ビジネスでアイデアを生み出すための「発想の5段階フェーズ」構造

目次

発想の5段階フェーズ

ここからは、実際にアイデアの発想が創造を導く全体構造を確認していきます。まずは基本の5フェーズ構造を思索していきます。後半に発想を支える2ステージを解説していきます。

創造に導く発想の5フェーズ構造のイラスト。
創造に導く5段階の発想の構造イラスト

創造に導く発想の5段階フェーズ構造

1. 知識・体験

全てのアイデア形成の基となる発想エネルギーの貯蔵庫。情報の引き出しの多さと深さの化学反応でアイデアの飛躍やひらめきを導く。

多くの知見や体験の引き出しが「直感」や「ひらめき」を生み出すアイデアの源泉

2. 観察

観察対象や事象・現状を分析し理解を深めながら自問自答を繰り返して気づきを呼び起こす。

観察対象の周辺や社会全体の文脈も見据えて現状の理解を深める

3. 洞察

深層に潜む課題を想像力や仮説を用いて新たな気づきを見出す。

問いの立て方で視野が狭すぎると発想に広がりが生まれずに無難な解にしか到達できない

4. 発想

アイデアの発火点であり、情報収集や蓄積した知見を融合させて創造を推進する着眼点を形成する。

複数の視点や情報を繋げることで規格外で斬新なアイデア創出も可能となる

5. 創造

発想で導いた着眼点を具現化し成形する工程:視覚化や体系化などを施す

各ステージ間の往来により確認・検証を繰り返してアイデアを研磨する

既存の商品やサービスの改善などのアイデアが必要な場合、このままの5つの流れで実施します。もし新規事業など新たな発想が必要な場合は、「観察」は仮説立案の為にアイデア検証としてユーザーリサーチ後に改めて実地する場合もあります。また、「洞察」と「発想」で仮説検証を何度も繰り返しアイデアを磨き上げることがあります。

発想の工程は必ずしも直線的な流れでなく、反復作業も必要に応じて行う。

発想力を支える2ステージ:「入力と出力」と「仮説と想像

発想力を適切に機能させるために、「入力と出力」、「仮説と想像」の2組の要素の支えが必要になります。この関係性を見ていきます。

発想力を補う情報の「入力と出力」と「想像と仮説」検証の2組のステージ要素の関係を表すイラスト例。
情報の「入力と出力」と「想像と仮説」検証の2ステージによる発想との関係性のイラスト例

Stage1. 情報の「入力と出力」作業

冒頭にも伝えましたが、いきなりアイデアを捻出することは燃やす薪を用意しないで火を起こしはじめるような行為と同じです。

発想と創造がアイデアを出力する行為と捉えると、その前には準備として情報入力という行為が必要になります。それが前述した経験や知識のストックや観察から洞察を導くためのインプット作業です。

観察とは意図した情報収集とも言えますが、日常の体験は学習であり知見の蓄積です。冒頭のアイデアマンの人たちは、まさに自由な心構えと好奇心で日常的に入力活動を楽しみながら、発想の鍛錬を継続するアスリートのようなものです。

とはいえ、いきなり新たな趣味を探し出すよりも現状の興味対象をさまざまな視点で捉え直してみたりして視野を拡張するなどの行為が現実的と考えられます。

こうして貯えた知見や経験の点の拡がりが繋がり合い新たなアイデアを創出する素地ができます。つまり発想とは、情報の入出力の工程でアイデアの方向性を見つける行為です。

言い換えれば、アイデアは思いつきなどの受動的な行為ではなく、能動的に見い出す活動です。また、アイデアの出力に向けた情報整理術として、発想の種を言語化してポストイットなどを利用してアイデアをグループ化してまとめるKJ法などの手法もあります。

これは、発想を視覚化して情報を構造化しながらアイデアを精製し絞り出すブレーンストーミングの一種です。

知的好奇心と観察情報や経験(入力)が、発想と創造(出力)を支える。

Stage2. 発想を具現化させるための「仮説と想像」の検証作業

発想から創造を実現するために必要なもう一つの要素は、「仮説と想像」の検証工程です。観察による情報の入力後の洞察で問いを立てながら気づきを導く為に仮説力と想像力が必要になります。

