満足するデザイン会社の選定基準とポイント|失敗しないデザイン発注の教科書 Pt.2

アイキャッチ画像|デザイン制作会社の選定ポイントとは?
複雑化するデザイン制作業界で見極める3つのポイントとは?

WEBサイトやスマフォアプリのデザイン制作を新規に外部のデザイン会社に依頼する場合、どこに依頼するか迷う場合があるかもしれません。個人のフリーランスのデザイナーから独立系の制作会社、広告代理店やデジタルやIT分野に特化したエージェントなど発注先も多様に存在します。

特にデジタル領域に関わるデザイン制作では、表層の装飾だけでなくユーザー/顧客体験(UX/CX)というコミュニケーション・デザインの観点から経験価値に影響を及ぼすユーザービリティに関わる情報設計や操作性など(IA/UI)を包括する総合的なデザイン設計への配慮が必要になります。

更に顧客管理や自動化などの最新テクノロジーの活用を検討する場合は、依頼する制作会社の得意分野を理解した上で提案依頼をすることも重要です。今回は、現代のデザイン発注の際に制作会社を選別する重要なポイントをWEBサイトのデザインを例に選定基準のポイントを紹介していきます。

目次

デザイン会社とデザイナーのタイプを知る

デザイン会社の4タイプ

まずは、デザイン会社の主なタイプを4つに分類し解説します。

デザイン事務所系(デザイン・エージェンシー

規模は大きくはないが、在籍する専属デザイナーの割合が高い。代表自身がクリエイティブ出身の方が多く、営業を兼務する場合が多い。デザイン面で特徴を有する個性的なエージェントが多く存在する。

クリエイティブ・ブティック系

従来のデザイン事務所系が先端テクノロジーの要素も取り込みデジタル分野に特化し、新たな表現分野にも挑戦する。組織の規模は100人前後の中規模な組織も存在し、AIやブロックチェーンなどのEmTech(Emerging Tech:最先端技術)を活用した独自のアプリケーション開発も行う。

広告代理店系

社内に制作部門を配しながら、外部ネットワークを活用してデザインのみならず総合マーケティングサービスを行う。会社規模に関わらず営業チームを有する。総合代理店以外に、オンライン媒体に特化したエージェンシーも存在する。

IT・コンサルティングファーム系

昨今では、特に外資系ITコンサルティング会社を中心にデザインエージェンシーを傘下に取り込む傾向が強い。上流工程から開発、実装、運用までの一連の流れを取り込む。特にUXに特化したコンサルティング会社が国内外にも存在する。基本は上流工程のビジネス要件の整理や改善、事業の継続における課題解決を強みにしたコンサルティングと下流となる制作サービスの提供までを行う。戦略系のストラテジストや技術系の専門人員が社内にも在籍する。協力会社が基本的にデザイン実装を行う場合も多い。システム開発など大規模な案件を中心に統合的なユーザー体験(UX)提供を目指す。

参考:デザイン会社の変容と背景

従来は職人気質であるデザイン事務所が多く存在しました。昨今の通信インフラやスマフォなどの通信機器の普及により、テクノロジーとデザインの融合が加速し、テクノロジストとクリエイティブが集結した新たなクリエイティブブティックが台頭しています。国内では、Team LabPARTYアブストラクトエンジン(旧ライゾマティクス)や海外ではR/GAなど、また前述したIT系コンサルティング企業がデザイン会社のM&Aによる組織拡張など活発な動きを見せています。更にクラウドソーシングというフリーランスへ一括で依頼が出来るネットサービスも出現し、発注内容や規模に合わせて多様な発注先を選べるようになりました。

クラウドソーシングサービスで専門人材を探す

この4タイプ以外では、フリーランスの専門人材ストックの紹介やプロジェクト単位で案件を企業が受け付けるクラウドソーシングというネットで受発注を繋げる仕組みも有ります。クラウドソーシングサービスでは総合タイプと専門特化タイプに分かれ、総合タイプでは、Lancersクラウドワークス などが有名です。専門特化タイプでは、CraudiaBizseek といったWebの仕事などに特化したクラウドソーシングサービスも存在します。

