WEB制作ワークフローの「要件定義」を新任のWEB担当が最初に理解すべき理由|失敗しないデザイン発注の教科書 Pt.3

目次

クライアント側の事前の準備と確認事項

事前の情報整理の重要性

要件定義は、制作会社が主導してプロジェクトの進捗を進めていきますが発注前にクライアント側でも情報整理や準備を進めておけると序盤のヒアリング工程の期間を短縮することもできます。

それにより、前述したような後半の課題設定や評価目標の設定におけるディスカッションや社内調整へ時間を回せるメリットが生まれます。

また、競合プレゼンなどを開催する場合はプロジエクト概要を提案依頼書RFPRequest for Proposal )としてコンペ参加企業へオリエンテーション時に提示すプロジェクトの前提条件の提示も必要になるため、最低限の情報整理を事前に社内で進めておくことが安心です。

RFPの基本構成:クライアントがデザイン発注前に整理すべき情報一覧

WEBリニューアルにおいて、「プロジェクト概要」、現状のWEBサイトの「環境情報」、そして「調査・分析の補足情報」の3点がRFPとして基本の情報構成になります。

これにより、制作業者も事前にプロジェクトの理解を深めて想定ベースの概算見積ではなく適切な見積や提案内容に期待が持てます。

Ⅰプロジエクト概要

  • プロジェクト背景(認識している現状の問題や課題)
  • 提案依頼の範囲(各要件定義、コンテンツのアイデア、運用・保守など)
  • 公開の予定時期
  • 納品物(デザイン素材のデータ、要件定義書、CMS操作マニュアルなど)
  • 記事原稿の提供の有無
  • 提供素材データの型式JPEG, Photoshop, Wordなど

Ⅱ環境情報

  • WEBサーバー環境のスペック
  • アクセスログ解析のアカウント情報(Google Analytics/Google Search ConsoleのIDなど)
  • SSL証明書の有無
  • 対象デバイス(OS、ブラウザーなど含む)
  • 現状のコンテンツ量(WEBサイトのボリュームが分かるサイトマップなど)

Ⅲ調査・分析のための補足情報

  • 想定ターゲット(WEBサイトのターゲットオーディエンス)
  • 競合他社の提示(同業他社を3社ほど)
  • 希望デザインや技術のWEBサンプル(意識するWEBサイトなど)

制作業者に発注前に確認すべきプロジェクト設定項目

プロジエクトは3ヶ月から4ヶ月以上の間、定例会を含めて密接に連絡やコミュニケーションを取り合います。そのために発注の際には、制作会社へ確認すべきプロジェクト設計の項目一覧を記載しておきます。

プロジエクト設計における確認リスト

  • プロジェクト担当:専任プロジェクト担当者の配置
  • その他の各役割の代表者の連絡先を明記した体制図
  • プロジェクト情報共有のツールの有無:メールや携帯以外のやり取りを記録・管理
  • 緊急時の連絡網(エスカレーションフロー)
  • 利用ソフトのバージョン(MSオフィスなど)

プロジェクト設計の注意点

特に、プロジェクトのコミュニケーション上で重要になるのが、専任担当者の配置情報共有ツールの導入です。制作側の営業担当者がプロジェクト窓口を兼務するケースもあります。

懸念される点は、連絡が取りずらかったり、具体的な質問に対して現場に確認を取るため返答に時差が生じるケースがあります。理想は、専任のプロジェクトマネージャー(PM)が制作側にいる状態です。

デザイナーなど作業者がPMを兼務する場合、プロジェクトが佳境に入るとコミュニケーションでトラブルが発生することも起こりえます。プロジェクト窓口には専任者であることをまずは確認します。

もう一つのプロジェクトの懸念事項は、プロジエクトの情報共有の方法です。メールなどのやり取りだけでは情報過多になり中盤以降で見過ごしなどが多発します。また、エクセルデータのプロジェクト管理だけでは抜け漏れやデータ自体の先祖返りなども起こりがちになります。

クライアント側も確認事項や期限などに追われて目視でWBSを確認するのは負担になります。また、制作管理を行うPMにとっても、アナログなWBSの更新作業は時間を要し負担が大きなものです。

