適したデザイン会社の選定基準とは|失敗しないデザイン発注の教科書 Pt.2

複雑化するデザイン制作業界で見極める3つのポイントとは?
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WEBサイトやアプリのデザイン制作を依頼する場合、見積金額だけでない制作会社の選別する判断は悩ましい問題です。デジタル領域を含むグラフィックデザイン業務は、今では表面的な装飾だけでなくユーザー(顧客)体験というコミュニケーションデザインから操作性を高める情報設計や操作性(IA/UI)をも含むユーザーエクスペリエンス設計を含んでいます。今ではユーザーの行動体験を促し信頼関係を構築・維持する仕組み作りまでもがデザイ領域になります。今回は、現代のWEBサイト開発におけるデザイン発注の際、制作会社の選別時における評価ポイントを紹介していきます。

目次

グラフィックデザイナーとデザイン会社の4タイプを知る

グラフィックデザイナーの4タイプ

私自身、最初はグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートしたのは1990年代後半に中堅広告代理店で制作業務をこなしてきました。その後も外部のデザイン会社の制作ディレクションなども含め20年以上は制作業務に携わってきました。その経験から、グラフィックデザイナーを4タイプの事象に分類して紹介します。

グラフィックデザイナーを4事象で分けたタイプ別表
「保守」と「挑戦」、「感性」と「論理」の2軸で分けた4事象にグラフィックデザイナーを、A.実務遂行型、B.クラフトマン型、C.探検家型、D.サイエンティスト型の分類した図例。

A. 実務遂行型

装飾面のデザイン知識と理論的な思考で、きっちりと作業をこなすことを得意とします。特にガイドラインなどのルール策定や運用設計など規則を設けた管理業務までもこなします。また造形の深さによりインターフェースデザインなどのUIデザイナーなどもこのタイプになります。

B. クラフトマン型

一般的なグラフィックデザイナーのタイプ。自身の探究する分野に深い造詣を有します。例えば文字デザインのタイポグラフィーや写真構図や書籍のレイアウト設計など専門性の高い分野を得意とします。色彩感覚にも抜きん出る面も有し自身でイラストも描ける器用なタイプもこの事象に含まれます。

C. 探検家型

活動的で多彩な趣味趣向から最新トレンドに対する臭覚が高いタイプ。特にキャンペーンやイベントなど時代を反映するユニークなデザイン業務を得意とする。

D. サイエンティスト型(研究者型)

ビジネスの目的を把握しどのように成果を生み出すか探究を繰り返しながら問題解決を中心にデザインを考えるタイプ。総合的な観点でプロジェクト全体を俯瞰しデザイン(設計)を遂行する。クリエイティブディレクターやUXデザイナーなどがこの事象に属する。数値(サイエンス)にも興味を持ち探究心が強いダビンチのような文系・理系のハイブリットな人物像。

必ずしもこの4事象にきれいに分類出来るのではなく、バックグランドや経験により事象をまたいで活動するデザイナーも多く存在します。また事象ごとの優劣を表しているのでは無く、今の時代における「なぜ」という問いを内面に持ち続け考え抜くことが問題解決者としてのデザイナーの役割と考えます。

キャリアパスの側面から考えると、A(実務遂行)→D(サイエンティスト)、B(クラフトマン型タイプ)→A(実務遂行)、またC(探検家)→D(サイエンティスト)などの推移が見られます。

デザイン会社の4タイプ

今度はデザイン会社の種類を4つの分類で解説します。

デザイン事務所系(デザイン・エージェンシー

規模はそれほど大きくないものの、専属デザイナーの割合が高い。代表自身がクリエイティブ出身の方が多く、営業を兼務する場合が多い。デザインの個性が明確なエージェントが多く存在する。

クリエイティブ・ブティック系

従来のザイン事務所系が発展し、テクノロジー要素を取り込んだ新たな表現分野を得意とする。組織の規模は100人以下の中規模が多く存在し、AIやブロックチェーンなどのEmTech(Emerging Tech:最先端技術)の活用し独自のアプリケーション開発も行う。

広告代理店系

社内に制作部門を配しながら、外部ネットワークを活用してデザインのみならず総合的なマーケティングサービスを行う。会社規模に関わらず専任の営業チームを有する。総合代理店以外は、オンライン媒体に特化したエージェンシーが存在する。

ITコンサルティングファーム系

基本は上流工程のビジネス要件の整理や改善、事業の継続における課題解決を強みにしたコンサルティングサービス提供を行う。営業組織および戦略系のストラテジストや技術系の専門人員が属している。昨今では、外資IT系コンサルティング会社を中心にデザインエージェンシーを傘下に持つ傾向が強い。上流工程から開発、実装、運用までの一連の流れをまかなう。最近はUXに特化した中規模のコンサルティング会社が国内外にも存在する。基本的にはデザイン実装は協力会社が実施する場合が多い。システム開発や統合などを中心に総合的なユーザー体験(UX)提供を目指す。