予算やコンペやプロジェクト単位などの発注形式でも依頼が可能になり、案件規模も単発の作業から大規模の制作まで設定ができます。中小企業などロゴ作成や小規模のweb制作の場合は、予算規模からクラウドソーシングの活用も選択候補として有用です。この場合、機密保持や契約関連はクラウドサービスの提供企業と締結するケースが一般的で、瑕疵担保の責任などは問題は無いですが、デザイナーの特性を事前に理解して発注することでよりプロジェクトの進行も円滑に進められます。今度は、デザイナーのタイプを紹介します。

グラフィックデザイナーの4タイプ

私自身も、当初はグラフィックデザイナーとして中堅広告代理店で制作業務を20年以上に渡って携わりました。その経験から、今度はグラフィックデザイナーの特徴を4タイプに分類して紹介します。

グラフィックデザイナーを4事象で分けたタイプ別表
横軸に「保守」と「挑戦」、縦軸に「感性」と「論理」の4象限マトリックス。

A. 実務遂行型

装飾面のデザイン知識と理論的な思考で、きっちりと作業をこなすことを得意とします。デザインガイドラインなどのルール策定や運用設計など規則を設けた管理業務もこなします。またインターフェースデザインなどのUIデザイナーもこのタイプに属します。

B. クラフトマン型

一般的なグラフィックデザイナーのタイプ。自身の探究する分野に深い造詣を有します。例えば文字デザインのタイポグラフィーや写真構図や書籍のレイアウト設計、また配色など専門性の高い分野を得意とします。職人気質を有しながら、自身でイラストも描ける器用なタイプもこのタイプに含まれます。

C. 探検家型

活動的で多彩な趣味趣向から最新トレンドに対する臭覚が高いタイプ。特にキャンペーンやイベントなど時代を反映する斬新なデザイン業務を得意とする。

D. サイエンティスト型(研究者型)

ビジネスの目的を把握しどのように成果を生み出すか実験を繰り返しながら問題解決を中心にデザインを考えるタイプ。総合的な観点でプロジェクト全体を俯瞰しデザイン(設計)を遂行する。クリエイティブディレクターやUXデザイナーなどがこのタイプに属する。数値(サイエンス)にも興味を持ち探究心が強く、ダビンチのような文系と理系のハイブリットな人物像。

キャリアパスの側面から考えると、A(実務遂行)→D(サイエンティスト)B(クラフトマン型タイプ)→A(実務遂行)、またC(探検家)→D(サイエンティスト)などの推移が一般的に見られます。

必ずしもこの4象限マトリックスのように綺麗に分類されるのではなく、バックグランドや経験により各象限を横断するデザイナーも存在します。

デザイナーとしてどの象限が優れているなどの優劣を表しているのではなく、問題意識を内面に持ち続け考え抜く問題解決者としてのスタイルの違いを表しています。

押さえておくべきデザイン会社の選定における発注側ポイント

デザイン発注時の留意点

目的に即した会社選定

例えばWEBデザイン開発では、運用効率を上げるコンテンツマネージメントシステム(CMS)の導入やサーチエンジン対策(SEO)、更にプリセールスを効率よく推進するマーケティングオートメーション(MA)や、顧客管理システム(CRM)や営業支援ツールなどのテクノロジーとの連携などテクノロジーと深い関わりを持ってきました。

WEBデザインを外部に依頼するにしても、WEBサイトの目的や、自社運用するかなどのビジネス要件を検討しておく必要はあります。もちろんWEBサイトのビジネス要件だけを明確にし、後はどのようなテクノロジを導入すべきかシステムや機能要件は委託先に提案に含めて貰う事も可能です。ただあまりに漠然とした依頼になると、総合広告代理店などの広域の守備範囲を持っている大手の組織に選択肢が絞られてしまいます。

また昨今は、顧客体験をどの様に醸成するという人間中心の体験(UX)設計の知見が重要視されています。目的に合わせた専門性を有したエージェントやデザイン会社を選出して依頼をするのが得策です。

ビジネス要件の重要性と多角的な提案を受ける必要性

まずは発注側でやりたいことの整理と優先順位を検討し、運用面で何処まで内部でまかなえるか、それとも全て外部に任せるか発注前に社内でビジネス要件をまとめることは重要なポイントです。

