力を考えると、現在のディープラーニングの機械学習の特徴である、抽出から推論を立てる工程は観察の自問から仮説検証サイクルと類似します。

観察の名人は、特徴や規則性(パターン)を発見する名人とも言えるでしょう。

AIは丸暗記ではなく特徴をつかんで法則化しているからこそ、新しいパターン、つまり未知の状態についてより正確に予測ができるようになるのです。

出典:野口 竜司「文系AI人材になる統計・プログラム知識は不要」東洋経済新報社 2019年

「観察力」と「洞察力」の関係

まず「観察力」と「洞察力」における一般的な解釈は、目に見える表層の認識とその根底に潜む本質を見抜くという意味で語られてきました。例えば、推理小説や映画で名探偵の細やかな目配り(観察眼)から推理(仮説)へ繋げて謎を解明(洞察)していく関係が上げられます。丁寧な観察で情報の収集と整理を行い、情報の背景に潜在する真理を炙り出すことで深い洞察に近づきます。

その為、アウトプットとして鋭い洞察を得るためにインプットとしての情報収集における観察は重要な役割となります。気をつけるポイントとして、情報収集の網羅性や情報量にこだわり過ぎて決断や実行の時間を遅らせないことです。自己内部から感じ取る「問いと仮説立て」で観察の検証サイクルを繰り返すことで思考と洞察を深めます。

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必要な要素留意点
観察力「観る力」と「気づく力」バイアス排除と情報の精査
洞察力「分析力」と「推測力」背景に潜む真理を見出す
「観察力」は、細やかな情報収集により深い洞察を導く行為。

「洞察力」を導く観察の軸

観察力における断片情報を収集する「観る力」に対して、洞察のために集積した断片情報から連鎖反応を起こしたり繋がりを見出す閃きなどを起こす能力を「洞察力」とここでは定義します。この連鎖を引き起こすためには、主な着眼点となる観察の軸を活用します。

例えば、漁師さんが翌日の天気を雲の様子や夕日の状況など自然の様相から予測する知恵は、日々の経験から蓄積された予測のものさしとなる「観察の軸」です。

そこで、気づきから洞察につなげるための主な観察の軸を掲載します。主に、1.変化2.比較3.類推4.傾向があり、情報の収集や整理に役立てます。

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観察の軸気づきに繋げるポイント
変化異なる様子となる異質や違和感
比較同質や異質などの質量における比較
類推類似・共通などの特徴の抽出や推測
傾向繰り返し起こる規則性や法則性の特徴やパターンの把握
気づきを導く着眼点となる「観察の軸」の一覧

例えば、同僚のいつもと異なる様子に気づいた場合、例えば、視覚的情報である髪型や服装、あるいは表情や態度などの普段と異なる変化を察しています。

近しい間柄であれば直接、本人に理由を聞くかもしれません。そういう親しい関係でない場合は、限られた情報から推測を働かせたり他から情報を入手したりするでしょう。

「問い」を自問しながら観察の軸を用いて「仮説立て」を行う観察の検証サイクルを繰り返して、情報の本質を導く気づきの「洞察」へと繋がりだします。

「気づく力」とは断片情報を繋げて、洞察のための潜在的な文脈を浮かび上がらせ情報を構造化していきます。それはパズルのピースをつなぎ合わせて一枚の絵を再現するような「洞察」の足場作りです。

ビジネスに活かす観察力の実践ポイント

想像力と注意力で情報を読み取る

ビジネスにおける観察行為で最初から多くの情報収集に集中するひとが見受けられます。無論、生命などを預かる医療現場では、誤った判断は致命的なミスを誘引しかねます。一般的なビジネスシーンにおいては、限られた情報から仮説立てを行い観察の検証サイクルを実行することで、素早く行動を起こすための判断材料を早期に見出すことが特に重要です。注意すべき点は、完璧な情報収集に固執して判断に時間を掛かけ過ぎて機会を逃してしまう状況です。

まずは、視野を広く持ち自問と仮説を繰り返して対象へ意識のセンサーを向けます。具体的には先ほどの選択的注意の心理などに注意しつつ、意識的に情報を呼び込んでいきます。

例えば営業が初めての担当者と面会しに行く際、オフィス内の雰囲気や室内の備品など周囲までに目を向け、あらゆる社内の情報を観察します。情報は単体では明瞭な意味が見えてこない場合も、掛け合わせることで理解を深めるヒントが浮かび上がることがあります。

