新規事業立ち上げで迷走しない思考法やフレームワーク集

目次

新規事業開発を「デザイン思考」と「アート思考」で整理

複雑に絡み合う新規事業開発の要素を整理するために、事業展開の方向性を定める2つの思考法を活用して全体を把握していきます。

一つ目は、問題解決の実行性やプロトタイピングによるアイデアの具現化に長けたデザイン思考、もう一つは、独自の問いで新たなビジョンとなる事業概念を創造し市場を掘り起こすことに向いているアート思考の2軸で事業構想の全体を整理します。

事業展開の方向性をデザイン思考とアート思考の特性を重ね合わせて事業構想を行う見取り図として事業構想の「羅針盤」
現状の事業(改良)から3方向のアプローチで展開する事業構想の例。

具体的な各思考法の詳細は、以下の記事で解説しています。そちらも、参照ください。

本稿では、目的に合わせた思考の組み合わせを把握して事業展開の方向性や着想のヒントを見出すことに集中して解説します。

まずは、前述した既存事業の展開となる「A.拡張」と「B.進化」と全く新たな事業展開となる「C.創造」の3方向で整理します。その際に、自社の置かれた状況や事業ライフサイクルに合わせてどのルートが相応しいか経営課題やコア・コンピタンス(独自の技術力)を踏まえて検討していきます。

新規事業開発の評価軸

事業開発の基本の3評価軸

さらに、新規事業を検討するにあたり、検討する基本の評価軸として次の3つが挙げられます。

  • 成長性
  • 実現性
  • 独創性

これら新規事業開発を評価する視点と各ステージの関係性を交えて関連する思考法を解説します。

1.「成長性」を読む視点

事業成長の可能性を探索するフレームワーク:「アンゾフの成長マトリックス」

新規事業の成長戦略を考える際、「アンゾフの成長マトリックス」という「市場」と「製品」において「既存」と「新規」のどこで勝負を取るかを検討する代表的なフレームワークがあります。

「アンゾフの成長マトリックス 」で、「市場」「製品」において「既存事業」「新規事業」のどこで勝負を取るか検討する4事象のフレームワークの解説図。

まずは、アンゾフの成長戦略の4事象のどのコマへ進むか検討します。そこから、次項で紹介する前述の3ステージの詳細なアプローチを各思考法と合わせて確認していきます。

「アンゾフの成長マトリックス」の留意点

このアンゾフの成長マトリックスでは、4事象で事業創造の構想をシンプルかつ網羅的に洗い出すことに長けています。主に、製品や市場など「外部要因」を軸にもれなく成長機会のオプション施策を着想するために視野を拡げるツールです。

後に、外部環境である「機会」「脅威」を重点において、自社ポジショニングを定める競争優位性を説いた米国の経営学者マイケル・ポーターのアウトサイト・イン戦略となる「ポジショニング・ビュー」に発展していきます。

しかし、実際に事業展開を試みる際、市場や顧客動向など外部環境となる「外部要因」だけに事業成長が依存する訳ではありません。特に、機会や脅威などの外部環境が急変しビジネスライフサイクルが短期間で変容する現代では、内部視点の分析も必要となります。

前述したバリューチェーンの自社機能、組織力や技術などの経営資源である「内部要因」も成長戦略では検討すべき要素です。

2.「実現性」をデザイン思考で俯瞰する

実現性の視点から鑑みると、既存事業とのシナジー効果や親和性が強い「A.拡張」、または、「B.進化」の2パターンが最初に考えられます。

顧客や利用者など外部起点の問題を掘り下げ、潜在的な価値観を理解し発想を深めるデザイン思考や論理的に一貫した問題分析を行うロジカル思考を併用し観察と分析で深い洞察を導き提供価値を練り上げます。

デザイン思考は、対象者の「潜在的な価値感」に共感(=客観的認知)することで最適な課題を導き適切な価値を提供することに長けた特徴を持ちます。

「A.拡張」2種アプローチの特徴

足し算・掛け算による市場浸透

A.拡張」アプローチでは、現状の提供価値を深め新たな視点で価値の提案を実施することで製品・サービスのラインナップや顧客層を拡張や拡充しながら市場浸透に挑みます。これは、既存事業の垂直型多角化にあたります。

この「A.拡張」ステージでより独自性を見出す必要がある場合には、問題解決型のデザイン思考だけではなく問題提起に特化したアート思考や客観的な視点検証のクリティカル思考なども合わせて活用します。

