あらゆるビジネスシーンに活かせる観察力とは

イメージ画像|ビジネスに活かす観察力とは探索と気づきによる新たな発見
意識することで変化や兆候などに敏感になり、洞察の足場を生み出す観察力とは

一般のビジネスパーソンが現場で活かせる観察力をテーマに解説する上で、まず「観察」という言葉を振り返ると、表層を捉えるだけで無くその背後の文脈や事象の隠れた意味が何かを解読しながら洞察を導き出す重要性があります。今回はデザイン思考やアート思考だけで無くあらゆるビジネスシーンで活かせる観察力について考えていきます。

目次

観察力の目的と役割

米国の大学でアートを学んでいた時に人物デッサンの授業で、「表目に見える物理的な形状を描写するのでなくその下層にある骨格や人体構造を想像して描きなさい」と教わりました。日本で仕事において観察を意識した時にこのアドバイスを思いだし観察の本質を捉えて居ると感じました。観察と言う言葉を耳にすると幼少期の動植物の観察日記などを思い出す人も多いと思います。因みにオンライン辞書で観察の言葉の定義は次のように記されています。

細かく観察して、細かな物事によく気付く様子、観察の結果を多く得られる様子、などの意味の表現。

参照元 Weblio辞書

辞書の定義を分解すると、文字の通り「観る」と「気づく」の2要素が観察の主な要素となります。言い換えれば情報を意識して「探索」し「繋ぐ」行為と言えます。因みに漢字の「観る」は、注意深く意識して見る意味で使われます。観察時における「観る」とは、視覚を中心としつつも五感で感じる全ての情報が対象となります。そして「気づく」とは、情報を整理する中で想像力や直感、または閃きなど自己内部で断片情報の関係を繋げる行為と言えます。

ビジネスシーンにおける観察を活用する状況は、主に対人関係における相手の理解や円滑なコミュニケーション、または対象のニーズを察するリサーチや各種分析業務、リスク管理などに活用されます。これら前提の中で「観察力」は、観察対象に対する新たな気づきや理解を深め隠れた前提条件やビジネスの文脈を発見する能力であり、その役割は情報収集のセンサーとして洞察を深める情報整理としての足場を築くことです。それはまるで断片情報の中から潜在する意味や文脈を発見するダウジングのような作業と言えます。※ダウジングとは、地下水や貴金属の鉱脈など隠れた物を棒や振り子などの器具の動きで探り当てる手法。

目的新たな気づきや理解を深め隠れた意味や文脈の発見
役割情報収集のセンサーとして洞察を深める情報整理
観察力の目的と役割

「観る力(探索)」+「気づく力(繋ぐ)」=「観察力」

観るとは|意識を持って探索する姿勢

まず観察の「観る力」を考えると、観察対象の潜在的な意味や文脈を探し求める能力のことになります。ここで留意する点は、まず先入観を排除し好奇心を活用し気づきに繋がる情報を意識することです。また情報の網羅性を気にし過ぎる必要はありませんが、視野を広くし自分が感じる取る物事に集中して探索を始めます。

意識を持つことで探索センサーの感度が高まり更に的確に関連する断片情報を収集し出します。例えば初めての営業先の担当者に会いに行く際、単に自社やサービスの説明に伺う心構えだけでなく、担当者が抱える問題や組織の課題を察する目的を意識することで、担当者の言動だけでなく面会する直前のオフィス内の雰囲気や室内の備品など周辺環境までに自然と目が向くようになります。

このように意識のセンサーを張りめぐらされることで断片情報の中から関連する情報の連鎖が起きます。この連鎖反応を起こすことで個別の情報が整理され気づきへと変化するのです。それが洞察の足場を築き上げます。

