マルチアングルの複眼思考で洞察力を高める

アイキャッチ画像|マルチアングルをメタファーとするプリズムのメガネレンズ|デザイン思考やアート思考などマルチアングルの複眼を活用した発想法を解説します。
固定概念を払拭する創造的な観察眼を得るための複眼思考の技術とは?
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マルチアングルという言葉は、もともとは映像業界で使われる用語です。複数のカメラを使用して様々な方向から撮影する技法です。アングル(視点の角度)が変わると目に入ってくる情報の量や質も変化します。小説や映画の場合、複数の人物に焦点を当てていくことで物語の展開や印象を変える手法もあります。これは、デザイン思考などで新たなアイデアを考え出す時に役に立つ視点変換のアプローチの一つです。その複眼思考の技術ポイントを解説していきます。

目次

視点のスイッチング効果

深くものごとを見据える複眼による視点

円錐という形は、真横から正対して見ると2等辺三角形、上から覗くと円の形状をしています。円錐として認識するには、その対象を複眼で俯瞰してはじめて認識が可能になります。人によってものの捉え方も千差万別であり、固定された視点だけでものを捉えても本質を見誤る可能性があるという例えです。

思い込みや固定概念に縛られて斬新なアイデアが思いつかない時に、あえて視点を変えて考える事で新たな発見の糸口が見えてきます。これをものごとを正しく捉えるための観察における「視点のスイッチング効果」とした場合、今度は視点によって対象の印象が変わる仕組みについて考えていきます。

視点・視座・視野を説明したイラスト図:円錐を捉える視点の位置で見える形状は変化する
円錐を捉える視点の位置で見える形状は変化する

新い発見を促す2軸の基本アングル

主観と客観

過去に経験したことを誰かに伝える時、楽しいことも悲劇も、基本は自分を中心とした物語とした語り口になります。しかし、出来事を主観的にで捉えるか客観的に見るかで話しのテイストは大きく変わります。

例えば財布を忘れて買い物に出かけてレジで支払いが出来なかった出来事を悲劇として話すか喜劇と話すか、どちらも同じ内容ですが伝わりかたは代わります。

ものの見方によってはこのように解釈は真逆に変化します。更にレジの中に居る人から見たら、懸命に財布を鞄やズボンのポケットを探す様子に対して同情よりも会計作業を早く終わらせたい感情から困惑する気持ちを抱くひともいるでしょう。

このように主観で捉えた物事を客観の視点で捉え直すことで新たな気づきを導かせることが可能になります。例えば、クライアントの担当者の方と取り組むべき課題を検討する場合、その組織や業界に長く在籍されていると固定概念などから、なかなか新たな発想に繋げられないケースがあります。

特に過去の成功体験や業界の慣習から抜けられず、新らしい考えに対して懐疑的になりがちです。それ故に外部から知恵を借りようとして専門家を招集しても新たな意見を最終的に受け入れられない傾向があります。まず重要なのは、担当者が話されている内容が事実に基づいた客観的な発言か主観的な感想かに注意して主観と客観に分けて話しを聴いて行きます。

「引き」と「寄り」の焦点調整

論点にピント合わせる技

人物デッサンで全身を描く時、特に慣れていない人に共通する描き方があります。それは、いきなり細部から描き出して全体の構成のバランスが収まらない現象です。全身を描かなければならないのに、いきなり手先や目、鼻などの細かいところから描写し出して時間も掛かり絵の構成バランスが収まりがなくなる傾向があります。

デッサンを描くことに慣れたひとは全体構成を決め、外側から内に向かって繰り返し描く流れを行います。これは「引き(ズームアウト)」と「寄り(ズームイン)」の視点を繰り返すことで描く対象の構成バランスを修正しながら描写を進めるする技法の一つで、正確に対象を捉えて描写するための技術です。

この「引き」と「寄り」の視点におけるアイデア出しの発想法に役立てる方法を説明していきます。この「引き」と「寄り」のピント合わせの焦点調整は、課題の論点を見定めるためにも重要となります。

デッサンのようにはじめに問題の全体像を捉えるために「引き」の客観的な視点で観察しながら「寄り」で細部を見据えていく過程が基本になります。失敗するケースは、最初から近視眼的に視野を狭めてしまい思考の拡がりが失われる場合です。また、全体像を見据えない状況でアイデアを出そうとしても物事の表層のみにしか意識が届かず捉えるべき深層の本質を見失いがちになります。

これは問題解決のプロセスにも共通し、全体の事象や問題を整理した上で課題設定をしないと、いきなり話しが枝葉末節に陥り時間だけがただ過ぎ結論が出ない会議に陥ります。

この「引き」と「寄り」の2軸の視点でピント調整を繰り返しながら、異なる角度からも俯瞰した視点を取り入れることで視野を広げて、論点の見落としとなる死角を埋めつつアイデアを精査していきます。