その次に、それぞれ会社の特色を把握した上で異なるタイプのデザイン会社からも提案を貰うことで、多様な課題解決の観点が明確になる場合もあります。このように目的を整理してそれに相応しい会社を選定して提案をもらうことで、デザイン発注の成功を高めます。

また小規模の組織や創立まもない会社の場合、提案依頼を受け付けて貰えないケースもあります。その様な場合は、前述したクラウドソーシングサービスの利用を通して発注は可能です。

一カ所の制作会社へ一括発注と個別発注の留意点

更に発注側の理論で考えると、複数の会社に個別に発注するよりも一カ所に集約した方が契約関連などの管理業務は圧倒的に楽になります。例えるなら、録画ハードやブルーレイプレーヤーがオールインワンの薄型テレビの購入と同じ考えです。機器接続の手間が無く直ぐに利用出来ますが、何か不具合がある場合、一部品だけを交換することが出来ないリスクも考えられます。

デザインは非常に気に入っているが広告配信の運用が手際が悪く他の企業に変更したい場合、全てを一から他社に依頼し直さなければならない場合も出てくるので注意が必要です。

デザイン会社の選定基準

事前準備:WEBデザインの主流を理解しておく

WEBサイトの最近のデザイン傾向は、色彩と形状を最小限で構成したシンプルな構成と最低限の装飾が主流になります。(例:マテリアルデザインやフラットデザインなど:参考サイト”事例から学ぶ!マテリアルデザインとは “)これは閲覧状況がPC環境からSP(スマートフォン)環境へ移行し、限られた画面上での情報伝達を工夫した背景が理由が挙げられます。

装飾性を前面に出すファッション業界やBtoC向けのキャンペーンサイト以外では、使い勝手を意識したボタン配置や導線設計などのインターフェース構成(UI:User Interface)における操作性を含むデザイン設計が重要となります。

発注側も意識するwebデザインのサンプルや流行を事前に確認しておき、そのままを作成して貰う訳ではなく方向性や意志を示せる様にすることでデザイン発注の誤解や齟齬を回避する工夫を施しておきます。

1. デザイン設計のコンセプトを確認する

またプロダクトデザインのように、想定するWEBサイトの課題設定やターゲットに基づいて論理的にデザイン構成やコンセプトを説明する責任がWEBデザイナーにはあります。「平面デザインを見立てるための3要素 でも解説しましたが、デザインコンセプトは、”言葉のデザイン”でありデザインの論理的な方向性を示します。

提案時にデザイン構成の意図やコンセプトを明確に説明できるかは、デザイン判断の主な基準となりますWEB専門の制作会社の場合、デザインコンセプトはプロデューサー/ディレクターなどが考え、WEBデザイナーはその指示に従って構成のデザインする役割分担も存在します。いずれにせよ、提案されているデザイン構成を論理的に説明が行えるかもデザイン評価の判断基準とします。

WEBサイトは、常に改善を続けて育成する生き物ような存在です。ただ綺麗な構図や今どきのデザイン案を何案も持って来るだけでは、今後の起こりえる改善が必要な時の対応力は測れません。コンセプト設計を担う役割の人員がプロジェクトメンバーに配属されているかデザイン評価の重要なポイントです。

2. メンバー体制の一覧と役割を確認する

プロジェクトの担当窓口の重要性

サイト開発において規模やサイトの仕様にもよりますが、数ヶ月以上の時間は掛かります。その場合、プロジェクトの円滑な進行に大きく関わってくるのが窓口の担当者です。組織の規模にもよりますが、営業がプロジェクト進捗の窓口になる場合と、別にプロジェクト管理者(プロジェクトマネージャー:PMなど)をたてる場合があります。

当然、関わる人員が多くなればその分の人件費が見積金額に反映されます。円滑なプロジェクト進行を期待する場合は、デザインの担当者(実務者)が窓口でなく、別立てのPMなどが窓口に立って貰えると何かと問題が起きた時には柔軟な対応が期待できます。よくあるのが担当デザイナーが窓口を兼務される場合、プロジェクトが佳境に入ると実務に時間を取られて連絡が取りづらい事やコミュニケーション上のトラブルが起こります。

