「デザイン思考」の考え抜く技術

目次

デザイン思考の注意点

思考の反復実証

アイデアを捻出しチームで作業を繰り返していきますが、最初はチーム内で発想し実行することが慣れない方も多いと思います。失敗からも学びを得ると心得て、考え過ぎずに思考・行動と検証サイクルを繰り返すことで思考停止やプロジェクトの停滞感を打破します。

アイデアに飛躍を起こすために

対象ユーザーに向き合う「共感」とは、現状の問題点に対する固定概念をリセットさせる思考のストレッチ運動と考えてみてください。固定概念を剥がし、ユーザー視点で問題発見課題設定解決の流れの中で「適切な問い」を発見することがデザイン思考の成功の鍵です。

デザイン思考を実施して、ありきたりなアイデアしか出てこないとの相談を受けることがあります。多くの場合は、「発散と収束」によるアイデアの拡張や飛躍が起こらずに固定概念から抜け出せず、また、自由な発言が起こり難い場の雰囲気が主な原因となります。

適切な問いを導く「発散と収束」による思考のストレッチ図
予定調和のアイデアに終わらせない為の「発散と収束」による思考のストレッチ

固定概念を払拭できない状態では、ありきたりな論点から抜け出せず予定調和でありきたりなアイデアしか生まれない。

国内におけるデザイン思考の導入事例

国内でもデザイン思考に対する興味関心は、セミナー開催頻度や関連書籍の発行状況、またデザイン思考の検定テストの開催や大手企業のテスト導入件数の増加傾向からも浸透してきた状況が読み取れます。

組織別の事例

企業の事例

国内企業でデザイン思考のプロジェクトを導入するニュースも見受けられてきました。大手企業では、パナソニックの商品開発を事業部横断で進める組織や、ヤマハの社内公募制による企業内起業家の育成や富士フイルムなどデザイン思考の組織導入の事例があります。

自治体の事例

自治体の取り組みでは、福島県は産業振興課が中心となり地元の中小企業のモノづくりをクリエーターの知見と結びつけてデザイン思考を導入した新たな商品開発や販売戦略までを取り組む支援活動が行われています。

特設サイトには、デザイン思考によるモノづくり方法を、「クロスSWOT分析」や「3C分析」などのフレームワークを誰でも試せるようなテンプレートのダウンロードなど分かりやすい情報発信やセミナー開催などデザイン思考の促進に取り組んでいます。

デザイン思考の導入時のチェックポイント

デザイン思考もビジネスシーンや大学の授業に取り扱われるほど注目は続いています。しかし、海外事例ほどの多くの成果を耳にするには依然、発展段階とも捉えられます。

福島県の自治体サポート事例のように、県内の中小企業が新たな商品開発などを行うための導入の場合、事業規模の原理により組織内の意思決定の速さで導入障壁が低いことは容易に考えられます。

組織規模と社歴を有する企業の場合、新たな取り組み自体に組織文化として理解浸透の時間が掛かることが想定されます。ここでは導入における留意点や問題点を整理していきます。

1.目的の明確化

デザイン思考の場合は、ユーザー起点で問題定義を深める流れが主な特徴です。言い換えると、既存のユーザーに対する問題の改善や横展開でアイデアを創出する流れに特化しています。まずは目的に合わせてどのフレームワークを導入すべきかを丁寧に検討します。

新たな市場開発や新規事業の創出の場合は、デザイン思考単体ではなくアート思考とクリティカル思考など価値創造に長けた思考のフレームを合わせて併用することも必要です

2.メンバー選定

デザイン部門がある組織がデザイン思考を引率する場合でも、プロジェクトメンバーは関連する事業部門や管理部門など部署を横断した多様なメンバー構成がアイデア創造の観点だけでなく、全社でコミットし実施する姿勢がその後の実行ステージを考慮すると理想のスタートとなります。特に事業部門は組織の中心として発言権を有し、斬新な改善策に対して慎重になる傾向があります。

初期から組織の主となる事業部門などに参画してもらいサイロ化や反発を避けた社内共創の場を設る。

3.組織内のお墨付き

ボトムアップの部門横断で開始する場合、就業時間内の活動は、組織の承認が必要になります。ただ時間外で同士を募る非公式の勉強会レベルのスモールスタート型式もあります。いずれにせよ現場主導の場合は、各上長への打診と定期的な報告を行い組織内のお墨付き活動という大義名分を受けて今後の組織内部の浸透に備えます。

