ノンデザイナー向け仕事でデザインを理解し活用するための「デザインリテラシー」とは

目次

2. 「レイアウト(構成)」の基本原則

視線の流れで情報の理解を促すシステム

平面デザインの場合、読み手に自然な視線の誘導を施す配慮が必要になります。優れた平面構成とは、利用する媒体ごとの特徴を踏まえ人間の心理を考慮した情報設計(インフォメーションアーキテクト)を施されています。

例えば、スマホのアプリケーションなど、限られたスマホの画面上でボタン類などのユーザーインターフェース(UI)設計で、行動心理学をベースに情報の配列を論理的に構築していきます。

またレイアウトの基本として、配置にはいくつかの原理原則があります。書籍や雑誌の媒体であれば、文字を読んで貰う為の縦組み横組みなどの統一されたルールでありデザイン上の基本システムです。

文字組における代表的な原則:「Zの法則」と「Fの法則」

WEBサイトにおける文字組は横組みが一般的ですが、ひとの視線の自然な動きを補うために「Zの法則(Zの流れ)」と「Fの法則(Fの流れ)」の2種類が存在します。

レイアウトの原則で、視線の自然な流れを生み出す、情報検索の「Zの法則」と詳細内容の理解を行う「Fの法則」が存在するイラスト。
WEBサイトにおける代表的な2種のレイアウト例

人間の眼が横並びに配置しているため、眼を水平に動ごかすことが自然なためこの法則が唱えられました。例えばWEBサイトの場合、ロゴの配置は一般的に左上に置かれている理由は、Z型でもF型も情報を読み取る視線の基点が左上となります。そこは注力されやすく重要な場所である「フォーカルポイント」として、サイトの看板にあたるロゴを配置します。

視認性と情報整理の「配置要素」

平面デザインにおけるレイアウト(配置)では、視認性を高めて情報を適切に伝達するいくつかのポイントがあります。ノンデザイナーが制作されたデザインを判断するために知っておくべき基本のポイント:「2.1. アライメント(整列)」、「2.2. グループ化(近接の関係性)」、そして「2.3. スペース(余白)」の3要素を説明します。

2.1. アライメント(整列):一貫性を持たせ視認性を高める

文章の横組みでは、左揃え右揃え中央揃え左右均等の4種類の型があり左揃えが一般的によく使われます。左揃え以外は、平面構成に動きを持たせたり装飾的に画像などと並べて利用する時に利用します。特に中央揃えは、ポスターやチラシなどで目立たせたいコピーや文章を中央揃えにして目立たせる役割があります。

また写真や図版を文章と並べて配置する場合には、図版と文章ブロックの側面の面(ツラ)の並び位置を合わせさせることで構図に安定感を生み出します。

レイアウトのアライメント(整列)原則のイラスト。可読性を高める文字揃えと視認性に配慮した配置のシステムが存在する。
配置の要素を揃えることで、視線の流れを安定させ視認性や可読性を高める文字組の基本とレイアウト整列システムのイラスト

文字組の面(ツラ)合わせは媒体ごとに統一させることで、視線の誘導を安定させて読みやすさである可読性を高めます。

参考までにレイアウトの専門用語で垂直方向の配置を「カラム(段組)」と言い、さらに各要素間の空きなどの配列を格子状のガイドライン線を引いた配置構成を「グリッドシステム」と呼び、統一した平面構成で配置を合わせます。

これら配置ルールを設けることで統一された美しいレイアウトが可能になります。昨今のWEBでは、スマホ画面の縦スクロールを意識したシングルカラム(1カラム)が主流です。単調になりがちな平面構成を画像の配置で視線を惹きつける工夫も必要になります。

例えば、写真やイラストの配置で平面構成にリズムを生み出す手法として左右交互に図版と文章を振り分けるような配置テクニックがあります。これらは見る者にどのような印象を持たせたいか:クリーン落ち着き信頼躍動感など、前述のデザインコンセプトに基づいて画面構成の情報を配置します。

優れた平面デザインは、目に見えないシステムで統一感や平面構成のバランスを備えています。

2.2. グループ化(近接の関係性):距離による分類

心理学で人間の知覚の傾向を示したゲシュタルト原則の中の「近似の法則」では、ひとは複数の要素からなる情報を全体で捉えながら、共通項を見出して認識する癖があると言われます。

この近接の法則では、近くにある複数の要素はグループとして認識されるため、この知覚の癖を利用して情報設計を行うことで読み手に意図する情報伝達が施せます。

例えばWEBサイトの平面デザインでは、操作を司るナビゲーション要素は関連する情報をまとめて配置することで検索性を高めてユーザーの探している情報を見つけやすくする情報設計が施されています。

飲食店のメニューなども、料理の種類や価格などの情報を同じ位置やグループ化した配置で可読性と検索性へ配慮するレイアウトが組まれています。

デザインリテラシーにおけるレイアウトの原則では、「近接の関係性」とは同類の情報は近くに配置することで視認性や情報の明白性を高めるイラストの例。
関連する要素を近い位置に配置することで視覚的にグループの構造を示す

情報の配置においては、距離間でグループ化されたり認知の変化が起こるため意識的に配置を考えて読み手の理解を補助する。

2.3. スペース(余白)の活用:印象と視認性を左右する演出

余白とは、デザイン要素の周辺や間隔を指しこの間隔が狭まれば密集(グループ化)により印象や先ほどの認知の変化が起こります。前述の近接の関係性では、意図的に密集状況を作りグループ化で検索性や理解を促します。

印象の観点では、文字の行間などの間隔を設けると開放感が生まれる反面、バランスを誤ると間延びした不安定な印象も発生します。特に一般の方が書類作成をする時など余白を考えずに紙面一杯に文字を詰め込み過ぎて視認性が低く、論文のような文字だらけの資料ができることがあります。