また営業担当が窓口を行う場合は、細かいデザイン上の修正が起こる時は直接、制作現場の方に話しをした方が早く、誤解や抜け漏れを回避出来ることも考えられます。

時折あるのが、提案時のみに招集される仮の代替要員です。これは意図的なものとクライアント側の発注が伸びてメンバー構成が変わる原因も考えられます。

過去に私もプレゼンのみで参加する”プレゼン要員”を経験することがありました。特に競合プレゼンは水物にて、受注を獲得出来ない限りそのメンバーは他の案件に参加したり複数案件を掛け持ちで対応する場合もあります。特に大きな組織の場合、このようなプレゼン要員の代替確保は、起きる場合もあり得ます。

「あのプレゼンしてくれた人が、プロジェクトに参加してくれると思って安心して頼んだのに…」。このようにならないためにもプロジェクトメンバーの確認は注意すべき判断ポイントです。

特に外部のデザイン会社を起用して提案をしている組織の場合、外部デザイナーとクライアント側が直接連絡を取り合うことを避ける傾向があります。

提案書には、窓口担当者の名前を明記し、顔写真も付けた体制図と問題発生時の連絡フローや役割が明確になる提案の依頼をしましょう。

3. 見積項目の読み方

デザイン工数の算出方式

見積の項目で、「デザイン費用一式」というざっくりとした内容を提出しているデザイン会社も多く見られました。最近ではシステム構築のプログラマーの見積もりのようにデザイナーの作業工数を、「人/月」、「人/日」で労働時間を見積ることがデザイン業界でも一般的になっています。

案件を多くこなしている会社は、実際にどのくらいの作業時間になるかを事前にある程度は想定し作業の工数を割り出すことが可能です。ある意味、経験則を測る意味合いとして、デザイン費を工数計算で算出している会社の方が安心できるとも考えられます。(デザイナー単価の比較も、これで可能になります。)

管理工数の確認

また参加デザイナーの人数やアートディレクター配置の有無、更には、プロジェクト管理者(プロジエクトマネージャー:PM)などのディレクション費用の項目が営業を含め「管理工数」として二重請求されてないかなど、プロジェクトに関わる人員の費用項目を精査します。

デザイン工数の詳細を見る

案件の規模によりますが、もしクライアント側もデザインにこだわりが強いのであればデザイン工数が他社より低い見積りの場合は、デザインの修正回数がどの位を見込んでいるか事前確認の必要があります。あまりデザイン工数を取っていない見積の場合、デザインの修正や手直し回数を極端に少なく見積もっている場合も考えられます。

仮にデザイン一式として見積を提出してくる会社の場合、案件を取りにいくための営業施策として敢えて初回サービス価格で「デザイン一式」として提出する場合も考えられます。その場合、どの位の修正対応が含まれているか担当営業に確認して、後の齟齬を未然に防ぐようにします。

まとめ

昨今のWEBデザイン構築は、仮説を立てた上で情報設計を施し、その後に定期的にユーザー来訪の活動ログ情報を確認しながら改善を繰り返す事が必須となります。前述したように、グラフィックデザインという表面としての課題解決の範囲だけでなく、ユーザーの利用価値や全ての体験における期待や感情を維持するためのプロダクトデザイン的な要素も非常に強く出てきます。

デザイン会社を選別する時には、各会社の特性を把握した上で目的に合わせた会社選定と明確なプロジェクト体制を提示してくれる会社を選出することが重要です。また課題解決の側面から見たデザイン設計、メンバー体制、そして適切な見積項目の3つを最終の選定ポイントとして見据えることもお奨めします。

今後は、実際にプロジェクトを進めていく上で制作会社とのコミュニケーションに関する留意点なども記事にしていきます。

まとめ:【デザイン会社の選別ポイント】
  • 制作会社の個性や特徴を把握し、多様な提案が必要な時には敢えて異なる特徴の会社の提案参加を検討
  • WEBサイト構築は、その後の目的によって多くの技術や運用作業を自社でどこまで必要かビジネス要件を検討
  • デザイン評価は、課題設定やコンセプトを論理的に適切に説明出来る会社を選択肢に入れる
  • チーム体制における役割と人物明記は提案事項として依頼
  • デザインの工数算出で、その組織の経験則がある程度は測れる
  • グラフィック要素の先にある体験価値の設計はプロダクトデザイン的要素としてWEBデザインに重要

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