連絡の履歴や共有データの保管、バージョン管理やカレンダーと連動した期限のリマンダーなどのタスク管理を含むプロジェクト管理ツールの導入がお薦めです。

月額のオンラインサービスで利用できるものが多く、利用人数が少ない場合は無料で利用できるサービスもあります。制作を依頼する時に、プロジェクト情報共有のツール利用につて確認します。

まとめ

迷走しないサイトリニューアルの指針となる「羅針盤」の役割

WEBサイトリニューアルなどの初期段階では、まずは現状 (“As is”)の問題の整理を行いながら目標となるあるべき姿 (“To Be”)とのギャップを見出して課題設定を進めます。

この流れをビジネス面から必要になる機能面を割り出してWEBサイトの基本仕様としてまとめていく工程が要件定義の全体像です。

これがプロジェクト全体の指針となり、後の「構築フェーズ」でプロジェクトの方向性に迷いが生じたい際の正しい方向性に立ち返る羅針盤の役割になるのが要件定義です。

まとめ:アイデア出しの視点変換テクニック
  • 要件定義の目的は、適切なユーザー体験の構築の基板となる基本仕様の策定
  • サイトの仕様が固まらない内にデザイン主導でWEB構築に入いるとロジェクトが迷走しやすい
  • デザインコンセプトは制作会社の実務経験を測る物差し
  • グランドスケジュールは、要件定義が定まった時に作業範囲と共に確定される
  • プロジェクト概要などの情報整理を事前に社内でまとめることで不確かな見積や提案内容を防ぐ
  • 錬られた要件定義はプロジェクトの迷走を軌道修正させる羅針盤の役割を持つ

新任WEB担当者向け「用語集」

※タイトルをクリックすると、詳細な解説が表示されます。

1. WEB制作ワークフロー

WEB制作において業務遂行における意志決定を行う流れ。制作会社のヒアリングから提案を受けてデスカションにより確認と承認を行いプロジェクトを進めていく。

昨今では、初期段階の要件定義前にワークショップ型式を開催してクライアント側の関係する部署間で各要件や課題を取りまとめ社内で合意形成を先に確立させる方法もある。

2. 情報設計(Information Architect : IA)

サイト来訪者が迷わない、情報の分類やコンテンツ構成。例えば、ユーザーの目的を達成させるためのナビゲーションの配置やボタンの位置、コンテンツ構成などを行動心理学や人間工学の観点から整理する。

また、ビジネスの目的や意図に合致したコンテンツ導線の設計を含む。(FAQコンテンツの設置による問合せ件数の改善、資料ダウンロードの行動を誘発する(Call to Action:CTA)リンクボタンなど)

3. ユーザーインターフェース(UI)

ユーザがプログラムやアプリ、機器での操作上のボタンなどの行動を起こす接点。UIの基本要素は、「」、「形状」、「配置」、「動作」の4つ。機能品質を保ちユーザーに考えさせず、直感的でストレスのない操作を実現させる機能性の実現を目的とする。

4. ユーザビリティ vs アクセシビリティ

ユーザーが、サイト上で情報収集などの目的を達成させるための使いやすさの規範となる要素。情報設計や文言を含むビジュアルユーザーインターフェースの総称。

アクセシビリティ」は、全ての閲覧者に閲覧状況に不便や差別が起こらな配慮を示す。「ユニバーサルデザイン」と同義としても使われる。

5. ユーザー体験(User Experience : UX)

ユーザーが、企業に対して感じ取る情緒的な価値感。分かりやすい情報設計からストレスのないUIの操作性、そして、それらを包括するユーザビリティまでWEB上で感じる全てがUXを形成する。

WEBサイトに限らず、企業ブランドを感じ取れるあらゆる接点でブレない統一された共通の提供価値=UXの提供が望まれる。

6. アクセスログ解析

無料のGoogle社のサービス、Google Analytics:通称、 GA4(現在)などを利用して、日々の来訪者のサイト内行動を計測。

その他、来訪前にどのようなキーワード(=検索クエリ)で検索されたか、もしくは、WEBページがGoogle検索側のシステムに適切に登録(インデックス化)されているかなどが調べられる無料のGoogle Search Consoleとの連携は必須。

