ビジネスで一歩先の発想を導く「問いを立てる」ヒント

目次

「問い」の型とプロセス

「問い」基本の4型

「問い」の種類には、前述の論点の理解を深める正解のないオープンな問い:What型, Why型と、事実の認識を深めるクローズドな問い:True型、そして、解決策を検討するオープンな問い:How型の計4種の「問い」の型が挙げられます。

「問い」の基本プロセスとして、What型(実体は何か?)や、Why型(その意味は?)の理解や認識を合わせる「問いかけ」で思考の視野を拡げて理解を深めます。この2種の「問い」を相互に繰り返すことで、問題の本質を掘り起こし認識を固める役割を持ちます。

それに対して、True型(事実の証拠は?)の「問い」は、事象と原因(要因)の因果関係を問うクローズドな質問で要因の抜け漏れや相関関係における事実の確証を高める役割があります。

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No.問いの型内容特性特徴
1What型So What?理解の深化オープン実体の把握と理解
2Why型Why So?論理の構築オープン認識の一致
3True型True? (Really? )事実の確証クローズド根拠の確定
4How型How to do?対策の検討オープン具体策の検討
「問い」の4型と特徴

「問い」のプロセス

問題解決においては、慣れてないと解決策である打ち手を検討するHow型の「問い」から着手しがちです。前述したように、この場合、扱うべき論点が適切でないと最適な回答が導かせられません。

まずは、適切な論点を定めるために初動で前提条件の再認識となるWhat型, Why型, True型の「問い」の基本概念を利用して扱うべき論点の土台を固めていきます。

解決策となる打ち手を検討する場合は、論点設定が整った後に創造的な施策を見出すブレインストーミングなどを活用して思考を活性化し発想を拡散させていきます。

論点設定の基本となる3種のWhat型Why型True型を念頭に置き、次項で課題別に思考を深める主な「問い」を確認していきます。

課題に合わせた「問いの立て方」

課題の方向性から検討する要因の範囲を絞り込むことで、作業時間の節約を行います。今回は、「分析型」と「発展型」の2種の「問い」のプロセスを紹介します。

「分析型」と「発展型」の問い

一つ目は、顕在する事象に対し過去に遡って要因を分析して問題解決を発案する分析型」の問いです。これに対して、未来のあるべき姿を現状の要素を組合わせて新たに創造する発展型」の問いです。

「問い」の代表的な流れと特徴を「分析型」と「発展型」の2種に簡易的にまとめた図版
「分析型」と「発展型」、2種の「問い」の方向性

分析型」の問いでは、現状から過去までの要因を遡り分析して解決策を引き出す論理的な思考を中心としたアプローチです。現在から過去に向けた思考のベクトルで要因の因果関係の追及と解明を施す思考です。例えば、営業利益の向上や品質改良、生産効率の向上などの改善に関する課題が挙げられます。

これに対し、現状の要因を土台に新た将来に向けたベクトルで課題発見や新規事業などに「発展型」の問いを用いて要因を掛け合わせて新たな解釈(=価値)を見出して斬新な施策を創出する創造的な思考のアプローチです。構成的思考とも言われています。主に新規事業や商品開発など事業開発だけでなく、SDGsなど社会的課題への取り組みや新たな組織改革など未知の課題設定や解決に役立てます。

「問い」分類特徴主な用途
「分析型」の問い現在から過去へ遡る:因果関係の究明と改善既存の問題解決や改善
「発展型」の問い現在から未来を創造:現状を掛け合わせて新たな解釈を見出す新たな事業開発や課題発見

この2つの「問い」は、組み合わせて利用することで過去から現状を分析して、新たな事業構想を導くアプローチとしても活用が可能です。

ポイント

現在から過去の現象を分析する問題解決か、現状から進化・発展させた未来へ向けた創造かで「問いの立て方」も変化する

「問い」の留意点

筋の良い「問い」を導くために

「問い」の問題点では、単に「なぜ、どうして」の疑問を闇雲に抱く「問い」では、結論の収拾に必要以上の時間を消費して実行になかなか移れない事態に陥りがちです。

そこで、仮説を立てることで時短の役割を担うことが可能になります。方向性に合わせて論点のあたりとなる仮説設定を「問い」で探ります。

筋の良い仮説を仕上げていくには、基本の「問い」:What?,Why?, True?で「仮説」の検証サイクルを繰り返しながら論点を練り上げて仮説の確度を高めていきます。