特に新たなアイデアを必要とする時には、あらたな視界や未知の世界を思い描く能力である想像性が発想の飛躍を促すと考えるからです。

また、想像と同時に、論理的な思考やクリティカル思考などで客観的な観点で仮説を検証することも重要となります。それはアイデア創出の基本プロセスである「発散と収束」の関係は「仮説と想像」の検証工程と言い換えられます。

適切な問いを導く発散と収束による「思考のストレッチ」解説図

「仮説と想像」の関係をもう少し言葉を付け加えれば、「予想・仮説検証・考察」です。予想や仮説を立てるには想像を働かす必要があり、そこに思慮深い思考や理論立てや検証が伴わなければ空想に終わります。

方向性を道筋を示す「仮説」と未知の世界を可視化し思い描く「想像」の両輪で発想は鍛錬される。

発想を鍛えるトレーニング

発想力を鍛えるトレーニングとして、その多くは新たな物事への挑戦や慣習的な行動を変えたり、抽象化して物事を考える思考を身につけるためにデッサンや日記などで観察力と表現力を高める方法が一般的に伝えられています。

それらトレーニングは確かに続けることで効果を期待できますが、実際に始めようとするときにハードルを高く感じたり長続きしづらい印象もあると思われます。

より簡単に発想を鍛えるための基本的な5つの着眼点と、発想の基板である知識や情報入力を増やす簡易的なトレーニング方法を紹介します。

5つの着眼点

着想を豊かにするには、自由かつ客観的な視点で当たり前なことへも疑問を抱いたり「もし…なら:IF思考」など仮定を立てる姿勢などが思考をストレッチし柔軟な視点を整えます。ポイントは、視点をスライドさせた小さな驚きの発見です。

※タイトルをクリックすると、説明が表示されます。

1. 懐疑性:日常に疑問を抱く (クリックで表示)

・ビンチは、ノアの大洪水で海洋生物が山頂まで押し上がられたという16世紀初頭まで信じられていた聖書説に対し疑問を抱き、実際に山の地層を調査して規則的に並ぶ化石や2段の化石層や破損が見られない貝の化石などの発見から、山頂まで届く大洪水で流されたならこのような地層や化石の状態に成るはずが無いと言説を論破した逸話があります。

また放送作家の山名宏和氏の著書、「大人の宿題ー発想以前の発想法では、解決策だけがアイデアでなく「いい疑問を作る」こともアイデアを生み出すのに重要であると説いています。

「疑問」とは、誰もが共感できるテーマを深掘りして考えていくと知らない物事を発見する切っ掛けです。誰もが当たり前に思うことをあえて疑問を投げかけて問いを広げることは、新たな発想を施すテクニックにもなります。

例:外国人のような視点で日本文化を見つめて新たな発見を促す。(物事を第三者の視点で再考するなど)

2. 視点変換:枠組みを変えて考える (クリックで表示)

既存ルールや慣習を見直したり物事を違う視点から捉え直す、リフレーミングと呼ばれる方法。例えば、ネガティブをポジティブに捉える(“ピンチはチャンス”etc)など真逆に発想する方法。

ユーモアは、得てして日常の中に面白さを見出して笑いへ変えるリフレーミングの手段。また視点を主観と客観で切り替えると捉え方や見え方も大きく変化します。

例:売れ残り商品を「“限定○○点の販売”や“残り1点もの”」として価値変換を施す。             

3. 類推や連想:関連づけて広げる (クリックで表示)

似ているものを関連させたり類推して、発想の着眼点を広げる方法。自然界の形状を模した商品開発は盛んに行われています。例:カワセミの頭部を模して空気抵抗を抑えた新幹線、サメの肌の構造を模した素材で水圧を低減させた水着など

また、関連を具体的に発展させるには連想で発想を繋げたり他のものに喩える(比喩する)ことで新たな着眼点を見出す切っ掛けが生まれます。

例:マンダラアートやマインドマップのツールを利用して連鎖反応でアイデアを広げる。

4. 異種混合:関連づけて広げる (クリックで表示)