このような複眼思考の発想法は、デザイン思考や提案のアイデア出しや企画立案のアイデア出しなどに役立てることができます。

アイデア出しの注意点

発言者と内容を分離し可視化する

どのような状況でも、話し合われている内容だけでなく発言内容が客観性を持っているかどうかを意識することで思い込みや話しの筋が逸れていくのを防ぎます。また討議において発言内容でなく発言者に注目が集まる場合があります。

よくある「声の大きなひと」の発言です。厄介なことにそのようなひとは、自分よりも役職が上ただったり目上の方に多く存在します。論点が不明瞭に感じる場合は、参加者の視線を整える工夫が必要になります。

特に注意したい主観的な表現は、「あり得ない」や「絶体…○○だ。」などの決めつける言葉です。そのような発言を受けた場合は、冷静に「なるほど、なぜそう思われているか教えてもらいえますでしょうか」と冷静な確認が必要になります。

この様なときにはファシリテーションの技法で「発言者と意見を分離する」方法がそのような時は有効です。具体的には、ホワイトボードなどに出て来た意見を書き出して、会話を文字に起こしてみんなで因果関係が成立しているか抜け漏れ誤解を考える場を作るようにします。

会話の内容を文字などの可視化することで発言内容を整理する機会になり、更に主観が切り離されることで冷静に話しの内容を見直すことを促せます。特にアイデア会議の初期では、主観と客観の2アングルを意識しつつアイデアの芽を早期に摘まない心構えも重要になります。

複眼で発想するために

発想プロセス「発散」と「収束」の把握

発想の基本プロセスに「発散」と「収束」という流れがあります。前半の「発散」ステージではアイデアの数を多く捻出するために、既存の考えを真逆の視点で見てみたり、普通の考えを違う角度や俯瞰した視座で捉えることで新たな発想の助けにします。

後半の「収束」ステージでは、出て来たアイデアを似た要素同士をまとめていきます。ポストイットを利用して壁やホワイトボードに要素を分類すると板書すよりも素早く整理や試行錯誤ができスムースな分類作業が可能になります。

特に問題解決などに利用する場合は、「発散」と「収束」の流れを繰り返す様相が2つの菱形が並ぶ姿より“ダブルダイヤモンド”とも言われます。

アイデア出しの方法論である「発散」と「収束」のダブルダイヤモンド図版
アイデアを「発散」し可能性を広げその後に「収束」させるアイデア捻出する方法論:ダブルダイヤモンド図

複眼の実践テクニック

二項対立の分析

具体的な複眼で発想する手法は、「二項対立の分析」という相対する二つの側面(軸)に分けて考えることで表裏、矛盾や対立などの一対の相関関係を持たせ考えを自動的に発想する方法があります。二項対立の例を挙げると「全体・部分」、「長期・短期」、「メリット・デメリット」、または属性軸で「男・女」などの切り口があります。以下の関連記事で二項対立の分析方法を説明しています。具体的な説明は、そちらも合わせてご確認ください。

まとめ:斬新に物事を捉える視点のスイッチ作業

映画監督クリストファー・ノーラン監督の2作目にして出生作にあたるサスペスン映画「メメント」は、殺人事件の終わりからストーリーが逆回転し記憶を回想する物語です。主人公である殺人容疑者の記憶が10分しか持たない男性を描きアカデミー賞にもノミネートされました。

記憶をたどるために過去と現在、多くの証言者の登場による多重視点の組み合わせで謎を解いていく斬新なストーリー展開で観客の意識をスクリーンの中に引き込み人気を博しました。

マルチアングルの視点を意識すると、日常のいろいろな出来事も違った一面に気付くことができます。私たちは、独善的な思考の癖が染みつき、思い込みでものごとを判断する傾向があります。

そんな時は、カメラのレンズのように「引き」と「寄り」を繰り返しピント調整をすることで気付かなかった輪郭が浮かび上がったり、新しいアイデアの糸口が見つかることがあります。

アイデア出しの会議などで行き詰まって来たときなど、一度、論点の焦点調整を意識してみてください。新たな発見の糸口に気づけるかもしれません。

まとめ:【マルチアングルの複眼思考とは】
  • 正しくものごとを捉えるために、マルチアングルな複眼で論点の誤認を回避する
  • 主観と客観の視点の取り方によって、ものごとの印象は大きく変化する
  • 「引き」と「寄り」の思考を繰り返して焦点距離を絶えず調整し固定概念を削ぎ落とし新たな輪郭を浮かばせる
  • 垂直的なマルチアングルの視座と、水平的な主観・客観のピント調整繰り返した視点を合わせて論点の核心を捉える

参考文献

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