「観る」言葉の意味

英語で“みる”を指す主な単語には、LOOK, SEE, WATCHなどの表現がありますが繊細な意味が異なります。LOOKは、意識的に視線を向ける意味があります。SEEは、対象物が自然に視界に入っている状況と理解を表します。WATCHは、2つの言葉より時間的に長く注意深く向かい合って眺める場合(映画や絵画鑑賞など)に利用します。

WATCH動作のあるものを注意深く視線を向ける
LOOK意識して目を向けたり探す状況
SEE視界に無意識に映る状況
参照元:excite英会話

注意深さで考えるとその順番は、WATCH>LOOK>SEEとなり、観察という意味ではWATCHまたはLOOKのイメージとなります。

「みる」という行為の仕組みと死角

脳科学の観点で見る行為とは、視野に入った一次情報を脳が処理を行って本人がその解釈を認知する無意識の行為と言われていいます。つまり脳科学の観点からは観察とは、脳が認知した内容を意識的に再解釈する行為と言い表せます。

目に入った光をどう解釈するかというのは、この「私」が意図的に行っているんじゃなくて、あくまで「脳」が行っている。「私」という存在は、その脳の解釈を単に受け取っているだけであって、脳が解釈したものから逃れることはできない。「見る」という行為は結構不自由な行為だと思う。

「進化しすぎた脳」池谷裕二 著者 講談社

視覚に入る全ての情報を自身で判断していては時間が掛かり過ぎるため、経験や知識を利用して脳が先行し情報処理を行う仕組みが脳内には存在します。例えば野球で打者がボールを打つのも球や球筋の全てを精緻に見ているのではなく、練習などでピッチャーの投球フォームや球が離れる瞬間を予測し打撃に必要なタイミング情報と感覚を学習してバットに当てることが可能になると言われます。よって観察でも対象を漠然と眺めるのでなく、意識しながら対象を捉えることで学習効果によりバットに球を当てるような筋の良い観察眼を身に付けるようになります。

因みに観察を妨げる要因として心理学の観点からは、視野や意識が限定される選択的注意(selective attention)が存在します。意識が一部に集中し過ぎるすると他の状況に気づき難くなることを証明した「見えないゴリラの実験」などが有名です。この実験では被験者はビデオの中で白と黒の服を着たチームに分かれてボールをパスしている映像を見ながら白服のチームが何回ボールをパスしたかを数える指示が出されます。半数近くはボールのパスを数えることに集中し映像内の異変に気づかけなかった実験結果となりました。※以下が実際の実験映像。(1分22秒)

「見えないゴリラの実験」:被験者は上記の映像を見ながらボールのパスした回数を数えるあまりにその他の変化に気づき難くなる実験映像。

観察における「観る」ことは、脳科学の観点からは意識することで深い認識にたどり着き、心理学の観点からは集中し過ぎて視野が限定されないように視点変換や俯瞰することが重要となります。つまり意識を集中させつつも、複眼で広角な視野を維持して見過ごしや誤解を防ぐ必要があります。

気づくとは|パズルの一枚絵を再現するように「洞察」の足場作り

断片情報を収集する「観る力」に対して、集積した断片情報から連鎖反応を起こしたり繋がりを見出したりする能力を「気づく力」と定義します。この連鎖を引き起こすための着眼点として、例えば変化の把握は比較的容易ですが兆しやパターンを読み取るには分析の経験や知識が必要となります。例えば漁師さんには空や雲などの自然の様子から天候の前兆を読む知恵が多く存在するのは過去の経験から生まれるものです。そこで観察における気づきを導く主な着眼点に注目します。それは、1.変化2.比較3.類似4.傾向などが挙げられ、これらを利用して断片情報を整理することができます。

着眼点気づきに繋げるポイント
変化いつもと異なる様子や違和感
比較質量などの比較
類似類似・共通などの特徴の抽出
傾向形状や繰り返し起こる傾向の規則性や法則性

「気づく力」とは断片情報を繋げて、洞察のための潜在的な文脈を浮かび上がらせて情報を構造化します。それはパズルのピースをつなぎ合わせて一枚の絵を再現するための「洞察」の足場を作りです。