事業展開における「拡張」タイプの2種の方向性を表した図。

「A1.包括的拡張」の事例

1つ目の特徴は、コア事業をサービスと捉えて川上から川下までの価値を統括や補強していく「A1.包括的拡張」です。自動車業界では、製造販売から買い替え時の中古車の買取、レンタカー事業など包括的な提供価値でカーライフ全般に関わるサービスを”足し算・掛け算式“で充足して「エコシステム」を構築するモデルです。

昨今では、車を定額利用する新たなカーラーフの問題提起(=価値提案)で、自賠責保険料及びメンテナンス費用も含んだ定額で車を利用できる「サブスクリプション (通称サブスク)」事業もこのタイプと考えます。

「A2.新規事業開発の多層化」の事例

2つ目は、「A2.事業構造の多層化」です。言い換えれば、購買の間口を拡げて従来の顧客層以外へ購買機会を拡張する事業展開です。例えば、商品やサービスを試してもらう簡易版と充実したフル機能版で製品・サービスラインナップを多層化して購買機会を拡げ市場浸透を図る展開です。

具体的には、スマフォのアプリやオンラインサービス・ゲーム業界などを中心に、無償提供で基本の利用者数を確保して市場浸透を図り、習熟度合いや必要性が増すタイミングでユーザーが課金する「フリーミアムモデル」も購買機会を拡張する手法の一つと考えます。

他には、ファッション業界や食品業界などで商品ラインに高付加価値を盛り込む「プレミアム戦略」などもあります。カジュアルラインの商品と質と価格を高めたプレミアムラインの2層ラインナップンで顧客層や購買機会を拡張する手法です。

技術や知見を異なる市場へ参入する事業の水平(横)展開はこの後に解説する「B.進化」と定義して紹介しています。

先ほどの例に挙げたエコシステム構築の場合、自社の事業とシナジー効果(=相乗効果)の高いサービスの補充で顧客にとって必要な関連サービスを一度に購入でき手間を省けるメリットがあります。

デメリットとしては、全てを自社で賄うことは経営負荷が大きく掛かります。その場合は、専業他社や産学連携、協業やM&A(企業合併)なども視野に入れます。

某引っ越し会社では、荷物の運搬と搬入の事業モデルに引っ越し時の大型家電の買い替え需要を取り込んで家電量販店と販売代理の契約を行い手数料を受け取るビジネスモデルを取り入れ付加価値の提供と収益拡張で競争力を補強しました。

中小企業の場合は、自社の技術やサービスを外部の有識者や専門組織と共創することで経営負荷を軽減し既存事業の拡張に挑むケースもあります。

新たなアイデアを導く共創を、デザイナーとのマッチングサービスを東京都の中小企業振興公社のサイトで無償で提供しています。

「B.進化」2種アプローチと特徴

事業ドメインの再定義や事業資産の転換

B.進化」アプローチでは、本業の事業ドメインを再定義して新たな事業改革を行う「事業の再定義(Shift)」と事業資産を流用し新市場に参入を試みる「事業資産の転換(Pivot)」の2つのアプローチが存在します。

事業展開で「進化」タイプの2種の特徴を表した図版。

自社の強みとなるコア技術の本質を再認識し、その価値を別の分野で活かせる新たな商機を探索し事業の再定義(Shift)転換(Pivot)で新たな市場へ参入します。

言い換えれば、自社の強みであるコア・コンピタンス(独自の技術力)などの事業資産を異なる市場で共通の価値を見出すことで新業態として新市場へ参入の道が開けます。

この場合、アート思考の現状に対する「問い(WHY)」を繰り返すことで独自の発想を磨き上げ未知の価値創出を導きます。そして、首尾一貫した論理で事業展開の課題解決をロジカル思考との組み合わせで新市場へ着実に参入するアプローチを確立します。

「B1.事業の再定義(Shift)」の事例

「B1.事業の再定義(Shift)」では、既存事業を一段上の視点から俯瞰で見据えて抽象化することで事業概念を再定義し新たな価値を創出します。この場合、新たな事業が立ち上がると共に事業ビジョンの拡張により組織全体が大きく様変わりする特徴を持ちます。

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コラム:事業再定義の失敗例「米国の鉄道業における衰退」

失敗の例では、第二次世界大戦後に米国の鉄道業界は自動車や旅客機が台頭してきた時に自社の事業価値を鉄道車両とい製品偏重捉え、人やモノの「輸送業」という事業領域(=事業ドメイン)を進化させる発想が出来ずに衰退した背景がありました。