意識のセンサーを張りめぐらせておくことで、断片情報から情報連鎖の準備を施します。個別の情報を整理する中で、点在する情報群が繋がり洞察の足場が浮かび上がり閃きに繋がる起こりにもなります。

留学時に人物デッサンのクラスで、「目に見える表層の形状だけを捉えて描写するのでなくその下層にある骨格や人体構造も想像して描きなさい」というアドバイスは、今でも意識のセンサーを発動する教えにも繋がっています。

目に見える現象は注意を怠らなければ、誰もが察知することは可能でしょう。ビジネスにおける経営課題などは、論点も複雑に絡み合い、時には想像や勘で潜在する問題の本質を探るダウジング作業*のように見えない地下鉱脈を探ることが必要となります。*ダウジング作業:地下水や貴金属の鉱脈など隠れた物を棒や振り子などの器具の動きで探り当てる手法。

隠れた前提条件の発見

表層に現れて居ない部分へ意識を掘り下げる観察眼は、ビジネスにいては特に重要となります。なぜなら問題解決や改善を前提とした観察の場合、隠れた前提条件の存在が背後に潜んでいる可能性があるからです。

ビジネスで観察力を活かす際、特にプリセールスなどは初動の情報整理は受注に大きく影響してきます。特に競合プレゼンなどの提案時は、限られた時間と情報を基に隠れた前提条件の発見がプレゼンの勝敗を左右すると言えるからです。

プレゼンで失注する時の主な原因に、ヒアリングが不十分で担当者の発言やRFP(提案依頼書)に対して先方の言葉のままで提案を行い、差別化がない提案内容で最後には見積金額で競合他社に競り負ける場合があります。

初めて会う担当者がどの様な状況であるか、取り巻くさまざまな状況を観察し察することがまずは重要です。例えば、担当者と上長との関係、担当者の直属部署内における立ち位置、または組織内における部署間の状況など、個人間や部門単位、または組織レベルで課題に対する思惑が微妙に異なることもあります。

組織単位の課題を担当レベルの粒度に翻訳し直して再考するなど、各レベルの視点で課題の再考することで隠れた前提条件が浮かび上がらせることがあります。お題となるメインの課題を検討しつつ、担当者にとっての課題のペインポイントはどこにあるかを観察し、提案内容に隠れた前提条件として補足提案をすることで競合プレゼンで有利に進めるテクニックにもなります。

自社サービスや事業の課題解決で、関わるステークホルダーごとの粒度から課題を分割し観察することで隠れた前提条件の顕在化させる。

観察力のある人の特徴

インプットの質を高められる能動的な行動

周囲に対して興味や疑問を抱く「好奇心」は、観察力の根本的な必要な資質です。また、自問や仮説立てを行い物事の本質を掘り下げる「探究心」は、対象に興味を深める「好奇心」によって導かれる関係と言えます。

この「何故だろう」と考えながら興味関心を向ける「好奇心」や、一旦、自分なりに考えをまとめながら段階的に本質へ掘り下げていく学習行為とも言える「探究心」が低いと、ビジネスでは受身がちとなり言われたことだけをこなす作業者というマイナスの評価でみられてしまうことがあります。

例えば上司から調べて欲しい作業依頼を受けた場合、作業意図を確認せずに取りかかる場合と、上司に大まかに意図を確認した上で作業に取りかかる場合では後者の方が上司が望む通りの成果物を提供し易くなり、やり直しなどの無駄を軽減するリスク回避が可能になります。

ビジネスでは曖昧な指示を受けることは良く起こります。しかし結果を残せるビジネスパーソンは、日頃から好奇心と探究心の能動的なスキルセットでインプット作業の質を高め理想のアウトプットを生み出します。この点に関して、元WBA世界スーパーフライ級チャンピオンで源ボクシングトレーナー飯田覚士の著書に「見る」行為と意識して「認識する」違いが説明されています。

「目」で見るというのは、あくまで情報の収集を目が行っているというだけ。情報処理や、処理した情報に適した反応をするということまでが「見る力」です。

出典:飯田覚士『人生を変える「見る力」 マキノ出版 2018年

観察力を高める方法

連想と妄想を利用した「観察力の鍛え方」

観察力の鍛え方で一般に紹介されている方法としては、絵画鑑賞や日記、読書や写真撮影などがよく挙げられてきました。ただ時間の制約などで容易に試したり継続しづらいことも考えられます。