「観察」と「洞察」の関係性

「観察」と「洞察」の関係性における一般的な解釈では、目に見える表層の認識とその根底に潜む潜在的文脈の発見という定義が多く見られます。例えれば、推理小説や映画で名探偵が細やかな目配り(観察)から推理(洞察)へ繋げて謎を解明していく過程と似ています。つまり丁寧な観察で情報の収集と整理を行い情報の背景となる文脈が見えることで洞察に繋がる、同一線上の連携した関係です。鋭い洞察を得るためには観察力は重要な役割となります。

必要な要素留意点
観察力「観る力」と「気づく力」バイアス排除と情報の精査
洞察力「分析力」と「推測力」背景に潜む文脈の焙り出し
「観察力」とは、細やかな観察により鋭い洞察を導く役割。

ビジネスで実践的な観察力の活用方

ビジネスシーンで観察力を活かす場面として具体的には、プリセールス時における相手の隠れた前提条件の発見や問題解決や改善活動などの初動の情報収集に必要になります。特に競合プレゼンなどの提案時には、限られた時間と情報を基に隠れた前提条件の発見がプレゼンの勝敗に大きな影響を及ぼすほど観察力は必要な能力となります。

例えば初めて会う担当者がどの様な状況であるかを、前の打ち合わせをしている人とドアの前で立ち話をしながら時刻ギリギリでミーティング室に入る様子から担当者を取り巻く状況を察することが出来るでしょう。また持ち物から筆記具を複数持参している場合では慎重で几帳面な一面も推測されます。

更に同じ担当者が打ち合わせ中にノートPCにばかりに目が向いていれば、話しの内容が適切に伝わらない可能性もでてきます。そのような気づきを感じた場合、要点をまとめたサマリー資料や議事録を自主的に後にデータ配布したり、伝達手段において口頭と文面など2段階の手段(ダブル・スタンバイ)など工夫をこらして多忙で几帳面な担当者を気遣うサポートにより信頼関係を構築することも可能となります。この場合の観察力とは、ビジネスにおける気配と言い換えられます

過去に似た経験で、まだ組織に就任されて間もない方で社内との接点や連携が少ない状況を察したことがありました。こちらで関係する他部署の活動状況や他部署の担当者の行動を差し障りが無い範囲でお会いする時に情報共有を施しながら社内調整のサポートを行い、短期間でその担当者と関係構築を築いたこともありました。

ビジネスシーンにおいて人が観察対象の場合、まずは対象に共感を抱くことから始まめます。そこから何か察することが出来れば自然な気遣いなどを導けて関係構築に役立てられます。

人以外が観察対象の場合、例えば数値データでWEBサイトの流入数や解析数値、売上げ数値の報告など予測や因果関係などの事象究明が考えられます。このような場合、目立つ異常値(変化)以外は直ぐに原因を理解しづらいですが、隠れた規則や法則性、過去の類似する現象などの着眼点で分析することで解明の手がかりを見出すことが出来ます。具体的な方法では以前に紹介した問題改善の分析手段である「5Whys分析(なぜなぜ分析)」などの手法があります。

問題改善型アプローチ|5Whys分析(なぜなぜ分析)

このようにビジネスシーンにおける観察力は、隠れた理由の把握や問題解決の解明、ビジネスにおける気遣いなどの関係構築、新たな発見や原因究明や改善にも役立つ重要な能力と言えます。

観察力のトレーニングについて

観察力を高めるためのトレーニングで一般に紹介されている方法では、絵画鑑賞や日記、小説などの読書や写真撮影などがよく挙げられています。ただ多忙な方には、時間の制約もあり簡単に取り組みつらいことも考えられます。ちょっとした隙間時間やくつろいでいる時でも簡単にできる観察力を高めるトレーニングをいくつか紹介します。ポイントは、想像と妄想の活用です。