これを、元ハーバード・ビジネススクールのセオドア・レビッド名誉教授は論文で「マーケティングの近視眼」と表現しています。

同じような失敗例では、米国の大手フィルム・光学機器メーカーであるKODAK社は、世界で初めてデジタルカメラのプロトタイプを開発していたが経営陣がフィルム製造に固執しデジタルカメラの製品化が遅れ他社に市場を席巻され経営破綻した例が有名です。

事業の再定義の例では、トヨタ自動車の場合、車の製造による自動車社会(Motarization Society)を担う会社組織から未来の移動社会(Mobility Society)の組織へと事業領域を移行させるビジョンを打ち立てした。自動車製造とその周辺事業に留まらず、日常の移動全般をサポートするためにテクノロジーで社会を変容する組織作りへ進化していきました。

「B2.事業資産の転換(Pivot)」の事例

「B2.事業資産の転換(Pivot)」は、コア事業の技術資産を他の製品や市場に転換利用する流れで新市場に参入を試みます。具体例では、富士フィルムが主力事業である写真感光材が2000年以降より市場衰退し、2003年には事業再編成でコア技術を応用転換して医療•化粧品や治療分野などの異業種であるヘルスケア事業の参入です。

当時の富士フィルムのコア事業において、写真感光材やインクジェット紙は酸素に弱い特性がありました。酸化を防ぐ酸化防止剤の研究が進み、酸素に強いフィルムを作るために3000種類以上の酸化防止剤を開発してきました。

また、ある問題を解決するために乳化やコラーゲンに関する論文や学会で情報収集をするうちに、そのほとんどは化粧品や医療分野であることに気づき共通性を発見できました。

そこには類似する多くの共通の特徴:フィルムとひとの細胞の厚みやどちらも酸化に弱いという特性が存在し、コア技術の転換利用に親和性を見出し事業転換の確信を見出したと言わます。

また他の事例として、作業衣料のプロ向け(B2B)製造・小売り販売のワークマンが、B2Cの一般生活者向けアウトドア衣料の事業ライナップンで「機能性衣料の技術」の事業資産を横展開して新市場に参入して売上げを伸ばしたワークマンプラスワークマン女子など、さらに、2023年9月1日に新たにワークマンカラーズの新業態の展開例が挙げられます。

販路開拓や新市場への参入は、20世紀前半に活躍した経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが説いた5つのイノベーション分類におけるマーケットイノベーションにあたります。(※新市場の創出とは、異なります。)

シュンペーターの5つのイノベーションをデザイン思考とアート思考の視点でマッピングしたマトリックス図。
【参考】シュンペーターの「5つのイノベーション」とデザイン思考・アート思考の関係性。

既存事業から鑑みる多角化パターン

多角化の視点では、現状の市場浸透(=拡張)や既存の技術などの資産応用によるノウハウ関連と親和性が見込まれる市場へ参入(=事業の再定義/Shift)が考えられます。具体的な多角化のアプローチとしては、垂直・水平型多角化などが挙げられます。

事業構想における多角化の関係を既存事業の価値の延長で鑑みた図。
スクロールできます
垂直型多角化既存事業の川上から川下を統合する例)農産業から加工品の製造販売
水平型多角化技術やノウハウと関連する製品の開発例) 二輪メーカーから自動車の製造
既存事業の市場浸透に向けた多角化パターン

3.「独創性」をアート思考で導く

独創性ある事業開発を試みる際、アート思考ラテラル思考などを組み合わせることで社会や市場などの外部環境に対し自身の内観から問いを立て続けて未知の価値や新たな付加価値を見出します。

事業展開における独創性ある事業の「創造」の2種の特徴を表した図。

アート思考は、自己の内観から外部に対する問い掛けから新たな意味や解釈を導く「未知の価値」を創造する思考プロセスです。

【参考資料DL】アートと経済社会を考える研究会の報告書(PDF130,045KB)-METI/経済産業省

具体的なアプローチとして、外部環境である社会に対し自己対話(=内部起点)による問いかけで新たな事業概念のビジョンを自身の内部に投影し事業概念を形成しす。

ラテラル思考の特徴と併用

ラテラル思考とは、ロジカル思考の問題解決に向けて論理の垂直的な道筋で一つ結論を見出す思考に対して、思考の幅を水平的にさまざまな視点から前提条件なども含めて検証する思考法と言えます。

その特徴は、アイデアの制限を取り払い発想を飛躍させて創造的で多様な結論を導く事です。アート思考のアイデアを着想する思考との親和性が高い思考法です。

また、クリティカル思考の前提を疑い問いを重ねる思考法との組み合わで、思い込や固定概念などの「主観的思考の殻」を問い正しながら客観的で言語による構造化でさらに発想を研ぎ澄ます効果も期待できます。