仕事の隙間時間でも簡単に試せる観察力を鍛えるトレーニング法をいくつかここでは紹介します。ポイントは、「連想」と自由に想像を楽しむ「妄想」の活用で観察力を高めます。

1.カラーバス(Color Bath)

まず最初は、情報探索センサーの感度を高めるカラーバス(Color Bath)を紹介します。名前の由来は、色を一つ選んでその色縛りの情報を浴びるように探索することから付けられています。

これはちょっとした移動時間などでも行える手軽な方法です。まず、強制テーマを設けることで客観的な視点により新たな発見の幅が拡がります。それは情報の方から飛び込んでくるような情報の連鎖反応が体験できます。

集めた情報は一見、関係が無いものにも思えます。これらを連想ゲームのように断片情報を繋げてストーリを浮かび上がらせることができます。これは、自分では思いもしない斬新なアイデアを導くことに役立ちます。更には、アイデア探索の感度を上げる複眼の思考を身につけることにも期待が持てます。

また色だけでなく、形状、音など他の発見ヒントの軸を代えて実行すると集まる情報の幅も変わり飽きることなく行えます。これを偶然の出会いから新たな発想を生み出すセレンディピティ体験と言います。

2.贈り物を考える

次は、誰かに贈るためのプレゼントを考える(空想する)ことで観察力に必要な共感を高めるトレーニングです。ポイントは口頭などで直接欲しているものでなく、相手の日常を参考に想像しながら考え出します。

例えば、身近な同僚などにコンビニでおやつを購入してみて、本人の反応をみるなどで簡単な実験も出来ます。ひとの趣味嗜好を想う行為が、共感を導くための観察力を高める身近なトレーニングにもなります。

3.特徴を掴む/真似る

最後に観察眼を鍛えるた特徴をつかむ“ものまねトレーニング”です。特定の人物を選んでその特徴を考えます。声や仕草、雰囲気、また、身につけたている物や普段の口癖などその人の癖や特徴を思い返します。

このような特徴の抽出作業は習い事は、学びにおける観察力を利用した基本能力でもあり、アートのデッサンも技術面だけでなく同じ意図で模写を学ぶ側面があります。

実際に絵を描くにはハードルを高く感じる方も多くいると思われますが、人の特徴を想像するだけであれば場所や時間に関係なくどこでも行えるのでお奨めです。コツとして特徴を捉える際に、特徴を他に例えるような抽象化を利用すると連想が働き易くなり多くの特徴を導き出せます。

例えば見た目や雰囲気が芸能人に似ていないか、喩えとなるものを探すことで特徴を思いだしやすくなります。この類推して新し発想を生み出す方法をアナロジー思考とも言います。

これらトレーニングはどれも気軽にいつでも行え、情報連鎖による気づきや視点変換、共感など観察力に必要な素養を刺激します。ゲーム感覚で気軽に楽しめることが観察力の鍛え方のポイントです。

まとめ

ビジネスで観察から鋭い洞察や新たな発想を導くために

観察を実行する時には、あまり難しく考えずに対象を理解するヒントとなる情報に意識を向けていきます。その研ぎ澄ました意識は、ドミノ倒しの初めの1枚であるファーストピンのように連鎖反応で他の能力を引き出す影響を与えていきます。

まずは好奇心で対象を捉え、感じた内容の理由を考えて断片情報を繋ぎ合わせて初期仮説を立てます。そこから観察検証を繰り返すことで内在する多面的な情報構造の輪郭が見えて新たな発見や深い洞察が湧き上がります。

その中で変化や差分、類推や傾向などの着眼点で背後の意味や文脈をさらに浮かび上がらせていきます。特にビジネスシーンでは、さまざまな思考技術や問題解決の技量が必要とされますが、それら能力の礎となるのが観察力であり、思考や行動の推進力となる重要な役割になります。

まとめ:【ビジネスで役立つ観察力を高める】
  • 観察とは「観る力(=探索)」と「気づく力(=繋ぐ)」で構成される
  • 意識することで変化や兆候などに敏感になり、洞察を生み出す足場を生み出す
  • 仕事で問題解決や改善活動、そして気遣いなどの対人関係にも役立つ汎用的な能力
  • 見る行為と認識にはギャップがあり、能動的な好奇心や探察力の意識が観察力をさらに高める
  • 関わるステークホルダーごとのレイヤー単位の粒度で課題を分解することで隠れた前提条件の顕在化に役立てる
  • 情報連鎖による気づきや視点変換、共感などがは観察力を高めるために必要な素質

参考文献

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