従来はクラフトマン型のデザイン事務所が多く存在していいましたが、インターネットとスマフォの普及により昨今はテクノロジーとデザインの融合が加速し、テクノロジストとクリエイティブが集結した新たなクリエイティブブティックが台頭してきました。国内は、Team LabPARTYアブストラクトエンジン(旧ライゾマティクス株)や海外ではR/GAなど、また前述したIT系コンサルティングがこのデザイン分野のM&Aによる組織拡張など活発な動きを見せています。更にクラウドソーシングというフリーランスへ依頼が出来るネットサービスも出現し、発注内容や規模に合わせて多様な発注先を選べるようにりました。

デザイン会社の選別ポイント

はじめに:内部における発注時の留意点

昨今はWEBデザイン開発にしても、運用効率を上げるコンテンツマネージメントシステム(CMS)の導入やサーチエンジン対策(SEO)、更にインサイドセールスなどのプリセールスを推進するマーケティングオートメーション(MA)や、セールファース社を筆頭とする顧客管理システム(CRM)の導入など、テクノロジーとの連携が深く関わりを持ってきます。

WEB開発を依頼するにしても、WEBサイトを自社で運用するかなど将来を見越した目的やイメージを大まかでも社内で検討し何処までの機能や今後の拡張性が必要か検討します。

もちろんWEBサイトのビジネス要件だけを明確にし、後はどのようなテクノロジを導入すべきかも提案に含めて貰う事も可能です。しかし、あまり広範囲になるとやはり、総合広告代理店などの広域の守備範囲を持っているところは有利になります。特に昨今は、顧客体験をどの様に醸成するという人間中心の体験(UX)設計が重要になっています。

そのような観点で考えると、依頼する場合は目的に合わせその専門性や実績を有したエージェントやデザイン会社に依頼するのが得策と考えます。

一般的な発注側の理論で考えると、一度に複数の会社に発注するよりも一カ所に集約した方が事務手続きや管理は圧倒的に楽になります。これは、例えてるなら録画機能やブルーレイプレーヤーが入ったオールインワンの薄型テレビの購入と同じで、機器接続の手間が無く直ぐに利用出来ますが、何か不具合がある場合、一部品だけを交換することが出来ないリスクも考えられます。

デザインは非常に気に入っているが広告配信の運用が手際が悪く改めたい場合、全て他の企業に一から依頼しなければならない可能性も出てきます。

まずは発注側でやりたいことの整理と優先順位を検討し、運用面で何処まで内部でまかなえるか、それとも全て外部に任せるか発注前に社内でまとめるべき重要ポイントとなります。

その次に、それぞれ会社の特色を把握した上で異なるタイプ(個性)のデザイン会社から提案を貰うことで多様な課題解決の観点が改めて明確になる場合もあります。目的に合わせて提案をしてもらう依頼先をはじめに選定する事が成功の礎となります。

デザインの評価ポイント

WEBサイトのデザイン開発においては、最近の傾向は色彩と形状を最小限で構成したシンプルな構成と装飾が主流になっています。(例:マテリアルデザインやフラットデザインなどー参考サイト”事例から学ぶ!マテリアルデザインとは “)これは閲覧状況がPC環境からSP(スマートフォン)環境へ移行し、限られた画面上の表現が進化していきました。

装飾性を前面に出すファッション業界やBtoC向けの消費材などと異なり、装飾美よりもその使い勝手を意識したボタン配置や導線設計などのインターフェース構成(UI:User Interface)における操作性を含むデザイン設計が重要になっています。

どちらかと言えばプロダクトデザインのように、想定するWEBサイトの課題設定やコンセプトに基づいた造形の構成をWEBデザイナーは理論的に説明する必要があります。

提案時にデザイン構成の意図やコンセプトを明確に説明できるかは、デザイン判断の基準に成ります。WEB制作会社の場合、課題設定に基づいたコンセプトをプロデューサーなどが考え、WEBデザイナーはその指示に従って構成をデザインする場合もあります。いずれにせよ、提案されているデザイン構成を論理的に組み立てているかを説明できるかがデザイン評価の大きな判断ポイントとなります。

プロジェクトメンバー構成と担当者の明記

WEBサイトは、常に改善を続けて育成する生き物ような存在です。ただ綺麗な構図や今どきのデザイン案を何案も持って来るだけのデザイナーでは、今後の起こりえる問題解決や改善が必要な時には力不足になることが予想されます。コンセプト設計を担うプランナーやプロデューサーの役割がプロジェクトメンバーに配置されているかの確認も重要になります。

また、サイト開発において規模やサイトの仕様にもよりますが数ヶ月以上の時間が掛かります。その場合、プロジェクトの円滑な進行に大きく関わってくるのが窓口役の担当者です。組織の規模にもよりますが小規模の組織だと営業がプロジェクト進捗の窓口になる場合と、別の実務者がプロジェクト管理者(プロジェクトマネージャー:PM)となる場合に分かれます。