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コラム:クリティカル思考の特徴

クリティカル思考とは、ロジカル思考をベースに客観的な視点で「問い」に対する、主張とその根拠を合わせた「解」となる判断で問いただす行為とここでは定義します。

言い換えると、自身の主張をあらゆる視点で検証するために懐疑的な姿勢で問いを繰り返して解決策を精製していく「考え抜く技術」とも言えます。

クリティカル思考の必要性は、「既知の問題」を経験や知識で論理的に問題解決に臨むロジカル思考に対し、現在では特に従来の経験や知識が通用しない「未知の問題」を適切な問いを定義し解を創出していく点が重要視される時代背景にあります。

また、クリティカル思考を日本語では「批判的思考」と翻訳されますが、「批判」を「非難」と混同される一面が考えられます。

「批評」の本質は、良い点も悪い点も同じように指摘し、客観的に論じることであり、知的、美的また道徳的な価値を客観的に判定する意味もあります。

批評」は良い点も悪い点も同じように指摘し、客観的に論じること。「批判」は本来、検討してよしあしを判定することで「識者の批判を仰ぎたい」のように用いるが、現在では、よくないと思う点をとりあげて否定的な評価をする際に使われることが多い。

「デジタル大辞泉」より抜粋

この客観性に伴う懐疑的な思考技術で、新たな事業構想でアート思考で捻出した着想の偏りや発想の脆弱性を補正し盤石な事業アイデアに近づける相乗効果を育む思考の組み合わせです。

「C.事業創造」の展開アプローチと特徴

新規事業を興すにあたり、現状の事業の延長線ではない”非連続の価値”を成すアプローチとして「C1.新市場の創出」と新たな製品やサービスの「C2.新事業の開発」が挙げられます。

この2つのアプローチに共通する特徴は、「未知の価値」の創出であり「新たな意味」を生み出す事が成功要因の一つでもあります。

イノベーション開発でデザイン思考とアート思考の関係性と構造化イラスト
【参考】「意味のイノベーション」と「問題解決のイノベーション」によるデザイン思考とアート思考の説明イラスト

「C1.新市場の創出」の事例

iPhoneの本質

世界ではじめてスマートフォンが誕生したのは、IBMがハイテク機器の展示会で1992年に紹介したプロトタイプを基にし1994年にタッチパネル式携帯を販売開始した「IBM Simon Personal Communicator」と言われています。

初代iPhoneが発売されたのはその13年後、2007年で後発の発売でした。それまでは、フィンランドのNokia社の「Symbian」、カナダのRIM社「ブラックベリー」、そして、アメリカのMicrosoft社「Windows mobile」が法人向けビジネス市場を席巻していました。つまり、一般の市場にスマートフォンが普及した切っ掛けがiPhoneでした。

iPhoneが起こした破壊的イノベーションの本質は、製品単体の画期的な仕様だけでなくデジタルミュージックのiTuneやApple storeでアプリのマーケットプレイス提供で製品を中心にした統合サービスデザインによるエコ・システムを構築したことが有名です。

つまり、iPhoneのイノベーションの本質とは、デジタル環境のエコ・システム構築で「イノベーションのジレンマ」でクリステンセンが説く「新市場型破壊的イノベーション」とキーボード入力を画面タッチで行う操作性(UI)を発案して、ションペーターが説く新結合の経済発展=イノベーションでサービスデザインの新市場の創出を成し遂げたと言えます。

ちなみに、スマートフォンの名称は1995年に米通信会社のAT&T社が開発したモニター画面にスタイラスペンの操作を採用したタブレット端末「PhoneWriter Communicator」の資料に表現が使用されたのが始まりと言われています。

AT&T EO Communicator (source: the University of Texas):Public Domain at en.wikipedia.
AT&T EO Communicator (source: the University of Texas):Public Domain at en.wikipedia

「C2.新事業の開発」の事例

Sonyのシリアル・イノベーション

新事業(製品)の開発例では、世界初のポータブルカセットプレーヤーを1979年に発売したSONYの「Walkman」が“音楽を外に持ち運ぶ”という新たな価値の提供でプロダクトイノベーションによる世界を席巻しました。

1981年に発売された「WalkmanⅡ」では、通常とは逆のデザインを起こしてそれに合わせてエンジニアが設計を施すプロセスイノベーションで製品を投下し安定した人気で市場の地位を確立させたシリアル・イノベーションでした。

