問いの力でビジネスの未来を拓く!「問いを立てる」実践編

目次

「問い」の型の具体的なプロセスと活用法

思考を深める「問い」の4型

「問い」の種類には、前述の論点の理解を深める正解のないオープンな問い:What型, Why型と、事実の認識を深めるクローズドな問い:True型、そして、解決策を検討するオープンな問い:How型の計4種の「問い」の型が挙げられます。

「問い」の基本プロセスとして、What型(実体は何か?)や、Why型(その意味は?)の理解や認識を合わせる「問いかけ」で思考の視野を拡げて理解を深めます。この2種の「問い」を相互に繰り返すことで、問題の本質を掘り起こし認識を固める役割を持ちます。

それに対して、True型(事実の証拠は?)の「問い」は、事象と原因(要因)の因果関係を問うクローズドな質問で要因の抜け漏れや相関関係における事実の確証を高める役割があります。

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No.問いの型内容特性特徴
1What型So What?理解の深化オープン実態把握
2Why型Why So?論理の構築オープン因果探求
3True型True?(Really? )根拠の確定クローズド事実確認
4How型How to do?対策の検討オープン解決策の探索
「問い」の4型と特徴

アプローチ別、問いかけ例

1.What型(実態把握)の問い:
  • 課題の本質は何か?
  • 具体的な症状は何か?
  • 影響を受けている要素は何か?
2.Why型(因果探求)の問い:
  • なぜこの事象が発生したのか?
  • 根本的な原因は何か?
  • どのメカニズムで問題が生じているか?
3.True型(事実確認)の問い:
  • この仮説は本当に正しいか?
  • データは何を示しているか?
  • 想定と現実にギャップはないか?
4.How型(解決策の探索)の問い:
  • どのように解決できるか?
  • どの方法が最適か?
  • 実行可能な対策は?

Netflix社は、データ分析を活用した『What型』の問いで視聴者ニーズを把握し、事業成長に繋げた事例として、オリジナルコンテンツ制作におけるデータ活用が挙げられます。以下に、詳細な事例を紹介しています。

※タイトル(or▲)をクリックすると記事が現れます。

Netflix社 『What型』問いの深掘りでヒットを紡ぐ (クリックで表示)

データ分析と視聴者ニーズの把握

Netflixは、膨大な視聴データをもとに、視聴者の好みや行動を深く理解する仕組みを構築しています。「What型」の問い、すなわち「視聴者は何を求めているのか?」を軸に、データドリブンな意思決定を行っています。

このプロセスにより、視聴者の深層的なニーズを解明して、「観たいと思わせる」作品を的確に提供することでユーザー体験を向上させています。このアプローチが、Netflixのオリジナルコンテンツの成功に直結しました。

Netflixは2010年代初頭、ストリーミングサービスとして成長の過程にありましたが、競争が激化する中で差別化を図る必要に迫られていました。そこで、以下の戦略転換を発動させます。

  1. コンテンツの独占性: 独自の作品を持つことで、他のプラットフォームとの差別化を実現。
  2. ライセンスコストの削減: 外部コンテンツのライセンス取得にかかる費用を抑える。
  3. ユーザーの囲い込み: 視聴者が「Netflixでしか観られない作品」に惹かれ、継続利用を促す。

そこで、視聴行動データを以下の2つの観点から分析し、オリジナルコンテンツ制作の第一弾として、Netflixは『ハウス・オブ・カード』に投資することを決定しました。

  • 視聴者の嗜好性の把握:ジャンル別ランク、人気俳優や監督の特定、視聴完了率や再生回数などのKPI設定。
  • ABテストの実施:予告編や作品紹介のパイロット版を複数パターン制作し、ABテストを実施。『ハウス・オブ・カード』が視聴者の嗜好性を惹きつける確信を見いだす。
まとめ

TV放送のない、世界初のインターネット上オリジナル配信番組、Netflix『ハウス・オブ・カード』制作は、データに基づいた意思決定と革新的な配信モデルの成功例として知られています。このプロセスは、「視聴者が何を求めているか?」という『What型』の問いを中心に進められ、膨大な視聴データを適切に活用することで、視聴者の期待を超えるコンテンツを生み出しました。これは、データドリブンなアプローチが、エンターテインメント業界でどれほど強力な競争力となり得るかを象徴しています。