いつでも上層部や社内外を巻き込み、今後の組織内の啓蒙や浸透を見据えた準備を施す。

3.プロジェクト運営環境

固定概念を取り払うことや役職や部門間の関係を感じさせないフラットな場を作ることが最初に重要になります。理想は、いつもの職場環境と違う場所での実施です。

例えば座る配置でも、上座などが関係しない円形などのテーブル配置を事前に考えます。因みにデザイン思考でユーザー観察から始める理由は、メンバー間で客観的な事実の認識合わせです。

環境を変えることで、組織の慣習や固定概念を払拭す仕掛けを用いて参加者のマインドをリセットする。

4.発言を促しアイデアを育む

デザイン思考に限らず、活発な意見交換になれてない参加者がい場合、自分の意見に固執したり相手の意見に最初から懐疑的で否定的な態度を取り発言が滞りがちになります。

外部ファシリテーターや専門家など第三者にプロジェクトの推進を依頼したり、発言者とアイデアを分けるためにポストイットなどで書き出した意見をホワイトボードや壁に貼りだすことが冷静に発言を出すことに有効です。

意見と人格(発言者)を分離して整理することで、感情の衝突を回避する仕組みを施す。

5.「納得解」の生成

私たちは学校受験などの進学教育の中で、「絶体解」を導き出す受験テクニックを身につけることが社会に出る直前の教育として一般的でした。デザイン思考で導きだす方向性は正解だけでない周囲が共感できる「納得解」です。

そのために素早く試作と検証を何度と繰り返し実証を重ねながら納得いくアイデアを精製していきます。焦りは禁物です。これはIDEOの言う「Desghing thinking is mindset: デザイン思考とは、心構えである」がデザイン思考の本質を言い表しています。

失敗を恐れず全てから学ぶ心構え(=学習活動)が重要になることをメンバー間で共有する。

6.慎重なユーザー理解

人間中心設計(HCD)は、デザイン思考の起点として初期にユーザー観察から扱うべき問題定義を導きます。その観察手法の中でユーザーインタビューでありがちな失敗は、ユーザーの感想や意見をそのまま受け止めてしまうことです。あくまでユーザーテストなどの言動は、本人にも無意識な価値観に基ずいた”氷山の一角”の場合があります。

他者へ共感するには、その言動の背景にある前提情報や判断基準である価値観の把握が必要を表す認知構造の「氷山の一角」を表すイラスト
言動の背後にある判断基準としての価値観を掘り下げることで課題に対する「潜在的ニーズ」を明らかにする

特にプロトタイプの感想に関してその理由を掘り下げて確認しない場合、問題の本質が不鮮明でアイデアを早計に生殺しにしてしまう可能性が危険があります。

ユーザー中心の思想とは旧来の顧客至上主義とは異なり、ユーザー自身の無意識にある要望を発見し本質を問い直す洞察力が成功の鍵になる。

7.適切な問題設定

前述の問題定義を誤った結果、ありきたりなアイデアしか出てこないケースがデザイン思考のワークショップでよく見かけます。その原因は、本質を問う洞察が浅いために起こります。

デザイン思考に限らず、発想の起点である正しい問題設定をするためには、思い込みや固定概念を払拭することが必要となります。その為に社内の人材だけで取り組まずに外部の専門家を招致したり外部の視点を取り入れる仕組み作りを検討する。

予定調和なアイデアしか出てこない場合は、議論すべき論点を見直したり問題を再定義してみる。

まとめ

デザイン思考を成功させるために

スポーツと一緒で、理論を学んだら知恵となるよう行動を繰り返し経験を積んでいきます。最初は少人数からはじめて、徐々に組織内部へデザイン思考を浸透させる方法を模索します。

なぜなら、デザイン思考の組織に導入時における主な課題として企業文化組織構造や評価基準目的意識の不統一などが引き起こす組織内の壁が頻発します。

また、発想の起点を技術や機能からひとを中心に据え適切な問いを立てることも鍵となります。そのためには社会や周囲に対する興味関心を普段から抱き、思考を繰り返して考え抜く姿勢もデザイン思考には重要です。

デザイン思考とアート思考の違いなどは、他の記事内に解説を記載してます。そちらも合わせて参照ください。

“デザイン思考との違いと共通点”

“イノベーション開発におけるデザイン思考とアート思考の関係性”

事業デザインを具現化し「実現性」を高める思考パターン

まとめ:【デザイン思考とは】
  • デザイナーが創造的なアイデアを生み出すための行程である、共感、ストーリーテリング、実験などを活用
  • 直線的な行為でなく、繰り返し学習を行う意識で深い洞察とニーズを導く
  • ひとを基点にし、プロトタイプは時間を掛けずに素早く作り実験を繰す実証主義
  • 解決すべき真の課題を発見するための正しい問いの設定が重要

参考文献

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イメージ画像|デザイン思考について|ピンクのバラの華の色とパントーンカラーとを対比させているイメージ画像

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