関連づけを発展させて、敢えて異なる物事を掛け合わせ抽象化で繋がりを見出し発想を飛躍させる手法。カードなどに単語を記載しランダムに選び意図しない組み合わせから新たなアイデアを導く方法です。

ポイントは、意図しない異質の単語を無意識に掛け合わすことで固定概念を超えた発想を強制的に導き意外性あるアイデアの創出を期待できます。

例:ソフトバンク社の孫正義氏が留学中に、ランダムカード法で想起した「音声読み上げ+辞書」の音声辞書の発明が後にシャープに売却された逸話がある。

5. 要素の因数分解:マクロからミクロの視点変換 (クリックで表示)

問題をプロセスやタスクなど細かな要素に分けて考える事で新たな着想を導き易くする方法。

料理を例にして考えると、手際よく準備するためには調理全体を素材などの下ごしらえのプロセス単位で工夫を施すことで全体作業の効率化を図る。

例:時間の掛かる素材の漬け込み作業は先に準備し、その間に他の作業を同時に進めるなどタスクと調理プロセスを細分化して最適化を図る。

どのように分解するかは要素となる大まかな作業項目の軸から考えていきます。例えば、商品の売上げで考えると、「売上げ」=「商品の魅力」×「売り方」の基本の構造が考えられます。

こうした分解作業と因子同士を掛け合わせることで新たな発想を導き易くなります。発想の着眼点がなかなか思いつかない場合は、このように要素の因数分解を試すのも一つの方法です。

例:「商品の魅力」は、ニーズ、耐久性、商品寿命、季節性などの要素へ細分化が考えられます。同様に「売り方」も、ターゲット設定や販売チャネル、広告手段などの因数に分解してその他の要因と組み合わせて取り組むべき施策アイデアを発案したりします。

この他に、前述したSCAMPER法 (読み:スキャンパー)などの「たら・れば “if “」 着想の活用でアイデアを強制発想する手法もあります。詳しくは”ブレーンストーミングで役立つコツとアイデア出し厳選5テクニック“のSCAMPER法の項目で詳細を解説しています。

参考|SCAMPER法による強制発想法の概要(クリックで表示)
  1. Substile:「代用」できないか?(時間、場所、方法に置き替える)
  2. Combine:「統合」できないか?(別の用途や他製品・サービスと組み合わせる)
  3. Adapt:「応用」できないか?(他業界や類似のものに当てはめる)
  4. Modify:「変更」したらどうなるだろう?(サイズや要素を変える)
  5. Put to other Uses:「他の使い方」ができないか?(対象、目的を変える)
  6. Eliminate or Minify:「排除・縮小」できないか?(ルール・プロセスを無くす)
  7. Rearrange or Reverse:「並び替えや逆」にしたらどうなる?(プロセスを変える)

情報量を増やすトレーニング

思いがけない情報との出会い「セレンディピティ」体験効果

ここでは日常の情報インプットを増やす方法に絞って紹介していきます。ポイントは、思いがけない情報との出会いで情報量を増やすセレンディピティ体験です。

※タイトルをクリックすると、説明表示されます。

他人の視点を借りて視野拡張(クリックで表示)

「本を読まなくとも本好きの友人を持てば視野は広げられる」というアドバイスを受けたことがありました。なるほどと感じたのは、本だけでなく相手の視点を借りて世の中を知ることもできて新たな情報と視点の偶然の出会いとなるセレンディピティ体験が手軽にできます。

それ以来、新たなひとに出会う度にお奨めの書籍や映画など最近のお気に入りを教えてもらい、新しい発見を体験する切っ掛けを強制的に設けて自分の視野を意図的に広げるようにしています。

最近は”フィルターバブル”というパーソラナゼーション技術にて、ネットの検索結果もオンラインショッピング時のお奨めも自分の過去の行動に関連した個別最適化された情報が自動で配信されます。便利である反面、意図しない驚きの出会いや発見となる知識を拡張するセレンディピティ体験不足の課題も出て来ています。

昔は街の書店にふらっと立ち寄り本棚を眺めているだけで新たな情報に触れることもできました。今ではネット書籍の浸透で街の書店も少なくなる中、ひと伝いのお奨めは貴重なセレンディピティ体験となり情報インプット作業の拡張に最適です。