まず最初は、情報探索センサーの感度を高めるカラーバス(Color Bath)を紹介します。名前の由来は、色を一つ選んでその色縛りの情報を浴びるように探すことから付けられています。これはちょっとした移動時間などでも行えます。強制テーマを設けることで新たな視点で探索を行い発見の幅が拡がります。それは情報の方から飛び込んでいくような情報の連鎖反応を体験できます。集めた情報は一見、関係が無いものですが連想ゲームのように断片情報を繋げてストーリを浮かび上がらせることもできます。基本はアイデアの種を探すのに利用されますが、新たな視点を身につける視点変換のトレーニングとして探索の感度を上げることも期待出来ます。また色だけでなく、形状、音など他の発見ヒントのテーマを代えて実行すると集まる情報量も幅も増え飽きること無く行えます。

次は共感力を鍛えるために、誰かに贈るためのプレゼントを妄想することで観察力に必要な共感を高めるトレーニングです。ポイントは口頭などで直接欲しているものや既知の嗜好性をプレゼントの選択にせず、相手を想い本人はそのものを知らないけど貰ったら喜ぶような品を想像して選びます。例えば身近な人に手軽なおやつを購入して、本人の反応をみることも出来ます。

最後に観察眼を鍛えるための“ものまねトレーニング”です。特定の人物を選んでその特徴を想像します。声や仕草、雰囲気、またはいつも身につけたている物や口癖などその人の癖や物を思い返します。このような特徴の抽出作業は、観察の基本でもあり、絵を描く際なども同じ観点で模写などを行います。実際に絵を描くにはハードルが高くなりますが、人の特徴を思い浮かべるだけであれば場所や時間に関係なく気楽に行えるのでお奨めです。

これらトレーニングはどれも気軽に一人で行え、情報連鎖や視点変換、共感や気づきなど観察に必要な素養を刺激します。ゲーム感覚で気軽に楽しめることが最大のポイントです。

まとめ

最初に観察を実行するにおいては、あまり難しく考えずに視覚情報の中から気になるものや対象を理解するヒントとなる情報に意識を向けて断片情報を集めていきましょう。その中で変化や差分、類推や傾向などの着眼点を利用して洞察力による背後の意味や文脈を浮かび上がらせていきます。

また観察とは必ずしも視覚から入る情報だけでなく、潜在的に感じとる直感も重要と感じます。その理由として、考えすぎて先入観など脳の解釈が先に働くことを避ける狙いもあります。まずは好奇心の目で対象を捉えることを意識し、妄想や推測でも感じた内容を後付けで構わないので理由を考えて断片情報を繋ぎ合わせ気づきにまとめます。

そこから更に洞察のための分析を行うことで潜在している深い情報構造化が見えてきます。それは謎解きを楽しむように理解や新たな発見を導いて様々なビジネスシーンで活用する一役に本記事がなれれば幸いです。

まとめ:【ビジネスに活かす観察力とは】
  • 観察とは「観る力(=探索)」と「気づく力(=繋ぐ)」であり、脳が認知した事象を意識的に再解釈する行為
  • 意識することで変化や兆候などに敏感になり、洞察を生み出す足場が生まれる
  • 観る時の注意点は、対象に意識を集中しつつも複眼で広角な視野を維持し見過ごしや誤解を防いで気づきを誘発させる姿勢
  • 気づく力は、断片情報を繋ぎ合わせて潜在的な文脈を浮かび上がらせ情報構造化をする「洞察」の足場作り
  • 問題解決の解明や改善活動、そして気遣いなどの対人関係にも役立つ能力
  • 観察には、必ずしも視覚などの情報だけでなく、潜在的に感じとる直感も重要

参照情報:

イメージ画像|ビジネスに活かす観察力とは探索と気づきによる新たな発見

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事を気に入って頂けましたら、シェアお願い致します
目次
閉じる