最適な論点を見いだす「問い」の型

問題解決においては、慣れてないと解決策である打ち手を検討するHow型の「問い」から着手しがちです。前述したように、この場合、扱うべき論点が適切でないと最適な回答が導かせられません。

まずは、適切な論点を定めるために初動で前提条件の再認識となるWhat型, Why型, True型の「問い」の基本概念を利用して扱うべき論点の土台を固めていきます。

解決策となる打ち手を検討する場合は、論点設定が整った後に創造的な施策を見出すブレインストーミングなどを活用して思考を活性化し発想を拡散させていきます。

論点設定の基本となる3種のWhat型Why型True型を念頭に置き、次項で課題別に思考を深める主な「問い」を確認していきます。

課題に合わせた「問いの立て方」

まずは、基本の問題解決のプロセスを確認していきます。

問題解決のプロセス例

STEP
問題の明確化
  • 問題を具体的な言葉で記述
  • 影響範囲と重要度を評価
  • 初期仮説の設定
STEP
情報収集
  • 要因の関係性を図式化(フィッシュボーンチャートなど)
  • 5Whys分析などで思考を深化
  • 要因の特定
STEP
仮説検証
  • 収集データなどによる裏付け
  • 反証の可能性を検討
  • 仮説の精度向上
STEP
解決策立案
  • 複数のシナリオ検討
  • リスクと効果の評価
  • 実行可能性の判断
ポイント

問題解決では、一過性の技法ではなく、学習と成長を促進させる反復した循環検証法が効果的である

課題の方向性から検討する要因の範囲を絞り込むことで、時間の節約を行います。次に、「分析型」と「発展型」の2種の「問い」の特徴を紹介します。

分析型と発展型の特徴と用途

問題解決と事業開発のための「問い」のタイプとは?

一つ目は、顕在する事象に対し過去に遡って要因を分析して問題解決を発案する分析型」の問いです。これに対して、未来のあるべき姿を現状の要素を組合わせて新たに創造する発展型」の問いです。

「問い」分類特徴主な用途
「分析型」の問い現在から過去へ遡る:因果関係の究明と改善既存の問題解決や改善
「発展型」の問い現在から未来を創造:現状を掛け合わせて新たな解釈を見出す新たな事業開発や課題発見

分析型」の問いでは、現状から過去までの要因を遡り分析して解決策を引き出す論理的な思考を中心としたアプローチです。現在から過去に向けた思考のベクトルで要因の因果関係の追及と解明を施す思考です。例えば、営業利益の向上や品質改良、生産効率の向上などの改善に関する課題が挙げられます。

これに対し、現状の要因を土台に新たな将来に向けたベクトルで課題発見や新規事業などに「発展型」の問いを用いて要因を掛け合わせて新たな解釈(=価値)を見出して斬新な施策を創出する創造的な思考のアプローチです。構成的思考とも言われています。

「問い」の代表的な流れと特徴を「分析型」と「発展型」の2種に簡易的にまとめた図版
「分析型」と「発展型」、2種の「問い」の方向性

主に新規事業や商品開発など事業開発だけでなく、SDGsなどの社会的課題への取り組みや新たな組織改革など未知の課題設定や解決に役立てます。

SDGsへの取り組みとして、「企業が社会貢献しつつ、利益を上げる新たなビジネスモデルは何か」といった問いです。

この2つの「問い」は、組み合わせて利用することで過去から現状を分析して、新たな事業構想を導くアプローチとしても活用が可能です。

現在では、生成AIを活用してAIに「問い」を投げかけながら問題の分析や新たな発見を行うAIブレインストーミングなどの思考の発散方法を効果的です。

ポイント

現在から過去の現象を分析する問題解決か、現状から進化・発展させた未来へ向けた創造かで「問いの立て方」も変化する

問いを立てる時の留意点

筋の良い「問い」で仮説を導くために

「問いの力」で深める仮説設定との相乗効果

問いを立てる時の課題として、単に「なぜ、どうして」の疑問を闇雲に抱く「問い」では、結論の収拾に必要以上の時間を消費して実行に移れない事態が起こります。

そこで、仮説を立てることで時短が可能になります。まずは、方向性に合わせて仮説設定を「問い」で探ります。

筋の良い仮説を仕上げていくには、基本の「問い」:What?,Why?, True?で「仮説」の検証サイクルを繰り返しながら論点を練り上げて仮説の確度を高めていきます。

