失敗しないデザイン発注の教科書〜Pt.1 デザイン発注の準備編

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デザイン発注で失敗しないための準備とは?

WEBサイトやカタログ、ロゴデザインなどのグラフィックデザインをデザイナーに発注する際、意図した方向でハズさないデザインを制作してもらうにも一苦労。伝え方でも「きれい」や「親しみやすい」などの曖昧な表現は捉え方では、ひとにより解釈も異なり期待する成果物が直ぐに出てこない可能性があります。第一回目は、クライアント側で納得のいく提案を受けるためのデザイン発注時の準備ポイントを紹介します。

目次

発注時における情報の棚卸しの重要性

「とりあえず」的なデザイン依頼の落とし穴

ランチ時に何を食べようか迷うことは、誰にもあるかと思います。特に食にこだわりが無ければ予算で決めるなり、もしくは人気店、メニューなどを判断の基準を思いつくでしょう。例えば、初めて訪れるレストランに入っていきなりシェフに向かって、「とりあえず何かおいしいモノを作ってください」というセリフは、常識ある大人はまず言いません。しかし、グラフィックデザインの発注現場では、このような意味の依頼が意外と多いのも事実です。

この深層にある意識は、提案して貰う中から選択するとい他力本願的な思考とも言えます。言い換えれば、方向性が発注者の中でイメージが無い状況での見切り発注です。ヘアカットで例えるならば、よほど気心の知れたスタイリストにお願いするのでない限り、初対面の美容師にお任せで依頼すれば、1ヶ月は残念な容姿で生活するリスクがあるのと同様です。

自分が何を食したいのか、どのような髪型にしたいのか、行動する前に要求を少しでも整理してから伝えた方が、当然このような危険を冒すリスクは軽減できます。デザインを発注するにあたっても、まずは自社の情報整理が重要となります。この情報の棚卸しを実際にどのように進めるかを次に説明していきます。

デザイン発注するためのコミュニケーションの整え方

3C分析によるクリエイティブの方向性を提示する

ビジネスにおいてWEBサイトや企業ロゴ、カタログなどの制作物は、狙うべき市場や世の中に対して自社の存在をどの様に伝えたいか、まずはビジネスの方向性(=提供価値など)を整理や再確認することから始めます。それを実行するためのフレームワーク(情報整理の枠組み)の一つである”3C分析“を簡単に紹介します。因みに3Cとは、ビジネス環境を構成する以下の3つの要素から情報を分析していきます。

  1. Customer:顧客・市場の戦略分析
  2. Company:自社内部の戦略分析
  3. Competitor:競合他社との戦略分析

このフレームワークは大前研一氏が80年代初頭に企業戦略のために考えたもので、顧客を中心にし本来は自社の提供価値の競争性を明確化するための枠組みです。現在ではマーケティング分析などにも応用されています。これをデザインを依頼するための基本情報としてアレンジして活用します。

STEP
ターゲット顧客の明確化と構造化

自社の商品やサービスの購買判断をする決定者であるコアターゲットの選定、および、必要に応じてその決定を左右するサブターゲットなどのターゲットを構造化します。それは誰に対する商品、サービスであるかを明確にすることです。可能であれば、想定ターゲットの悩みが何であるかを仮説で構わないので想定しておくことも、デザイン構築のみならず、サイト構築やサービス開発・改善の際に役立ちます。

※戦略分析では、この最初の顧客分析においては、Politics (政治)、Economy (経済)、Society (社会)、Technology (技術)の4つの観点PEST分析)を追加し、ターゲット顧客を選定しその課題の検証に利用します。デザインの方向性を確認する場合においては、一旦は、顧客構造の構築に集中するだけでで構いません。特にターゲット選定において、自分たちが想定する利用者像と実際の購買決定者が異なるケースが発生します。例えば消費財において、かつてはビールの実購買者と利用者はファミリー層の場合、前者が妻、後者が夫の場合となり異なることがありました。(現在は共働きも増え、家事分担の変化も起き変化してきています)

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自社ブランドの輪郭を明瞭にする:自社ミッション、ビジョン、バリューを考える

戦略分析では、ひとやモノなどの経営資源においての分析も施しますが、自社WEBサイトや企業ロゴ、会社案内などに関する制作物であれば、自社ブランドをビジュアル化するための補足情報を準備します。例えば社名(サイト名)の由来や起業理念(ミッション)に対する思い、今後の社会における役割(ビジョン)などを含めて整理した補足情報をデザイナーへ渡します。特に理念は、短く抽象的な表現が使われがちなので、補足情報を用意することで理解を深められ、クリエイティブのための新たなアイデアのきっかけにもなります。また製品やサービスの広告制作の場合は、自社の優位性や価値(バリュー)を可能な範囲でまとめておき、できればその根拠となる客観的な数値化した定量データがあると訴求における説得力が増します。

STEP
競合他社を選出

想定する競合他社、また、意識する異業種の他社などを各3社づつ位を選び、その選定理由も簡単に書き起こしておきます。これによりデザイナー側は、他社とのビジュアル面における差別化の構築をしやすくなります。

このように、対象を見据え、己を知り、敵を知ることで、セルフイメージの棚卸しでより。結果、デザインの方向性における判断基準が確立されることで、後に判断がぶれることが軽減される期待が持てます。特に文章に起こすことで、読み返しが可能になり、推敲も兼ねつつ再考を重ねて思考がより深く鮮明になるきっかけにもなります。

まとめ

ここで説明した3C分析を応用したデザイン仕様の情報整理は、以前より外資企業/外資系広告代理店などがチーム内で意思疎通を図るためにクリエイティブ・ブリーフィングとしてプロジェクトの背景や目的を文章化してチーム共有のツールとして活用してきました。また、システム開発のコンペで参加ベンダーに配布する提案依頼書(Request For Proposal:通称RFP)などに近い感じですが、共通することは書面にすることで口頭で伝による抜け漏れや「伝言ゲーム」による誤解を防ぎます。体裁は特に決まりは無いので、A4一枚ほどの箇条書きで構いませんので最低でも上記3要素を記載することで期待できる提案を受けられる可能性が高まります。

一部の広告代理店の営業やクリエイティブディレクターなどは、事前にクライアントの情報はネットなどでリサーチしてから訪問することもしています。しかしスタートアップや中小企業のWEBサイトなどで情報が不足している場合などは、最低限、想定ターゲット、自社の現状(理念など)と今後の展望そして想定する競合を選定するなどの情報を用意しておくだけで、クリエイティブ側との意思疎通が短縮できます。結果、デザイン自体に集中し、角度の良いデザイン提案が期待できます。お任せにしてしまうと、結果、不満を引き起こし時間を無駄にしてしまい兼ねます。期待すべきは提案内容であり、相手に言わずもがなで意をくみ取って貰らえる秀でたデザインエージェンシーと出会うことに期待するのは、現実的ではないと考えます。

今後は、デザイン会社の選別方法やクリエイティブのチェックのポイントなどを記事にして掲載していく予定です。

まとめ:【デザイン発注時のポイント】
  • 制作を依頼する時には、曖昧な表現を避け、具体的かつ客観的な表現による情報を提供する
  • 「想定ターゲット」、「自社の理念と展望」、「想定する競合」の基本3要素をクリエイティブ側に共有する
  • リクエストの背景を文章化することで、ベンダー側の誤解を防ぎ、かつ自身でもクリエイティブの判断基準が明確になる
デザイン発注の教科書|アイキャッチ画像|上空撮影によるテニスコートに横たわり、自転車に乗っているように見せているだまし絵

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