余白は、情報を区分けすることで関係性や空間のバランス感覚を維持します。またデザイン要素として余白の間隔を統一したり、視線の流れを意識しながら情報の関係性や優先順位も整えます。

デザインにおいて余白で気になる場合は、デザイナーにその意図を質問して感覚だけでデザインを起こしてないか確かめます。デザインとは、全てにおいて理由があるからです。

ノンデザイナーの方は、余白の配分やバランスを細かく考えることは困難なことではあります。資料作成の時には、大まかに文字の配置の周辺や段落の間隔などの余白を意識するだけでも読みやすい印象の資料作成はできます。特に紙面の上部(”天”の側面)と左右の余白を確保するよう意識するだけでも平面構成の印象がスマートな印象を持たせることもできます。

レイアウトの原則で「余白」の役割のイラスト:視認性、可読性、そして平面から感じる感情を生み出す印象を操作するイラスト例。
適切な余白を持たせることで視認性を高めて、明瞭な情報の構造化を示すイラスト

優れたデザインには、余白の使い方で平面構成のバランスや自然な視線の流れを考慮した「空間演出」が施され、視認性や可読性を高めながら情報の構造化を構築しています。

3.「コントラスト(強弱)」

視覚による情報構造のコントラストや躍動感を演出

平面デザインでは、内容を適切に伝えるためにメリハリを情報要素に付加させる技法があります例えば、見出しと本文のフォントサイズを変えて差別化をすることで視線の誘導を行う仕組みです。

レイアウトの原則「コントラスト」の役割イラスト:情報に視覚的なメリハリと優位構造を示し視線誘導を自然に行う。
コントラスト(強弱)とは、情報の捉える順位を自然に伝えるための視線誘導を補助する役割や視認性を高める

色彩でも同様に強調に利用する方法はあります。しかし、状況にっては見づらさや印象を損ねる逆効果にもなります。例えば、デジタル媒体の画面上では、色弱を考慮したアクセスビリティの配慮から、色に頼らずに形状で目立たせる工夫が求められます。

色彩の活用は、ある程度の知識も必要になります。仮に単調な雰囲気を払拭するのであれば、まずは記号やフォントサイズを変えて平面空間にリズムを設けて視線誘導を補う工夫をおすすめします。

アメリカの大学でデザインの授業を受けていた時にレイアウトを施す基本は、最初にモノクロで起こしてから目立たせる情報をサイズや形状で強弱を付けてから必要に応じて色彩による印象を持たせるテクニックを教わりました。

新聞はモノクロで刷られているため、フォントサイズや太さ、段落の構成や罫線を利用して紙面にコントラストを設けて可読性や見やすさを追求するレイアウトの見本」と授業で教わりました。

デザインを見定める場合には、繰り返しになりますが情報の優位が視覚的に確立されている視線誘導の工夫が施されているかを意識して観ていきます。

資料作成においては、見出しや重要なキーワードを強調したり、箇条書きなど読み飛ばしができる工夫や配慮が重要なテクニックの一つとなります。

感性や感覚だけに頼らないデザインリテラシーは、伝達手段の観点から情報の受け手が理解しやすい状況を整える技術です。

デザインの確認する方法

最後に、ノンデザイナーの方がデザインのバランスの良し悪しを判断をする時に役立つ簡易的な方法を紹介します。デザインにおける情報の固まり単位で認識するやり方です。

具体的には、離れた位置からデザイン全体を眺めます。こうするだけでテキストや画像などデザインの詳細な要素が固まりのグループ単位で捉えられ、情報配置のバランスが認識しやすくなります。

この方法は留学時にデッサンの授業で構図を確認する技法として教わり、その後、デザイン構成を自分で確認する際にも活用してきました。

この方法でデザインを確認すると、余白の統一性の確認は勿論、意図的なアシンメトリー(非対称)の配置の場合でも要素ごとのバランス関係や視線の流れがどの様に組み立てられているかなど、表層の装飾やイメージに囚われることなく客観的にデザイン全体の構図を把握しやすくなります。

デザインと距離を離して全体で捉える見方で、デザイン構成の良し悪しの見立てを客観的に見定めることがしやすくなります。

まとめ

問題解決としてのデザインリテラシー

今回は平面デザインの良し悪しを判断するための3要素:1.デザインコンセプト2.レイアウト3.コントラストに絞り解説しました。いずれも、適格にメッセージを伝えるための情報整理と関係性を提示する仕組みであり、デザインの基本の作法です。

デザインは感性だけでなく、本来は問題解決の手段であり伝達すべきメッセージを分かりやすく伝える技能でもあります。

ビジネスにおいてデザインの良し悪しを見据えるデザインリテラシーを身につけておくと、効率よく意志決定を進める資料作成にも活用できます。

モノとコトの両方に価値が求められる新たな時代に、企業の想いを適格に伝え共感を生み出すためにもデザインリテラシーをビジネスシーンで身につけておくことは重要だと考えます。それにより、コミュニケーションの質や幅に拡がりを生みます。

最後に、デザインの3つの確認ポイントを改めて掲載しておきます。デザインの採択や社内用の資料作りにおけるデザインのチェック項目としてご活用ください。

まとめ:【ノンデザイナーが知るべき平面デザインのチェックポイント】
  • デザインコンセプトは、目的達成や問題解決のために適切な言葉で語られている
  • レイアウトとは、視覚的な情報優位を確立し視線の誘導を施して視認性や可読性を保たれている
  • コントラストを設けることで、印象や飛ばし読みなど情報の伝達における演出や配慮が施されている

参考外部サイト&書籍

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イメージ画像|ノンデザイナー向けにビジネスに役立つ平面デザインの見立て方(デザインリテラシー)を解説します。

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