観察における「問い」と「仮説」を繰り返して発見へ導く検証サイクルのイラスト
観察の構造と検証サイクルのイラスト

要因分析における注意点

過剰分析の罠

注意点としては、前述したように要因分析の細分化や網羅性にこだわり過ぎて問題が複雑になり収拾に時間を要して企画の実行にたどり着けない「過剰な分析のブラックホール症候群」に注意します。

このトラップには囚われないためには、仮説で論点のあたりを付けて必要範囲の分析から着手します。内田和成氏の著書「仮説思考」では、情報は集めるよりも捨てることが大切であり情報の網羅性にこだわることは意志決定が後手になる点を指摘しています。

ポイント

仮説設定で、闇雲な情報収集などの時間を短縮し「問い」を繰り返しなが仮説の精度を高める

相関関係と因果関係の不一致

また、要因分析の際に相関関係と因果関係は必ずしも同一でないことを留意します。例えば、Aに伴ってBという事象が発生した場合、必ずしもAが原因でBが起きたとは限りません。また、AがBより前に起き現象だからと言ってAがBの原因として捉えることも出来きないからです。

つまり、要因同士で関連性を示す相関関係が存在していたとしても、すなわち、それだけで問題の因果関係に繋がるとは限らないことを意識します。

また、人は一つの共通した要因を発見すると、そこで思考を停止する傾向が起こりがちです。そのため、潜在的な原因が複雑に絡み合っている可能性を見逃すこともあります。

これらが、固定概念や安易な一般化などで思考停止の危うさとなり「思考の囚われ」の原因にも繋がります。

ポイント

問題要因の相関関係と因果関係は必ずしも一致するもでのでなく、関連性を問い続けて短絡的な結論は避ける

まとめ

思考を拡張するレンズ

「問い」の活用では、まずは個人の内省で事象の理解を深め、集団の対話で思考を活性化し論点を磨いて問題解決の確度を高めていきます。

受験勉強のような唯一無二の正解を導き出すことに慣れ親しんでいると、正解なき不明瞭な事象を「問い」続けることは暗闇をさまようが如く苦痛に感じるかもしれません。

また、現状を「問う」ことは周囲から懐疑的な行為と思われ、戸惑いを感じる場面もあるかもしれません。特に古い組織では、上意下達の慣習から上司に問い掛ける行為すらはばかる組織文化が存在するかもしれません。

しかし、最終的な決断を組織として下すまでには、個々が理解を深めるために自問自答で「問う」行為は問題の本質を探求し新たな課題や論点を発掘する機会にもなります。

生成AIの技術と性能が進歩していく中で、提示される情報を最終的に採択するかは人間の判断と決断に委ねられています。その際に、情報を全て鵜呑みにするのでなく、自己対話の内省と好奇心による「問い」が問題の解像度を高めて本質の把握に役立ちます。

まずは、日頃から「問い」を抱く習慣で問題意識を持つことが重要と考えます。それにより、客観的な眼差しで視野を拡張する思考のレンズ効果で問題解決を推進する能力が育成されていきます。

まとめ:発想を導く「問いを立てる」ヒント
  • 「問う」とは、問題意識を持つ入口となり周囲や環境に関心を向ける切っ掛けで思考を活性化する
  • 前提条件や問題を問い直すことで事象をアップデートし論点のずれや漏れがないかを確認する
  • 「問う」ことで事象の捉え方である視点を刺激し新たな解釈や洞察が浮かび上がらせる
  • 現在から過去の因果関係を調べて改善施策を見出す「分析型」問いと、現状を進化・発展させる未来へ向けた創造の「発展型」問いで目的別に問いの立て方を変える
  • 仮説設定は、情報収集などの時間を短縮し「問い直す」ことで仮説の精度を高める
  • 相関関係と因果関係は必ずしも一致するもでのでなく、関連性を問い正しながら短絡的な結論を避ける

参考文献

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