観察における「問い」と「仮説」を繰り返して発見へ導く検証サイクルのイラスト
観察の構造と検証サイクルのイラスト

要因分析の注意点

網羅性の落とし穴

注意点としては、前述したように要因分析の細分化や網羅性へのこだわりが問題を複雑化させ、いつまでも企画実施に進めない「過剰な分析のブラックホール症候群」に注意します。

このトラップには囚われないためには、仮説で論点のあたりを付けて必要範囲の分析から着手します。例えば、売上減少の要因を仮説として「ターゲット層の需要変化」と設定し、それを問いで検証します。

内田和成氏の著書「仮説思考」では、情報は集めるよりも捨てることが大切であり情報の網羅性にこだわることは、意志決定が後手に回るとされています。

ポイント

仮説設定で、闇雲な情報収集などの時間を短縮し「問い」を繰り返しながら仮説の精度を高める

相関関係と因果関係の不一致

また、要因分析の際に相関関係と因果関係は必ずしも同一でないことを留意します。例えば、Aに伴ってBという事象が発生した場合、必ずしもAが原因でBが起きたとは限りません。また、AがBより前に起き現象だからと言ってAがBの原因として捉えることもできないからです。

つまり、要因同士で関連性を示す相関関係が存在していたとしても、それだけで問題の因果関係が成立するとは限りません。また、共通要因を見つけると、思考が停止して潜在的な原因を見逃すことも起こります。

このように、安易な一般化などで思考停止となる「思考の囚われ」に陥りやすいので注意が必要です。

ポイント

問題要因の相関関係と因果関係は必ずしも一致するものはでなく、関連性を問い続けて短絡的な結論を避ける

まとめ

ビジネスを成功に導く「問いの力」の活性メソッド

「問いの力」の活性させるには、まず、個人の内省で事象の理解を深め、集団の対話で思考を活性化し論点を磨きながら仮説の確度を高めていきます。

受験勉強では、正解を導き出すための知識や方法論をインプットすることが適切な対処法でした。一方で、未踏の事象を対処することは、暗闇を彷徨うような不安を感じながら、客観的で曇りのない思考の視点が必要になります。そこで、問いを繰り返しながら洞察を深めていきます。

また、相手に問いを投げかける行為は、時に周囲から疎まられる場合もあります。特に古い組織では、上意下達の慣習から上司の発言に問う行為すら、はばかる組織文化も存在します。

しかし、組織が最終的な決断を下すまでには、個々で事象の理解を深めるためにも、問題の本質を探求したり新たな課題や論点を探るための自省が良い機会になります。

さらに生成AIが提示する情報を採択するかの判断は、人間に委ねられています。情報を全て鵜呑みにするのでなく、自己の内省と知的好奇心による周囲への問いかけが問題の本質を把握することに有効と考えます。

まずは、日常でも周囲に意識を向けて問題意識を持つことで、それにより、客観的な眼差しを育成して視野も拡張しながら真の問題の把握と解決を遂行する能力が育成されでしょう。

総括:思考を解き放つ「問いを立てる」技法
  • 「問う」とは、問題意識を持つ入口となり周囲や環境に関心を向ける切っ掛けで思考を活性化する
  • 前提条件や問題を問い直すことで事象をアップデートし論点のずれや漏れがないかを確認する
  • 「問う」ことで事象の捉え方である視点を刺激し新たな解釈や洞察が浮かび上がらせる
  • 現在から過去の因果関係を調べて改善施策を見出す「分析型」問いと、現状を進化・発展させる未来へ向けた創造の「発展型」問いで目的別に問いの立て方を変える
  • 仮説設定は、情報収集などの時間を短縮し「問い直す」ことで仮説の精度を高める
  • 相関関係と因果関係は必ずしも一致するものでなく、関連性を問い正しながら短絡的な結論を避ける

参考文献

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