街頭絵日記(クリックで表示)

散歩なども発想トレーニング法としてよく奨められていますが、その本質は外界と無意識に接触することで意図しない情報との遭遇や発見を五感で実感するセレンディピティ体験にあります。

特に繁華街には、時代を映す情報との偶然の出会いや発見に溢れるセレンディピティ体験の宝庫です。自分の趣味嗜好に合わせてレコメンドエンジンで表示される情報の予定調和なネットショッピングとは異なる新鮮な出会いには、自分自身の新たな気づきの助けにもなります。

気になる物は直ぐにスマフォで写真を撮り画像にコメントやタグ付けして絵日記型式に情報ストックを気軽に実行できるところがポイントです。

カラーバス(情報シャワー浴(クリックで表示)

何か目的も無く街歩きを苦手と感じるひとにはカラーバス(Color Bath)という、テーマカラーを決めてその決めた色を意識的に探すことで強制的に多くの情報が目に飛び込むながらあらたな発見を促す手法です。

このバス(Bath)とは情報を”浴びる”という意味の英語で、ランダムに捉えた情報同士が繋がることで新たな意味や感情に出会うセレンディピティ体験で情報のインプット量を増やす効果も期待できます。

通勤や移動などのスキマ時間で実施でも実施できて、手軽な情報のインプット活動が可能なのがカラーバスの特徴です。

色以外でも、形状やクールなどの感情となるキーワードの軸をテーマにすることも可能。ただあまり細かいテーマだと発見しずらく考え過ぎてしまうと、かえって対象が発見しずらくなることがあります。なるべく無意識に発見が可能な汎用的テーマが適しています。

まとめ

インスピレーションを導くために

中国・北宋時代の欧陽脩(おうようしゅう)という政治家が文章を推敲するのに最適な3つの状況を説いた「三上(さんじょう)」で、発想力を育む適切な環境を挙げています。

  1. 馬上(ばじょう)|馬で移動しているとき
  2. 枕上(ちんじょう)|就寝前や目覚めの枕の上
  3. 厠上(しじょう)|厠=トイレで用を足している時

リラックスやぼんやりとする時間は、脳は自由な発想を紡ぎ易くなります。現代の馬上は、散歩や入浴時に置きかえられます。これは、脳のアイドリング状態とも言われる脳内のデフォルトモードネットワークが活性化して、記憶されている情報が脳で整理される状態が起こると言われます。これが、ひらめきなどインスピレーションを生む脳内における仕組みです。

今回は職場などでアイデア出しの会議を行う場合にも、発想力を起動できるために発想の構造や着想のポイント、そして情報集積のテクニックなどを紹介しました。

発想力とは、特殊な能力ではなく入力情報(インプット)の量と好奇心で出力行為(アウトプット)を繰り返すことで想像を超えるアイデアを誰もが導き出す技術です。

子供のように知的好奇心を持ちながら、実体験で知見を貯めて着想の土台を準備しておきます。さらに、何事にも関心や疑問を抱くことで視野を拡げて固定概念から自身を解放していきす。

まずは、自分の気になる情報の探索から始めてその周辺視野から繋がる情報連鎖を生みだします。そして、発想の種やフィールドを増やしつつ、アイデアを芽生えさせる土壌を日頃から貯えておくこともアイデアマンへの近道と考えます。

まとめ:【アイデアを生み出すための発想力】
  • 発想力とは具現化するアイデアの着眼点であり目の付けどころを見出す能力
  • 情報の引き出しを多く維持するインプット作業は知的好奇心のアンテナに支えられている
  • 多くの知識や体験の引き出しが「ひらめき」や「直感」の源にもなるアイデアの土壌
  • 知的好奇心と観察情報(入力)が発想と創造(出力)を支える
  • 考えの方向性を示す「仮説」と未知の領域を思い描く「想像」の両輪で発想は鍛錬される
  • 偶然の出会いがもたらすセレンディピティ体験で情報の幅と深さを増して知識や体験の量と質を高める
  • 何事にも関心や問題意識を常に意識しながら視野を広げておく

参考文献

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アイキャッチ画像|社会人に必要な自由な発想力を身につけるために

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