新規事業における多角化パターン

新規事業の創出では、自社の強みを活かして新たな市場に参入する集中型多角化や全く未知の挑戦として新事業を立ち上げる集約型多角化が挙げられます。後者の展開になるほど、経営リスクは高くなります。

事業構想における新規の事業創造における2種の多角化パターンの紹介した図版。
スクロールできます
集約型多角化新たな製品を新市場に導入する異業種へ参入例) スーパーマーケットの銀行へ進出
集中型多角化既存技術やノウハウを新たな市場に導入例) 写真フィルム製造から美容・製薬の開発
新規事業や市場の創造における多角化パターン

水平型多角化(Shift)と集中型多角化(Pivot)の違いは、既存市場との親和性が残る水平型多角化(Shift)は完全な異業種への参入となる集中型多角化(Pivot)よりも経営リスクは低くなる点です。

また、水平型多角化(Shift)は、技術や自社ノウハウを関連する市場に横展開させます。特徴は、ビジネスモデル自体の大きな変更も少なく海外での販売展開もこの一環と考えられます。

【参考】問題提起に特化したスペキュラティブデザインとは

アート思考とは別に、未来の可能性を思索し新たな問題提示を導くバックキャスティング式のデザイン概念であるスペキュラティブ・デザインを以下のコラム内で紹介しています。

“+”マークをクリックすると解説が表示されます。

コラム:現在を再考し問題提起する”スペキュラティブ・デザイン”

スペキュラティブ・デザインとは、いかに「自分ごと化して向き合えるか」を大切にして、幾通りもの未来の問題を探索し、答えを提供するよりも疑問を投げかけ現在を再考するデザイン概念です。

“スペキュラティブデザイン ” (speculative design) の始まりは、英国Royal College of Artで10年間ほど教鞭を執していたデザイナー Anthony Dune氏が提唱したデザイン概念です。

“speculative” とは、「思索的な・推測的な」という意味になります。デザイン思考 のように課題を解決しようとするのでなく、これからの社会はどうなっていくのかを考え未来のシナリオを思索して、現在の世界を違った視点で問題提示をする手法になります。

私たちにとって、思索の目的は「未来を予測するのではなく、現状を揺さぶること」だ。

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。」アンソニー・ダン著,ビー・エヌ・エヌ新社,2015年(P134)

日常生活やものごとの別のあり様について想像力を掻き立て、深くじっくりと考えさせることができるかどうか、という視点が重要になります。解決策より別の視点で問題を見据える能力=「提案力」が問題提起のデザインと言い表せ、現代アートのコンセプト策定に近しい思考の技術です。

その核心は、未来を予測するよりも、現在を再考する手助けとして固定概念や思い込みを排除して未知の可能性を創造する発想の技術です。

まとめ

新規事業開発を検討する場合、闇雲にアイデアを募っても筋の良い発想は簡単には現れてきません。まずは、目指すべき方向とルートを見定める「羅針盤」が必要です。その役割が今回、紹介したデザイン思考やアート思考を組み合わせた事業構想の展開パターンです。

新規事業開発の初期段階でルート設定を誤れば、いくら入念な分析・検証の準備を行ってビジネスモデルを構築しても事業展開の迷走リスクを全面回避する事は困難と言えます。

まずは、どのよう展開パターンが現在のコア事業と合わせて相性が良いか、もしくは、新たな事業創造へ乗り出せるかをデザイン思考やアート思考を活用して見定めます。そこから新規事業開発のシュミレーションや分析をすることで最適な事業創造に導くことがより確実となります。

まとめ:「デザイン思考」や「アート思考」の活用で事業構想に新たな視点
  • 新規事業開発を検討する際、事業アイデアを検討する前に目指すべき方向性を検討
  • 事業構想の方向性を見出すには、まず、外部要因と内部要因で自社分析を実施し現状を知る
  • フレームワークはあくまで現状課題を整理するツール
  • 自社の競合優位性となるコア・コンピタンスを簡易分析で構わないので事業資産の強みを定義する
  • 「成長性」の視点からどのアプローチに進むかを検討
  • 「連続性の価値」を活かした親和性ある事業展開か「非連続性の価値」で新規事業の創出かに分岐する
  • 事業展開の課題が明確で実現性を重視する場合、デザイン思考を中心に事業創造のアプローチを検討
  • 独創性を重視し新たな事業概念が必要な場合はアート思考など「問いを立てる思考」を活用

参考文献

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