これらへのアカウント登録やWEBサイト側の設定がされていない場合は、制作会社に設定やログ解析の運用の業務委託などの検討が必要となる。

7. ユーザー調査 vs ユーザーテスト

サイトリニューアルでは、既存サイトの改善において問題が不明な場合を除き、基本、プロトタイプ(試作サイト)でユーザビリティの仮説検証を実施。

同様の用語で「ユーザーテスト」とは、主に商品やサービスが想定通りに対象者が受け入れるかを検証する為に行う調査。

また、事前にターゲット属性のパネル(被験者の集団)を集めて嗜好性をヒアリングやアンケートなどで潜在ニーズを発見したり、仮説検証をする定性調査としてのユーザー調査の手法もある。

特に、公共機関やECサイト、金融機関など課金行為が行われる大規模なシステム開発では時間と予算を掛けてリスク回避として事前に検証する。

予算がとれない場合は、ターゲット属性のパネルと類似した社員を集めて調査費用を軽減させる手段もある。

8. ヒューリスティック分析

専門家の経験則に基づいた被験者を必要としないサイトのユーザビリティ分析の手法。メリットは、短期間で手軽にサイトの分析・調査が可能。デメリットは、分析者の属人性や主観に依存する。

9. レスポンシブ デザイン(Responsive Web Site/Design)

単体の画像や文字データ(HTML)を、閲覧環境のデバイス(スマホ、タブレット、PC)単位で画面サイズに合わせてプログラム側で自動処理して表示する。

レスポンシブWEBサイト(デザイン)」が正式名称。Responsiveとは、「敏速に反応する」意味。

仕組みは、サイトにアクセスした際に閲覧者側のブラウザーの横幅の表示サイズを読み取り、予め設定した横幅サイズ(ブレイクポイント)に合ったレイアウトに自動で振り分けて表示します。

通常は、PC、タブレット、スマホ用の3つのブレイクポイントの設定で対応。

10. CMS(Contents Management System)

WEBサイトを構成する要素:テキスト、画像、フロントエンドのプログラム(HTMLなど)を一元管理し配信や運用を担う統合システム。べースのプログラムがオープンソースで無料のものから有料のものまで存在する。

無料版のオープンソースで有名なのはWordPress、有料版ではAdobe Experience Manager(通称、AEM) などがある。機能面やグローバルの多言語な展開などサイトの規模により選出する。

無償版の利用でも、レイアウトに関するテンプレートや機能面やセキュリティ対策のカスタマイズ作業が発生する。

11. CRM(Customer Relationship Management)

顧客情報を一元管理するシステム。問合せや配信履歴や行動・購入データ分析などの顧客とのコミュニケーションを中心に顧客理解から満足度を高めるための情報管理ツール。

顧客情報と営業ステータスや行動・売上管理や予測など受注管理まで行うツールをSFA(Sales Force Automation)と呼ぶ。

12. SSL(Secure Sockets Layer)

WEBの送受信の内容を暗号化して他者に傍受(盗聴)されないようにするための認証技術。また、電子証明書により通信相手の本人性を証明し、なりすましを防止するなどインターネット上の安全と信頼を提示する。

証明書が発行されているサイトのURLは” https “ではじまり、ブラウザーのURLの窓に

昨今のブラウザーでは、SSLが導入されていないサイト(WEBアドレスが、”htpps“ではじまらないサイト)にアクセスすると、警告が表示される。

独自ドメインに対してSSLを導入するには、SSL証明書の申請手続き(+年間費用)が必要。また、サーバー側の設定などドメインのリダイレクト設定などが必要となるため、専門業者に有償で作業依頼をする。

13. トーン&マナー

WEBサイトにおける、デザインや文章の統一性や一貫性などの方向性を保つためのルール。通称、「トンマナ」。

サイトだけでなく、全て企業接点における統一されたブランドイメージで信頼あるユーザー体験や関係構築を醸成する。

プロジェクト運営の観点では、チーム全員で事前に共通した認識を持ち合わせ、規範を明示することで実制作の段階でデザインの方向性でブレを抑止する効果が見込まれる。

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WEB制作において、要件定義や機能要件を満たすための制作ワークフローを理解することが、新任WEB担当者の最初の役割となる。

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