当然、関わる人員が多くなればその人件費が見積金額に反映されます。円滑なプロジェクト進行を期待する場合は、デザイン業務の担当者(実務者)が窓口でなく営業担当や他のPMが窓口に立って貰えると、何か問題が起きた時の素早い対応が期待できます。よくあるのがデザイナーの方が窓口を兼務される場合、プロジェクトが佳境に入ると実務に時間を取られて連絡が取れない事も起こりえます。

また営業担当が窓口を行う場合、細かいデザイン上の修正が起こる時は直接、制作現場の方に話しをした方が早く、誤解や抜け漏れを回避出来ることも考えられます。更に時折あるのが提案時のみに招集される仮の提案要員です。これは意図的なものとクライアント側の発注が伸びてメンバー構成が変わる原因が考えられます。

私も過去にプレゼンのみで参加する”プレゼン要員”を経験することがありました。特に競合プレゼンは水物にて、受注を獲得出来ない限りそのメンバーは他の案件に参加したり複数案件を掛け持ちで対応する場合もあります。特に大きな組織の場合、よく起きる場合があり得ます。

「あのプレゼンしてくれた人が、プロジェクトに参加してくれると思って安心して頼んだのに…。」このようなポイントも注意すべき選別ポイントになります。

このように担当窓口になる人やプロジェクトの体制面を選定時に確認しておくことは重要です。特に外部のデザイン会社を利用して提案をしている組織の場合、外部デザイナーとクライアント側が直接連絡を取り合うことを避ける傾向があります。提案時には窓口役やそれぞれの名前を体制図に明記し、顔写真も付けてメンバー構成と役割が明確になる提案をしてもらうように依頼しましょう。

見積項目の確認

見積の項目で以前は「デザイン費用一式」というざっくりとした内容を提出しているデザイン会社も多く見られました。最近では、システム構築のようにデザイナーの作業工数を、「人/月」、「人/日」で計算することがデザイン業界でも一般的になっています。

案件を多くこなしている会社は実際にどのくらいの作業時間になるかを事前に想定し作業の工数計算が可能になります。ある意味、経験則を測る基準としてデザイン費用を工数計算で算出している会社の方が安心できるとも受け取れます。

また参加デザイナーの人数やアートディレクター配置の有無や、デザイン会社の場合、プロジェクト管理者(プロジエクトマネージャー:PM)であるディレクション費用の項目が、営業以外にも「ディレクター工数」として不要に二重請求されてないかなど、プロジェクトに関わる人員の費用を精査します。

案件の規模によりますが、もしクライアント側もデザインにこだわりが強いのであればデザイン工数を気持ち多めに確保している会社は納得いく結果に繋がりやすい場合も考えられます。あまりデザイン工数を取っていない見積の場合、デザインの修正や手直し回数を極端に少なく見積もっている場合も考えられます。

仮にデザイン一式として見積を提出してくる会社の場合、案件を取りにいくための敢えてサービス価格として「デザイン一式」として提出する場合も考えられます。その場合どこまで修正の対応が含まれているかを備考欄などで確認するか、担当営業に確認し後の齟齬や問題を未然に防ぐことができます。

まとめ

昨今のWEBデザインは、仮説を立てた上で情報設計を施しその後、定期的にユーザー来訪の活動ログ情報を確認しながら目的に向けた改善を繰り返す事が必須となります。前述したように、グラフィックデザインという一側面としての課題解決の範囲だけでなくユーザーの利用価値や体験の全てにおける期待や感情を維持するためのプロダクトデザイン的な要素も非常に強く出てきます。

デザイン会社を選別する時には、各会社の特徴を把握した上で目的に合わせたプロジェクト体制を組む組織を選定することが成功への一歩となります。状況によっては、全てを一社に任せるのでなく複数の組織にそれぞれの得意分野を発注することも念頭にいれつつ、課題設定の側面から見たデザイン設計、メンバー体制、そして適正な見積項目の3つを選定基準として考えることをお奨めします。

今後は実際にプロジェクトを進めていく上で、制作会社とのコミュニケーションに関するテクニックなどを記事にして掲載していく予定です。

まとめ:【デザイン会社の選別ポイント】
  • 制作会社の個性や特徴を把握し、多様の提案が必要な時には敢えて異なる特徴の会社の提案参加を検討する
  • WEBサイト構築は、その後の目的によって多くの技術や運用を要するため自社でどこま運用を行うかを検討した上で適任の会社を選定する
  • WEBサイトにおけるデザイン評価は、課題設定やコンセプトを理論的に説明出来るかが判断基準になる
  • チーム体制における役割と人物明記は、提案要素として依頼する
  • 見積内容の工数算出で、その組織の信頼性と経験則がある程度は見えてくる
  • グラフィック要素の先にある体験価値の設計に及ぶプロダクトデザイン的要素がWEBデザインには重要となる

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